上 下
11 / 72

30%増量

しおりを挟む
「0%はどれだけ増やしても0%です。やんす君いきましょう!!」

やんす君に乗って帰ろうとすると、景色がヒュンと変わってあっという間に家に着いた。

私の前に一瞬で来れるはずよね。こんな事が出来るなら…。

「葡萄畑、馬車に乗らなくても行けたんですか?」
「ああ、けれど一緒にいられる時間が増えればいいと思ってね。」

「毎日一緒にいるじゃないですか。」
「…けど、2人きりじゃないからね。」
「2人きりだったら、このお試しはそく終了です。」

「…リディア、君は俺が怖くない?」

「私を食べないお化けなら怖くありません。」

「…その食べるという解釈は何処から?」

「みんな『お化けは怖い』『人を食べる』『人を殺す』って言ってるわ。私もそう思ってたけれど、ここにいるお化けは食べないみたいだし。やんす君みたいに可愛い子もいるなんて 人間は知らないですから。」

「やんす……。ねぇリディア、そこに俺は入っていないのかな…」

「入れてほしいなら、本性を見せて。」

「本性っていうのは何…本当の姿ならわかるけど、その言い方は何だか傷つくな。」
「本当の事です。」

すぐシュンとするんだけど、素敵な人(容姿)なだけに、何をしても様になっているのが腹立たしいのよ。

「本当の姿を見せられるように出来ないの?魔王様ならそれも自由に出来るんじゃないんですか?」

「君たちの王様は地位があるからといって好き放題はしていない。それと同じだよ。王様であってもなくても、出来る事は民のためであって自分の好き放題できる訳ではないんだよ。」

なんだか意外…

「でも、『一緒にいるとお嫁さんになる魔法がかかる』というのを教えてくれなかったのは問題があるんじゃないですか。」

「だから君がハクが蛇に見えているのを聞いて喜んだんだよ。その魔法にかからない。」

「……」

「ん?」

「魔法にかかるほうが楽だと思うけど…。」

「それって結局、心はないんだよ。本当か嘘かわからない。怖いと思うよ。俺はその人の目にうつってないのと同じなんだから。」

「…」

魔王様も悩みだってあるんだ…

「という事で、30%増量はとても嬉しいよ。」

「…それとこれとは話が違います。」

「何をすれば増えるんだ…」

「本当の姿…」

「振り出しにもどったね。」

これだと卑怯ね。

「少しだけ考えます。」

「本当に!?」

「少しだけです。」

私を好きだというけれど、何処かで出会ったことがあるのかな…。

それを聞く前に、子持ち疑惑の話が先よ!



「メンフィス様。ここは落ち着いて話し合いましょう。子供とは何の事ですか?前みたいに地面を揺らしたり、そういうのは無しで答えてください!」

「……」

答えない…って事は、本当なんだわ。もう信じられない。30%とか言ったけど、
500%減量よ。

「貴方は卑怯だわ!何をするにも自分勝手。婚約者の事も子供の事も、本当の姿も、秘密ばっかり!!」

私は魔王のルールなんて知らない!

ドーッッン

「っえ!?なに今の…雷?メンフィス様…
もしかしてまた…。」

「…何をしてるのかな。やんす。」

「リディアさまを苦しめる奴は、誰でもあっても許さない。」

「え?やんす君?今の君がやったの!?」

「リディアさまは俺の主…。メンフィス様であっても許さない。」

「へぇ、ではやんすがリディアと結婚するとでも…?」

「ちがう。別にメンフィス様との結婚を反対もしていないし、応援してる。けれど、それと苦しめる事は違う。」

やんす君がメンフィス様と同じくらいに成長してる…しかも『やんす』って語尾についてないし!
名前はつけてないのに何で大きくなったの!?

「やんす君?とりあえず、落ち着こう?」
「…はい。わかりました。」
「どうしたの?なぜ急に大きくなったの…?」
「リディア様を守りたいと思ったら、1番強い力が発揮できる姿になった。」

「…やんす君、貴方優しい。でも、『やんす』ってつけてないけど…。」

「カッコ悪いと気がついたから止めた。」

まぁ、物凄く格好いい容姿だからついてないほうがいいけど。成長が早すぎる…!


「子供、どういう事ですか。」
やんす君がメンフィス様につめよっている…。
ついこの間まで泣いてたのに、素敵になってるわ。
感心してる場合じゃない!

「そろそろ白状してください。言わなければ、私はやんす君とこの家を出て2人で暮らします。」

「駄目だっ!!」
「っっ!?」

大きな声で言われて驚いてしまった。

「…巨大樹という物があって、そこから出てくる悪魔の子。俺の力が強くなりすぎるとそれを食い止めるように巨大樹から子が出てくる。俺の子…俺の力が作ったから、そう言われている。」
「…では、新しい子が出来たのは、力が強くなってしまったから?」
「そうだ。信じられないかもしれないけど、俺には子はいない。」
「なら、そう言えばいいじゃない。急に地面を揺らさなくても。」

「信じないと思うし。」

「ええ。重婚疑惑だってはれていないですから。」
「そこからっ!?」

「当たり前です。お試しで一緒にいますけど、本当か嘘か、怪しいです。」

「誰に証明してもらえば信じてくれるんだ?」

どうすればって言われても…

「リディアさま、それはウソじゃない。」
「やんす君…本当に?」
「俺はリディアさまにウソは絶対つかないです。」
「…やんす君が言うなら。」

「信じてもらえたのは嬉しいけど、何だか複雑な気分だよ…。」

「やんす君が言わなければ、誰の言葉も信じてません!」

「……」

悄気しょげているわ。魔王が…。

…魔王なんかじゃなかったらよかったのに。

せめて本当の姿が…やんす君のように判るなら考える余地もあるかもしれないけど、本当の姿がドロドロでグチュグチュかもしれないって思ったら怖いから、結婚なんて無理!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

見えるんです!!〜私の世界は少し複雑です!〜

ハルン
恋愛
こんにちは! 私の名前は、マリオン。 戦争孤児として、5歳から孤児院で過ごして来た16歳!見た目や性格、名前のせいで男子に間違われる事も多いけど、歴とした女子です。 そんな私には、誰にも言えない秘密がある。 一つは、前世の記憶がある事。 私は、前世では23歳のOLだった。最後は、車に轢かれそうになっていた子供を助けて死んでしまったけれど。 もう一つは、『見える』事。 前世での私は、所謂幽霊などが見える霊感少女だった。そんな他とは違う所があったが、人生に不満は無かった。 だけどーー。 「いや、おかしいでしょ!!何で、さらに『見える』様になってるの!?」 転生して、どうやら能力がグレードアップしたらしい。 幽霊に始まり、精霊やら悪魔、果てには精霊王や神様まで『見える』様になってしまいました。 第二の人生、無事に過ごせるのか?

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

ふたりは片想い 〜騎士団長と司書の恋のゆくえ〜

長岡更紗
恋愛
王立図書館の司書として働いているミシェルが好きになったのは、騎士団長のスタンリー。 幼い頃に助けてもらった時から、スタンリーはミシェルのヒーローだった。 そんなずっと憧れていた人と、18歳で再会し、恋心を募らせながらミシェルはスタンリーと仲良くなっていく。 けれどお互いにお互いの気持ちを勘違いしまくりで……?! 元気いっぱいミシェルと、大人な魅力のスタンリー。そんな二人の恋の行方は。 他サイトにも投稿しています。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない

金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ! 小説家になろうにも書いてます。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

処理中です...