奇跡～君と紡ぐストーリー～

夢野の活躍

いよいよ総体の日がやってきた。
「いややばいでしょまってまってまって」
なぜか早希は試合に出る当の本人より緊張している様子であった。
「なんで早希が私より緊張してんのよ」
大会にはなれている夢野だが、流石に高校生初試合なため緊張しているようだ。
「ほんとよお」
と先輩が相づちを打つ。
夢野は高鳴る胸を抑えて競技場へ踏み出した。3年生にとっては最後の大会。自然とやる気はみなぎってくる。



きらきらと揺らめく水面。名前が呼ばれるのと同時に礼をして、息を整える。夢野は飛び込み台に足をかけると慎重に上った。合図で飛び込みの姿勢をとる。パッ！という言い表すのが難しいようなスタートの音で全員が一斉に水中へ飛び込んだ。

綺麗に水をかき分け、美しいフォームで泳ぐ。夢野は、ほかのレーンを泳ぐ二年生三年生に圧倒的な速さで泳ぎ、市のベストタイムを四秒縮めるという圧勝の一位でゴールした。


「「すごいよ！」」
着替えを済ませて皆の元へ戻ると絶賛称賛の嵐。周りを見ると視線が夢野へ向いている。
一年生なのにこのような結果を出したのだから仕方のないことだ。中学校のときにうまれた立川ワールドという名の再誕生であった。

夢野はその後、全国大会まで進み優勝を果たし、全国の記録を塗り替える大偉業を達成した。夢野一躍有名人になった。


喜ぶのもつかの間。八月。夏休みも終わりに近づいたある日の昼頃。この日は部活の休養日だった。
夢野の心臓が大きく波打ち、目の前が歪む。やがてなにも見えなくなり気を失って倒れた。これで、2度目。