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信じたくないプロローグと決意
こんなの絶対おかしいよ…っ!
しおりを挟むトリップ───死亡以外のなんらかのきっかけで漫画やアニメ等、架空の世界に潜り込むこと。夢小説界では人気ジャンルの1つとしてその地位を確立している。転移と呼ばれることも。
ちなみにきっかけが死亡の場合は転生という別ジャンルになることがある。
(引用:古の知識)
今回の場合は私が真宮姫愛という別人物になっている事から『成り代わり』という方が近いかもしれないが、原作に『真宮姫愛』は存在した記憶がないことからトリップとさせて下さい。
「しかし、今どきトリップかぁ~」
しかも見た感じ正統派主人公である。転生しての流行りのライバル悪役令嬢とかではなく。…ん?私まだ死んでないよね?風に煽られただけで死んでないよね!?ちょっと不安になった。
なーんだ、つまらない。
とは言いつつ、長年ファンをやって来た私は、この世界に飛び込めただけでもかなり浮かれている。
きっかけとか原因とか帰り方とかわからないけど、来てしまったものは仕方ない。せっかくなら楽しむべきである!…と、思考が切り替えられるあたり、(書いている的な意味で)慣れているなぁ。と自分で自分に笑ってしまった。
てかね、こんなちょっとした現実逃避してないと意識を飛ばしそうなんですよ。
この
豪邸を目の前にして。
「…………やっぱり、異世界トリップなのかな……?」
マンションのような、シンプルかつ機能的な建物(多分男子寮)が建ち並ぶ区画を抜けると、多分夢女子は好きな人多いと思う。
なんというか…宮殿とか聖殿とかが似合いそうなほど絢爛豪華な御屋敷があった。
「女子寮…なんだよね?」
今期、初の女子生徒である私(というか姫愛ちゃん)が入学するにあたり、新設したらしい。
出資は漫画にも出てくる金持ち生徒会副会長の東海林弥生である。ちなみに彼は軽音楽部ではなく管弦楽部の部長である。お会いできたらお礼をしておこう。設備案内見た感じとてもとても良くしていただいてるぞ…?
「まぁ、お帰りなさい。真宮姫愛さんよね?」
「はっ、はい!寮母の椿静香さん、ですよね」
「そうよ。これからよろしくね」
柔和な笑顔に癒されるぅ…。
40代くらいの椿さんは、夫が元々ここの教師をしていて、一番下の息子さんがここに入学するに合わせて寮母になったとの事。昨年までは男子寮にいたが、今年から女子寮が出来るからと異動になったそう。
そういえば椿先生っていたな。確か現代文担当だったはず…。
「荷物、届いてたわよ。1階の1番奥の部屋に入れておいたけど、よかったかしら?」
「えっ、ありがとうございます!助かります!」
私の荷物と言われるとちょっと違う気がするが……とりあえず確認と、着替えをしてくるか。
19時にはご飯に出来るよう用意してくれるとの事なので、その間にできる限り片付けもしておこう。
そうして私は言われた部屋のドアを開け──────
閉めた。
「こんなの絶対おかしいよ…っ!」
いや、外観やロビーから察するべきだった。そもそもロビーってのがおかしいけれどな!?
再度私はドアを開けた。
どう見ても普通に1LDKです本当にありがとうございます。
まず入ると玄関に似た作りのものが。
靴自体は寮の玄関で脱ぎ履きするのだが、ここはスリッパとかかな。あと、私物の靴の保管とか。寮の玄関にシューズボックスなかったもんね、うん。まぁこれは許そう。
廊下も広々としており、照明が可愛いことになっている。ランタン?ランプ?私の知識ではなんて言えばいいのかわからないが、中世ヨーロッパあたりが好きな人はどストライクだろう。
レプリカだろうけど有名どころの絵画が壁に掛かっていたり、ガラスの一輪挿しに花が活けてあったりする。センスよすぎでは。
奥は寝室────で、良いのか?良いのか、ベッドあるし。
乙女の憧れ、天蓋付きである。もうそんな歳ではない気はするが。
かなり広々としてて、これ2人3人で寝られるのでは?あ、めっちゃふかふかしてる。
傍らにはこれまたアンティーク調のドレッサーが。
……改めて自分の顔を見るが、全然違う人だよなぁ。
金糸雀色のセミロングヘアーはくせ毛なのかふわふわしている。濃い色のピンクコットンパールのカチューシャがよく映えている。
目の色は…桃花色かな?これは。二次元でしか有り得ない組み合わせだ。
視線を落とすと、所狭しと並ぶメイク道具の数々。……え、これアメニティなの!?
一般社会人の財力でもここまで揃えるのは至難の業だぞ!?くそう金持ち副会長め!ありがとうございます!!
ジュエリーボックスにはたくさんのアクセサリーが品よく並んでいた。
……ピアスは開けてないから無理だけど、これは使わせてもらおう。特にヘアアクセサリー…。
見回すと、少し小さめのドアがあったので開くと、中はクローゼット…ウォークインクローゼットだな、この広さ。
小物も置けそうなので後で整理しよう。
大きめの窓から見える景色は、ここ本当に学院敷地内か疑いたくなるくらいだった。
薔薇園の中にティーセットあるぞ?????
ここで優雅に朝食とか、アフタヌーンティーとか良いかもしれない…なんて夢の世界…!
ちなみにテレビは壁にかかっていた。でかかった。録画機能とDVDブルーレイ再生機能はしっかりついていた。
絶対1人分じゃないソファもふっかふかしてた。これは人をダメにする。
戻って右手のドアを開ける。
「う、うわぁ……」
洗面所、というにはちょっと広くてびっくりした。
こちらには多くの種類のシャンプーコンディショナートリートメント、洗顔料やボディソープも揃っている。選び放題か。
基礎化粧品は全部こちらにあった。至れり尽くせりでは?????????
しかも浴槽は猫足バスタブ!!!!すげぇ二次元でしか見たことない!!二次元だったわここ!!
入浴剤も取り揃えており、人生で1度はやってみたいバラ風呂が出来るらしい。超やりたい。
お風呂はこんな感じなので戻って反対側へ。
簡易と言うには設備が整いすぎているキッチンとリビングダイニングがあった。
一応ご飯は椿さんと共に共有部のサロンで食べるというのに、ここにある意味は…?
調理器具一式どころかオーブンとか電子レンジとか三口コンロとか料理する人大助かりのラインナップだな?持ち帰っていい?
大きい冷蔵庫に食材はさすがに入っていなかったが、日持ちする調味料は一通り揃っていた。────休みの日にお菓子だったり、お昼作ってもいいかもしれない。行くのめんどいが街に出て色々調達しよう。通販…来るかわからんが、そっちで頼むのもアリか。
とりあえず衣類系のダンボールからラフな服を見繕い、着替えてサロンへと向かった。
途中ちょっと気になって他の部屋も見てみたが、中には和室だったり、オリエンタルな雰囲気の部屋もあった。
ここ、1日探検しても飽きないかもしれない。
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