結婚相談所♡Honey Marriage

STEP1 ハジメマシテ

side F

「佐々木さん……またですか……」


「ごめんなさい……」


「相手は特に若い子、そんな性急にがっついたら逃げられるって何度も言ったじゃないですか！」


「で、でも……！」


「そういう話はもっと仲良くなってから、ですよ！」


3ヶ月に1度、コンシェルジュとの面談。
もう既に3度目を迎えている僕は、決断を迫られていた。

Honey Marriageは、1年で結果が出なければ退会するか、更新するかを選択する。
コンシェルジュからは、今までSTEP1以降に行けたことがないのなら、もう少し大人向けの──別の相談所がいいと勧めてきた。
実際、20代後半が多いHoney Marriageは、もうアラフォーに片足を突っ込んでいる僕には少し合わなかった。


ずっとやりたかった会社を立ち上げて数年。
今までは忙しいからと断ってきたが、年齢的な問題もあるし、実家に居座っていると親からの視線が痛いし、年の離れた妹が既に嫁に行っていることからなんとなく居づらい。
そろそろ会社近くに移ろうかと考えているが、結婚するのであれば相手もそこに来て欲しい。
それが大前提となるのだから、それくらい聞くのは当然だと思っている。

だけど、初対面でその話を切り出せば、今まで弾んでいた会話が急激に萎む。
そしていくらこちらが熱望しても、それに応えることはなかった。
何故？どうして？結婚したくて登録したんじゃないのか？
月に1度程度しかマッチングしない貴重な機会は、ここまで全て不発に終わっていた。


「……来月、ですよ？大丈夫なんですか？」


「うっ……」


「はぁ……ん？」


細かくプロフィールを変更して、少しでも良い印象を見せようとしてくれる担当さんには頭が上がらない。
話をしながらまた更新している担当さんが止まった。


「────まじか」


「え、どうしたんですか」


「愛性95って、ミスだろ、さすがに、いや、でも……」


「愛性って……」


「それは会わせるしかない、佐々木さん」


「はっ、はいっ！？」


「確かに趣味は合わないかもしれません、でも、愛性の良さは保障します」


「えっ、えぇ……！？」


こうして、ほぼ強制的にハルカさんと会うこととなった。








「彼女で合わなければ、こちらから紹介できる女性はもう居ないと考えてください」


「引かれないよう、結婚の話はしないこと！絶対ですよ！！」


そう念を押されたにも関わらず、やっぱり聞きたくて聞いてしまった。
でも、彼女はしっかりと答えてくれた。


「──どこにするかな……」


住宅情報を探す。
やっぱり戸建て？でも都内ならマンションの方がセキュリティも……収納はたっぷり必要って言ってたし……あぁ、でもここは彼女の意見を聞かなくては。

ふっくらとした体つきに、ぽってりとしたくちびる。可愛らしい声。
笑った顔も可愛いと思えて、もう彼女しかいないと感じた。

そのくちびるに噛み付いて、髪を乱して、服を乱して、暴いて。
真っ赤にして、涙目で見つめる姿を想像するだけで熱が昂る。
あ、やばい。


「っ、はは、童貞かよ……」


想像だけでイクなんて、初めてだ。


「早く会いたいな……」


返事を待つ時間さえ愛おしい。
こんなことになるなんて、思いもしなかった。


どろどろの体を洗い流しながら、再度想像して抜いた。
いつか、この手に抱くことを楽しみに。