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今思えば唯一平和だった時期(文化祭編)

不意打ち

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「ねぇこの対決さー、部長同士が1人の女子取り合ってんでしょ?www」


「何ソレウケるwwwそんな美人なの?www」


「知らなーいwwwでもさー、イマドキこんなことあるんだねーwww」


「あ、あの子じゃね?景品の女子!」







「「…………ちょー可愛い子じゃん……?」」









この場の仕切りを任された放送部の生徒が、ノリノリで開催宣言?をした。
もちろん、この対決の趣旨や取り決めなんかを簡潔に説明した後だ。
会場に集まってる人達にはすでにアンケート用紙は配り終えている。

あとは─────
全力をぶつけるだけ。





「きゃー!あのピアノの人イケメン!」


「えー!?私あの端っこの人ー!( ゜д゜)セクスィ…」


「待ってみんなイケメンじゃーん!いーなー!(*ノωノ)キャー!!」



会場に集まった女子から黄色い声が聞こえる。
わかる、顔良いよな。これで楽器弾けるんだぜ、惚れるだろ。
今すぐは使わないヴァイオリンを立て掛け、センターに目立つようにあるマイクの元へと向かう。






「例の約束、ここで使わせてくれ」


「─────え?」


「真宮、歌ってくれ」


「────は!?」


「いいんじゃないか、姫愛上手いし」


「あ、この前の歌テスト、1人だけ先生からべた褒めだったもんなー」


「ちょっと!!その援護射撃今いらない!」


「そうだな、確かに上手かった」


「部長まで……!てか先輩、なぜその発想に?」


「いや、クラシックにも、オペラがあるなと思ってな」


「私ど素人ですよ!?無理です!!」


「あぁ、それはわかってる。俺がやるのは、クラシックとJ-POPの融合だ」










その成功例を、私は知っている。




激しい出だしは、今回の選曲にあたり漏れてしまったヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲『四季』から夏第三楽章を引用。

夏の嵐を表現したこの曲から着想を得たため、イタリア語で『嵐』を意味する『tempesta』と名付けた。


私はその激しい音楽に乗せ、熱く、燃え上がるような、激しい夏の恋を歌い上げた。





「他が盛り上がるとはいえ、大人しめの曲が多い。人を惹きつけるなら、激しい曲も欲しい」


「それを作るのか?」


「そうです。────あの曲をモチーフにするなら、やれる」






高音はなんとか絞り出した感じなのでかなりお聞き苦しい音になってしまったのは大変申し訳ないが、短い練習期間で、仮歌みたいなものは一切ない状態でここまで完成させるのはほんとに、ほんとーーーに大変だったので許して欲しい。

息も絶え絶えで、呼吸を取り戻すのに何度も吸っては吐くを繰り返す。
落ち着いた時に1度礼をすると、講堂で受けた拍手と同等のそれを一身に受けた。


あまりの歓声にふらふらとしながら部長と宗くんの間──第2ヴァイオリンの位置につき、ヴァイオリンを構える。

この勢いを失わせない。
ニールセンで更に心を奪い、カノンで和らげる。
サントラアレンジでしんみりとさせ、最後に全員で盛り上がる。

たくさんの笑顔と拍手、それだけで、やりきったと心から思えた。








「さ、さすがだね……」


「うわ、やりづら……」


「どうするんですか、これ」


裏で、顔を青く染める諒太郎と蒼海、顰めた顔の蒼空は舌打ちをしていた。
原作やアニメとは違う、管弦楽部の演奏。
これが、どんな影響を与えるかわからない。流行りの悪女転生ものならきっと、歴史がかわるだろう。

でも────


「どうするもなにも」


「俺たちの音楽をやるだけだ」


ずっと逆境に晒されてきた2人には、痛くも痒くもなさそうだった。








「あの、なんで真宮は最前列に?」


「さぁ……?」


なんか聞こえてきたが知らないふりをした。
確かにここではライバル同士だ。
でも忘れてはならない。

私は!!!!Prave!!!!!オタクだと!!!!言うことを!!!!

まさかの本人たちの演奏を生で聴ける機会!!
これを逃す訳には行かないでしょう!?
あー、最前場所取りしといて正解だった!!

校内でしか活動していない彼らのグッズは皆無なため、通販などでそれっぽいものを用意してみた。
聖櫻カラーのデイドリームスノーホワイトに光るペンライト──は、屋外な上昼間なので無しにして、2色のタオル、白地に青文字のTシャツ、部長プレゼンツの中にあった青と白のシュシュに音符マークのアクセサリー。
イベントで時折見かける聖櫻の女スタイルだ。

ちなみに私はハル様神推しLI-LUCK贔屓なのでいつも薄紫ライラックであった。
他のグループはまた今度ね。


セッティング、チューニングを終えた彼らの最初の音は、諒太郎の声だった。









「なん、で────」


諒太郎ソロで始まるこの曲は、アニメで諒太郎を担当したヴォーカリストのバンドの曲を気に入り、使わせてもらったという裏話がある。
初めて学外で、同士の前で歌う。



聖櫻というブランドをぶち壊すための『不意打ちsucker punch



それは、大会編の1曲目で出るはずの曲だった。








まさか、私が余計なことしたから!?
実際この曲はバンドもライブやアルバムの1曲目に据え、ファンの間でも人気の高い楽曲だ。
キーボードがいることを活かし、デジタルサウンドを全面に押し出した、挑戦的な1曲。

盛り上がりたくてここにいるのに、予想だにしてなかった選曲に冷や汗が止まらない。
なぜ、どうして、それがぐるぐると頭を駆け巡る。


その後も、本来1曲目に歌われるはずだった夏曲『fireworks』やカバー曲と言われている『夏恋』、ファンも多い応援ソング『NA·GA·RE·BO·SHI』、そして作中では歌われるはずのないアニメOP『Pray』。

私も好きな曲なのに、大好きな曲なのに、盛り上がりたいのに、わかっていたのに、


努力するだけ無駄だよ、と神様に嘲笑われた気がした。











不意打ちことSucker Punchは私の大好きなバンドのセカンドアルバム名&タイトル曲から頂きました。諒太郎の声のイメージだったりします。
お願いだから復活して…???????
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