12 / 24
11.出立の時
しおりを挟む*11.出立の時
前日は準備があったり、睡眠をよくよくとった方がいいとシシェルをなんとか納得させて夜のお世話を断った。
ジトッと物言わぬ圧力というものを背中にヒシヒシと感じたが気付かないフリでベッドに入り花の精霊の力を借りて安眠を手に入れた。心地よい花の香りに包まれて目覚めも最高に良かった。が、やっぱりマッサージも魅力だ。
目が覚めたとき、今日もバッチリ朝の準備が整った後だった。
この王子、いつ起きているんだろう。僕だってそんなに寝汚いことはないのに、それよりも早く起きている。
ちゃんと寝ているか心配になってくる程だ。
精霊の守りが解けたことに気付いたのか、朝食の準備をしていたシシェルが此方を見る。
「おはよう。良く眠れたかい?」
ニッコリと朝から爆弾級の笑顔を返され、思わず枕に顔を埋めてしまう。
「どうした? 今日は朝から疲れた風だが」
ギッとベッドが軋み、シシェルが僕のベッドに腰掛けたことが判る。
ビクリと肩を揺らした所為か、僕の頭を撫でる指先がやけに優しい。怯えさせないよう、ゆっくりと触れてくる。
「…あ、」
ソロリと枕から顔をだし、そっと視線を上に上げれば優しく微笑むシシェルと目が合った。
「ん?」
「…おはよ…」
「ああ、食事の準備は整っている。起きておいで」
王族直系の金色のヒヤリと冷たく見えていた瞳が、トロリと柔らかく蕩けるようなハチミツのように感じた。
朝食を終え、シシェルが食器を配膳用のカートに乗せ部屋の前に置き、畳まれた服を持って僕のところへやって来た。
「さぁ、出立の準備を始めよう」
シシェルが持っていた服を貰おうと思った瞬間、ワンピース型のシャツがスポーンと脱がされた。
首元がゆったり目なのもあって、顔に引っかかることもなく一瞬で下着姿だ。
今日も今日とて第三殿下の手際の良さが光る。
ビックシルエット風の此方のシャツを腰でベルトで縛られそこに無限鞄を提げ、山道で安全に動けるよう黒のレギンスもどきを履かされ、生成り色のブーツを履いた。外套は枯葉色のダメージ系で結構地が厚く、こちらも利き手を出しやすいよう右手部分が少し短い。
その他に髪を飾られたり動きやすい範囲で装飾を施された。これはきっとシシェルの趣味だと思う。
シシェルは初日に会ったときと同じ服装だ。黒メインの旅衣装で装飾やラインの色は緑になっている。王族は金色の刺繍だけどお忍びだから色が違うのだろう。
帯刀した剣がずっしりと重そうだけど、こればかりは取り易いところに出しておかないといけないのでシシェルの唯一の手荷物になっている。
一ヶ月以上は王都なので、宿屋の部屋の荷物は片付けられている。僕は借りっぱなしにして行ってもいいかと思って居たが、もし塞がっていたとしてもシシェルがこの街で顔が利くらしくなんとか出来ると言うのでそれに従った。
誰も宿泊しない部屋を作るのは忍びないから、また戻ってきた時に女将さんにお願いしようとこの時は軽く考えていた。
女将さんに声をかけて、道中に食べなさいとお菓子を貰い、街を出た。
塀の外には鉄壁の装甲の馬車が留まっていた。その重厚な装いは戦車かな? と思わせるだけの威厳に満ちている。あの筋肉質な馬二頭は絶対に戦用の馬に違いない。
話を聞けば、これに乗って安全にヒディルの森へと向かうらしい。その間、あまり人に見られるのは不味いというので、こういったし様になったのだと。
驚くほどに速い馬車のクセに揺れが少ない。体感的に三十分程走らせたところで馬車が止まった。どうやらヒディル森の入り口に着いたらしい。
ヒディル森は滅多に人が入らない場所なので馬車が走る道はなく、ここからは徒歩に変わる。
森と言ってもそこまでの山道ではなく、獣道はゴツゴツと石が飛び出ていたりチョロチョロと湧き水が流れていたりする。難所ではないが、精霊の加護がなくなって一番荒れた場所なので魔獣があちらこちらに存在している。
冒険者として、僕よりも格上のシシェルが先を歩いてくれている。危ない箇所は注意をするように促してくれる。
「でも、ノアトルの地の…精霊は起きているわけですよね? …それを、不思議に思う人はいないのですか…?」
はぁはぁと喋りながら歩くには多少しんどいくらいの山道を進む。
僕が森に進めば進むほど、挨拶をしてくる精霊が増えていく。
ノアトルではどこにでも精霊はいて、それが当たり前だと思っていたけれど、世間ではそうではないらしかった。
「先にノアトル地方の精霊が目覚めたと告げたのは救世主と呼ばれた少女だった。自身の願いがノアトル地方の精霊を起こしたのだと。そして、神殿のものが調査をした結果、それが本当であったと通達がきた」
それだったら、どうして僕が精霊の加護を受けるものだと気付いたのか。普通だったら、救世主の少女の力のすごさに圧巻される場面だろうに。
「しかし、詳しく調べた結果…どうにも精霊の起きている場所がおかしい。誰かが歩いた場所をなぞる様に精霊が目を覚ましている」
「その少女が、はぁ…意識を飛ばした流れに沿っているのかも、しれないじゃないですか」
「それは可笑しなことだ。その少女には精霊が近づかない。寧ろ…いや、そこで不審に思った私が直々にやってきたというわけだ。城で精霊をみることが出来るのが私くらいだからな」
シシェルはひょいひょいと道を歩き、僕に危険がないか探りつつ、魔獣にすぐに対処出来るよう右手は剣をすぐに引き抜けるよう空けている。
息も整っていてこれが経験と体力差かと内心ガックリとくる。冒険者としてあの体格は羨ましくて仕方がない。
「そこでこのノアトルに新しくやってきた変り種はいないかとギルドで聞いたところ、お前の名が挙がった。そして、見つけた。精霊に加護されているお前の姿を」
その時、新しくやってきた精霊が僕の額にキスをしていた。
そっとシシェルの左手が僕の前髪に触れた。
「陛下は勿論のこと、私も王族の一員だ。お前には過酷を強いているが、もう少し辛抱してほしい」
左手がゆっくりと下がり、僕の頬を優しく包む。
まるで愛しいものをみるみたいな視線に耐えられなくなって、ささっとその手を避けるように道を進む。
目の前にいるのは地の精霊だろう。こっちと手招きをしているからそっちに休憩場所でもあるとみた。
そそくさとシシェルから離れて妖精が待っている場所へ足早に赴き、平たんな場所で休憩が取り易いそこでポシェットの中身を探った。
シシェルに食べさせたおにぎりは白米もどきを握って中に具をいれたもので、今回はダンジョンで採れた山菜もどきを混ぜ込んだ炊き込みご飯で旨味がぎゅぎゅっと詰まっている。
二人が座れるくらいの場所に敷物を敷いて、炊き込みご飯のおにぎりを手渡し更に鞄からお椀と固めたコンソメもどきを出して椀に入れ、水と風の合わせ技でお湯を出して注いだ。
「…これは…」
苦笑いして座ったシシェルはお湯に少し具が浮いているように思っていたのだろうが、これはコンソメスープだ。適度に運動して汗をかいた僕らに必要な栄養で、空いた腹には美味しく感じるものである。
いい塩梅のインスタントスープが出来上がってほくほく顔の僕にシシェルが「これはなんだ?」と尋ねてきた。
僕はお湯さえあれば簡単にスープが出来上がる固形だと説明して、それを幾つかシシェルに手渡した。一つを片手に取り四角いそれをまじまじと眺めている彼が子供のように興味心身で微笑ましい。
固形のそれの角を少し削り、それを口にしたシシェルは目をキラキラさせている。
「城に帰ったら調理方法を聞いてもいいだろうか?」
「ええ。気に入ったのでしたら、他にも幾つか似たようなものがあるのでそちらも説明しますね」
僕は魔法で簡易に作ったけど、普通の料理手順でだって固形スープは作れる。
「遠征をする部隊に持たせることが出来れば彼らの士気も上がる。簡易携帯食料は腹は満たされてもあまり美味いものではないからな」
「…部隊?」
おにぎりをペロリと一つ平らげ、二つ目に手を伸ばしたシシェルがケロリとした顔で「私の部隊だ」と爆弾発言を投下した。
「…え?」
「私は王位継承権を放棄して、騎士団に所属している。陛下の無理難題を押し付けられる小隊の隊長をしているから、遠征はよくあることなのでな。これは良い携帯食料だ」
「貴方自ら遠征に行くんですか?」
「そうだ。しかし、王族ということもあり、実力など求められることもない。見栄えのいい飾りとしての騎士にも飽きて、ギルドで名を挙げた。お陰で侮られることもなく、こうしてお前を迎えにこれた」
「僕を?」
「そうだ。王命により内密にことを運ばねばならなかった。だから、隠密と私の二人のみの特別部隊だ」
「あれ? そうだっけ?」
前世での第三殿下は王族の第三王位継承者だった筈。その為に僕は将来の殿下の妃として勉強をしていたのだ。殿下は公務をこなしていた。
ギルドランクがSなのも、王位継承権を放棄していることと言い、この世界は僕が居た前の世界とは違うようだ。
僕が救世主として呼び出されている時点で色々と食い違っている。
「…さて、もう少し歩こうか。予定より進んではいるが、この辺りは岩肌が見えている場所ばかりだ。テントを張るに適した場所があればいいのだが…」
広げていた荷物を片付け、午後の森歩きが再開した。
息が切れるけど、そこまで大した疲労じゃない。目を覚ました精霊達が加護を与えにやってくるから少しは疲れても癒えているのかもしれない。
てっぺんに昇っていた太陽が随分と下がり、そろそろ夕焼けになりそうな時間帯に漸くテントを張れるくらいに広くて、平たんで地面の岩も出ていない場所に出た。
シシェルが鞄から二人が寝るには些か大きすぎるんじゃないかというテントを取り出し、手際よく組み立てていく。外側が出来た後は、すぐに中に入ってあれこれと出しているようでテントがガタガタと揺れている。
僕はその間に辺りに散らばっている薪を拾い、焚き火を作る。魔法で火をつけて、昨日商店で買った冒険者便利グッズである鍋を設置する為のポットハンガーを置いて水を入れてインベントリに仕舞っていた魔獣の肉と野菜を取り出し、具沢山のポトフを作り、おにぎりに醤油を塗り串に刺して表面を炙って回りに突き刺して保温状態にしておいた。
醤油の焼ける匂いに釣られたのか、シシェルがテントからひょこっと顔をだして、香ばしい匂いの元を辿ろうとして、僕とパチリと目があった。
「もう少しでご飯出来ますが、どうします?」
「此方もあらかた終わった所だ。頂こう」
匂いに釣られたのか恥ずかしかったのか、少し俯き加減のシシェルだったがそれからの行動はとても早くて僕の隣に組み立てる簡易の小さな椅子を二つ置いた。
おにぎりが好きなシシェルは焼きおにぎりにも興味津々のようだ。
その可愛らしさに思わずコッソリ笑ってしまった。
279
お気に入りに追加
5,074
あなたにおすすめの小説
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」

噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。
春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。
新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。
___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。
ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。
しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。
常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___
「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」
ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。
寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。
髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです
魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。
ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。
そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。
このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。
前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。
※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる