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コチ街2

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「危ない所が近くにあります。行く事は進めませんし、一緒にも行く気はありません。」
「それは解っている。」

バンッ

「解ってないわよっ!!お金欲しさに殺しあいするような所が近くにあるの!ここでぬくぬく育ってる人には想像出来ない世界があるのっ!! ハァハァ…」

「…リズ?」

「とにかく、私は行かないわ。行くなら護衛を山ほど、銃も沢山持って行くといいわ。貴方が捕まった時、犯人をすぐに殺せるようにね。」

冗談じゃないわ。確かに探すなら1番可能性のある場所よ。あの街をもう少し進むと私がナイフで切りつけられた場所。

いつものねぐらに帰って、隣にいた仲のいいお爺さんが傷を洗ってくれた。だから膿む事は無かったけど。そのせいでお金を稼げなくなって、弟が空腹を満たすのに食べたのが毒草だった。
あの街は行きたくない。弟を殺してしまった事を思い出す。
私だけこんなに贅沢して…。罪悪感でいっぱいになる。

「会いたい子を探すにしても、場所は選ぶべきです。貴方は王太子様なのよ。どこへ行ってもいいという身分ではないの。」

「……わかった。」

まさか、1人で行ったりしないよね…?今のを聞けば、ラッドさんだって絶対許可しないわ。これはただの王子の我が儘。ある程度は目を瞑っても、今回は許さないはずよ。

後でラッドさんに念押ししないと。目を離さないように!脱走でもしたら大変よ。
昔の私に何故こだわるのか、意味もわからないわ…。

その後の時間は、お父様に貰った毒草図鑑を読んで過ごした。

お茶も終わってラッドさんに話をした。
「セドリック様を護りたいなら、コチ街へ行かせないでください。」
「承知いたしました。」


寮に返ると珍しく私に手紙が届いていた。

『来週水曜日に毒と毒草同好会が開かれるぞ!リズは参加出来ないと思うけど、一応伝えとく!!』
毒会が開かれる!?
絶対行くわ、何があっても行くわ!
お父様、エリザベスは学校を5日間ずる休みします!


・・・・

ミリオン侯爵の娘が何故あんなに真っ青になって必死で『コチは恐ろしい所だ』と言うんだ?侯爵が危ない所にリズを連れていくはずがないのに。
見た事があるから、『行かない』『行くな』…と言ってるようにしか俺には聞こえなかった。

おそらく俺が探している女の子は、リズであってる。

もしそうであれば、絶対に名乗り出てはくれない。出自は貴族にとって権力を左右する大きなものだ。

貧困層の子を養女にしたとなれば、侯爵がどうなるか…、それだけを考えてる。

はっきりするまでは聞かないし、探すのはやめない。


授業中はいつもいつもブツブツ言いながら図鑑を見て、たまに「ええっ!?」とか大きな声で叫ぶ。
朝早くからルーペをもって裏庭にガサガサ潜り込んで、よく服に虫もついている。
庭師としか話をしない。
お洒落をしない。
髪もよく寝癖がついてる。
安物の服ばかり着ている。

彼女は日に日にまわりから変人扱いされている。

けど、俺は何かにひた向きなのは嫌いじゃない。身分だけが取り柄の人間よりよっぽど尊敬できる。

けれど、そんなリズがあの子であってほしくない…。
何となくそう思った。
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