花の聖女として異世界に召喚されたオレ

135

文字の大きさ
14 / 18

いろいろな笑顔

しおりを挟む






 一汗かいたと清清しい笑顔のクロウは生活魔法のひとつだと、簡単に身体をキレイにする魔法を教えてくれた。
 朝食の魔法といい、便利だな。
 聖なる泉へ行くちょっとした旅に便利だからオレもできるように覚えておこう。


「キャンプとかするの?」

「キャンプ…ですか?」

「夜営っていうんだっけ? 野宿」

「コガネ様を外で寝かせるなんてことできません。ちゃんと宿を介して進んでいくので安心してください」

「魔獣が出てあぶないから?」

「いえ、馬での移動になるので、コガネ様の身体に負担がかかります。夜はベッドで寝た方が負担も軽減するでしょう」


 キャンプとか楽しいだろうな…って軽く考えたけど、浄化しに行くんだから万全にしなきゃいけないよな。反省。


「クロウにオレが作った料理食べてもらおうと思ったけど、宿に泊まるのなら必要ないか」


 醤油があるし、食堂のオジサンに聞けば他の調味料も教えてくれるだろう。ここでオレが料理を作ることはないから、キャンプするんだったら張り切ろうかと考えたけど食べる場所があるならそれに越したことはないよな。
 ああ、でも醤油っていっても小さいから何人編成で行くか判らないけどそれなりの人数だよな。足りないや。
 馬に長時間乗ったオレの負担がどれくらいか判らないから、明日あたりでも馬の乗り方を教えてもらおう。
 クロウとクマの一戦が終わった後で、でもまだ夕食には時間がある。なにかするのかなとクロウに聞こうと振り返ったらクロウが真剣な顔で考え事をしていた。


「コガネ様の手料理…しかし夜営…」


 声をかけてもいいものか悩んだ。顔怖い。目開いてる。
 もうちょっとそのままにしておこう。
 キョロキョロとあたりを見渡せば、さっきまでたくさん居たギャラリーマッチョたちはまばらで、その内の数人が視界にはいった。嬉しそうに手を振られたので振り返したら野太い声が上がった。
 声にビックリしてスッとクロウの影に逃げ込めば、上から強い力に引っ張られた。


「コガネ様の手料理が食べたいので、一日は夜営にしましょう!」


 キラキラ笑顔のクロウがそう告げた。
 そういう感じに決めちゃっていいの?
 高い高いとばかりに持ち上げられて、テンションうなぎ登りのおかしげなクロウに部屋に連れてこられた。そのハイテンションのままに絵本と文字の教本をオレの前で開き勉強がはじまった。


 文字は日本語と同じと考えていいと思う。
 あとは、固有名詞は別にあってそれを簡単に覚えていこうと言われた。
 “です”とか“あれ”は平仮名みたいな文字を使えばよくて、“ごはん”とか“風呂”だとかは別に文字として成り立っているみたい。
 名まえは平仮名でいいっぽい。
 試しに自分の名前を書いてみようかと思ったら、クロウが笑顔で「クロシュディウル・グランディール」と連呼するのでそれから書いてみた。ペンはこっちの世界の羽ペンが奇怪で元の世界から持ってきてた鞄からボールペンを取り出した。
 ボールペンをみたクロウは「珍しいペンですね」としげしげみてた。
 平仮名だと思ってはみても、絵みたいな文字になかなか上手く書けない。書き順とかトメとかハライとかどうなってるんだろう。囲って塗る! みたいな文字は覚えるのが大変そうだ。
 何度もクロウが書いてくれたお手本を見比べて強くなる筆圧で書かれた文字を書ききったらクロウは両手を叩いて「すごい、すごいです!」と褒めてくれた。悪い気はしないけど、園児になったようで微妙な気分だ。
 手漉きの紙みたいなゴワゴワのそれは高価なものだと思うんだけど、文字を書く練習のためにと何枚も使って、クロウの名前とオレの名前をいっぱい書いて、もったいない使い方をしているなと思っていたらクロウがいい笑顔で「額に飾ります」と一枚を手に取りはしゃいでいたのでオレはそんな羞恥に絶えられなくて紙を奪還すべく部屋の中でクロウを追いかけた。
 部屋としては広いけど、オレとクロウが走り回れば障害物だらけで動き難い。筈なのに、クロウはオレをさらりと交わし他の紙も纏め上げた上で、クロウの部屋と繋がっているあの扉の向こうに去っていった。
 オレはと言えば、こちらにきてからクロウに抱かれっぱなしで自分の足で動くこともなく、途中で息がきれてへばってしまった。今、侍女さんたちに少し大きな団扇みたいなので扇がれている。通常だったらオレがへばったらクロウが抱きかかえてくれるけど、今回ばかりは引く気はないようだった。
 秒で扉の向こうから帰ってきたクロウはオレを抱き起こしてベッドへと運んだ。


「コガネ様からいただいたものです、大事に飾りますから、心配しないでください!」

「いや、心配じゃねーから。黒歴史になりそうだから回収したいんだよ」


 ゼーハーと肩で息をするオレにクロウはちょっと困った顔をして笑った。なんだその顔。
 




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL シリアスはほとんどないです 不定期更新

花屋の息子

きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。 森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___? 瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け の、お話です。 不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。 攻めが出てくるまでちょっとかかります。

処理中です...