婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

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10.はじめてのプレゼント

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 こちらの顔を見るや、胸のうちを読み取ったのか眼をわずかにみはった。そして、すぐに表情を引きしめる。

 雄彦はあたらまった様子で彼女と向き合った。
 ……八重の長い睫毛が、不安をあらわしてかかすかに震えている。
「――もはや気づいておろうが、小笠原兄弟らしき双子が出入りする賭場を突き止めた」
 真剣な声で告げたとたん、彼女はまばたきを二度、三度とした。心を落ちつけようとしているのだ。
「まことでございますか……?」
 兄が間違っているとは思えない、しかしそれでも確認せずにはいられない、八重はそんな顔つきをする。
「まことだ。双子の二刀流遣いが、あの者らのほかにおるとも思えぬ」
「やっと……やっと、敵(かたき)を見つけることができました、父上」
 雄彦の肯定の言葉に、妹は目元を赤くした。
 だが、感極まった様子の彼女の表情にはどこか、一方でその事実を喜んでいないような気配がただよっている。
「なれど、まだ敵を討ったわけではない。ゆめゆめ、油断いたすな――」
 しかし、雄彦はその言葉を口にする代わりにほかのせりふを口にした。
 ひた、と八重がこちらの眼を見据える。
 うっ――そのまっすぐな眼差し、奥に秘められた思いの強さに彼は気おされる……。
「兄上、お伝えしたき儀があります」
 そんなこちらの反応など意に介さず、いやむしろ畳みかけるように彼女は言葉を重ねる。
「鬼卒流の遣い手の小笠原兄弟は恐るべき剣法者、こたびの戦いでは命を落とすこともありうるでしょう」
「縁起でもないことを――」
 申すな、という雄彦のせりふは、妹の真剣な眼差しの前に途切れてしまった。
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