結婚相談所♡Honey Marriage

Sio*

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STEP1 ハジメマシテ

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※引き続きとあるゲームネタ多め。




幼い頃魅せられたヴァイオリン。
初めてのわがままに両親はすぐ協力してくれて、きっかけの姉も喜んでくれた。

弾けるようになるのが楽しくて、面白くて、気付けばヴァイオリンがない生活を考えられなくなるくらいのめり込んでいた。


僕はずっと、ヴァイオリンと生きていく。


そう、思っていた。




「英智くん、技術も表現力もあるんだけど……今ひとつ物足りないよね」


「その瞬間は最大限の評価に値する演奏だと思うんだけど……また聞きたいかと言われるとちょっと……」


その言葉は、刃物のように心を引き裂いた。







『恋をすれば音は変わる』


「彼、まるで英智みたいね」


「え?」


「恋をしたら、変わるんじゃない?」



──僕の音は熱狂を生まない。


そうだ、そうなんだ。
まさに、僕と同じだった。
人形の様に奏でていた彼の音は主人公と出逢い、恋に落ちることでその音に色をつけた。

じゃあ、僕も───?



「英智もいい歳だし、そんな人と恋に落ちたら結婚しないとね!」


「えっ、えぇ!?」


「あっ、こことかどう?こういうの使った方がいいと思うんだけど」


そう姉に見せられたのは、結婚相談所のサイトだった。
確かに、生まれてこの方ずっとヴァイオリン一筋で、女性との会話や出逢い方なんて全くわからない。
なら、こういうの使った方がいいと思う、うん。
なにごとにも、挑戦!


「登録、してみる……!」








「姉さん」


「わっ、どうしたの」


「男が乙女ゲー厶って、そんなに悪いのかな……」


登録した瞬間、沢山のアプローチ。
差別は良くないと思って片っ端から会っていったけど、どれも反応は良くなかった。

『ヴァイオリンを始めたきっかけは?』

それに正直に答えると、誰もが顔色を変える。
確かに恋愛シュミレーションだけど、女の子との友情エンドもあるし、そこまで恋愛色は強くない。高校生らしい、爽やかだけど深い物語でのめり込む。
一部は少年漫画らしい熱い展開で、胸を熱くさせた。キャストさん含め、男性ファンだって多くはないがいる。
なのに、乙女ゲームってだけで。


「あー……まぁ、プレイしたことある人じゃないとわかりにくいよねぇ」


「僕、一生このままなのかな……」


「あ、なら同じ趣味の人は?まぁ、個別タイトルをプロフィールに書く人なんてそうそういないと思うけど」


「────確かに」


プロフィール、確認してなかった。
それから僕はひとつひとつ確認していった。
文面に、同じゲームが好きな人がいるかどうか。
わかりにくかったけど、辿り着いた1人の女性。


「ハルカさん……」


確かめるように、メッセージを送った。












ボロボロと涙を流す姿が目に焼き付いて離れない。

熱狂を生まないと思っていた僕の音は、彼女の心を揺さぶった。
それがどんなに衝撃的で嬉しいことか、彼女は知らないだろう。



ハルカさんとなら、きっと。

彼女を想い、『愛のあいさつ』を弾く。
その甘やかで、愛おしい、大切な曲は、彼女を想うだけで全く違う姿を見せた。



「────今の、英智?」


「姉さん……」


「ぜんっぜん違ったよ、びっくりした」


恋でもした?との問い掛けに、上手く答えられなかった。


「あっは、かわいー!我が弟がかわいー!」


「ちょっ、姉さんっ……!」


「で、次のデートどうするの?」


「でっ、でっ……!?」


デート?デート!?それって恋人同士が────あ、いや、彼らも休日は横浜周辺をデートと称して主人公を誘っていたな。恋人じゃなくても男女で出掛けたらデートか……うん、うん。


「ちょっとなにその納得顔……で?どうするの」


「あぁ、うん。ヴァイオリン練習……」


「あほか。あほなのか」


姉の顔が呆れている。
いや、彼女も希望していたんだけど……。
2人練習みたくなるかなって……。


「英智がどの程度教えるのに向いてるかも疑問だけど、それじゃデートではないでしょう」


「じゃあどうしたら……」


「その子もゲーム好きなんでしょ?好きなキャラは?」


「確か、衛星の彼と、幼馴染の月」


「他は?」


「他?うーん……」


会話をゆっくり思い出す。あ、そうだ。


「遊園地デート……」


「……もしかしてあの曲?」


「うん」


「なら、再現デートしてみたら?モデルの遊園地はみなとみらいだし、ゲームにも出てくるし」


「そ、そんな!ソフトクリームとか!?」


「そこは無理にとは言わないけど……でも、仲良くなりたいんでしょ?同じゲームが好きって言うアドバンテージを活かさないと、他の人に奪われるかもよ?」


その言葉にはっとする。
確かに、ハルカさんはとても素敵な方。
僕だけでなく他の男性から想いを寄せられてても不思議じゃない。


「……協力してください!!」


「任せな!弟の初恋、実らせないとね!」


は、はつこい───!?


あまりの衝撃に、ヴァイオリンが手から滑り落ちそうだった。









※ハニマリ登録者なのに1番ピュアだぞ……?
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