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毒草のすすめ2

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「あの、はい…エリザベスです。」
何で知ってるのかしら。
「デイビーズ様、この子とお知り合いですか?」
「知り合いもなにも、この子はミリ…」
「デイビーズ様!おひさしぶりですーっ!」

ミリオンと言われそうになったのを、大声でかぶせた。
「事件に巻き込まれてしまいまして、どうしていいものかと…。」
「…なんだ、そうだったんだね。署長、彼女は俺の友達なんだ。そんな事があるはずないよ。」

赤毛の男の子が言うと、あっさり帰してくれた。

「どこのどなたかは存じませんが、ありがとうございます。助かりました。」

このまま取り調べられたら、侯爵の名を出さなければいけない所だったわ。

「どうして、エリザベス・ミリオンだと言わなかったの?」

「…何故名前を」

「さてね。どうしてかな。」

色白で少し目が垂れた…私より多分年上の男の人。今まで会った事はないと思うのだけど。

「俺が何も言わなくても『ミリオン』と聞くだけで『ご免なさい』って言うよ、あの人達。」

「極力ミリオンの名はだしたくなくて…」

これ以上の迷惑をかけたくないもの。

「何か理由でもあるの?ミリオン侯爵、物凄く大きな家名だよ。」

だから駄目なんです!

「お父様の名を出して何かをしたくはないんです。」

「なるほど。君はすごいね。ミリオン侯爵の自慢の娘なわけだ。」

「じまん?」

「君をパーティーに連れていかないのは、誰かに見初められたら嫌だからだろうって。まぁ、簡単に手をだせる令嬢ではないから、問題は無いんだろうけどね。」

今まで夜会の事も何も言われなかったから放っておいたけど。
それはきっと、私の体に傷が沢山あるからだよね。見られたら嫌だろうって考えてくれたんだ。

気がつかなかった…。

やっぱり素敵なお父様とお母様だわ。そんな2人を私が不幸にしちゃ駄目よ。


この人は、貴族だよね。
名前はなんだろう。デイビーズ…、あまり聞かないわ。
「俺の名はロビンだよ。」
読心術…
「君を今度の舞踏会に招待するよ。」
「……」
「その、キョトンとした顔が可愛いね。では。」
何あの人…。舞踏会って、私は侯爵邸にいないし、自分で言ってたじゃない『パーティーに連れてこない女』だって。

今回もお断りすればいい話ね。


はぁ…毒草がないなら野原に探しに行こう。この際何の花でも草でもいいわ。私に力を与えてくれるなら…
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