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死を愛する
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満月の夜
純黒のワンピースをきた女性が蒼い薔薇の花壇で一人佇む。その女性は黒髪で白い肌、蒼い目をしていた。とても儚げな表情の彼女は人の頭蓋骨をとても大切そうに腕に抱えていた。
「あゝ、君は本当に美しい。」
彼女は満月に頭蓋骨を掲げそう言うと幸せそうにキスをした。
少し怖いがとても美しい彼女に段々と心惹かれていった。じっと見ていると彼女に気づかれた。すると彼女は僕を見ながら
「ふふっ。君、面白いね。もし良かったら僕の結婚式に参加してくれないか。」
と言ってきた。
恐る恐る近づくと彼女は深々とお辞儀をして
「僕達の結婚式にようこそ。」
と丁寧な言葉遣いで言った。
「僕は死神のイリア。そこの頭蓋は今日、僕が殺した男のものだ。普段なら捨ててしまうのだが、あまりに綺麗で惚れてしまった。」
『死神』
創作物でしか聞いたことないその言葉に驚きが隠せない。
「本当に死神なんですか?」
「もちろん。僕にかかれば君なんて…
彼女の綺麗な指が首元までせまっていた。
『死ぬ』
そう思った時
「ふふっ。冗談だよ。殺す気なんて微塵もない。」
彼女は笑いながら指を離した。
「あのーイリアさん。どうして殺した人と結婚なんてするんです?」
僕がそう聞くと
「…………この仕事は人を殺す仕事だ。当然殺した人の家族から恨まれる。だから、こうやって死体を愛することでせめてもの償いをしているんだ。」
イリアは続ける。
「君は『メメントモリ』って知ってるかい?」
「いえ、知らないです。」
「古代ローマの言葉で意味は『死を忘れること無かれ』だ。」
「へぇ~」
「この言葉は僕達の仕事のモットーで、人間に『人はいつか必ず死ぬ』ことを思い出させることが僕の仕事なんだ。それなのにいっちょ前に許してもらおうとしているんだ。笑えるだろ。」
イリアは自嘲気味にそういった。
「僕はそうは思わないです。」
僕は続けた。
「死って遠いようで結構身近で、生き物って生きている限り絶対に死ぬんですよ。その死でさえも愛そうとするあなたはとても尊いと思います。」
その瞬間イリアの目から大粒の涙が溢れた。涙を拭きながらイリアは笑って
「君は本当に面白い。死をこんなに肯定的に捉える人間は初めてだ。おかげで元気出たよ。ありがとう。じゃあ僕はこれで。」
「うん。さよなら。」
イリアは何処かへと消えていった。淡い月の光を残して。
数十年後
「久しぶり。」
衰弱した私の前にいたのはイリアだった。
「イリアの仕事はどうだい?」
「君のおかげで結構気は楽。」
イリアは数十年経っても何も変わっていなかった。
「ねえ、そろそろ君を殺していい?」
イリアは真剣な表情でそういう。
「ああ。頼む。」
彼女の指が首に触れると僕の視界も暗くなった。
純黒のワンピースをきた女性が蒼い薔薇の花壇で一人佇む。その女性は黒髪で白い肌、蒼い目をしていた。とても儚げな表情の彼女は人の頭蓋骨をとても大切そうに腕に抱えていた。
「あゝ、君は本当に美しい。」
彼女は満月に頭蓋骨を掲げそう言うと幸せそうにキスをした。
少し怖いがとても美しい彼女に段々と心惹かれていった。じっと見ていると彼女に気づかれた。すると彼女は僕を見ながら
「ふふっ。君、面白いね。もし良かったら僕の結婚式に参加してくれないか。」
と言ってきた。
恐る恐る近づくと彼女は深々とお辞儀をして
「僕達の結婚式にようこそ。」
と丁寧な言葉遣いで言った。
「僕は死神のイリア。そこの頭蓋は今日、僕が殺した男のものだ。普段なら捨ててしまうのだが、あまりに綺麗で惚れてしまった。」
『死神』
創作物でしか聞いたことないその言葉に驚きが隠せない。
「本当に死神なんですか?」
「もちろん。僕にかかれば君なんて…
彼女の綺麗な指が首元までせまっていた。
『死ぬ』
そう思った時
「ふふっ。冗談だよ。殺す気なんて微塵もない。」
彼女は笑いながら指を離した。
「あのーイリアさん。どうして殺した人と結婚なんてするんです?」
僕がそう聞くと
「…………この仕事は人を殺す仕事だ。当然殺した人の家族から恨まれる。だから、こうやって死体を愛することでせめてもの償いをしているんだ。」
イリアは続ける。
「君は『メメントモリ』って知ってるかい?」
「いえ、知らないです。」
「古代ローマの言葉で意味は『死を忘れること無かれ』だ。」
「へぇ~」
「この言葉は僕達の仕事のモットーで、人間に『人はいつか必ず死ぬ』ことを思い出させることが僕の仕事なんだ。それなのにいっちょ前に許してもらおうとしているんだ。笑えるだろ。」
イリアは自嘲気味にそういった。
「僕はそうは思わないです。」
僕は続けた。
「死って遠いようで結構身近で、生き物って生きている限り絶対に死ぬんですよ。その死でさえも愛そうとするあなたはとても尊いと思います。」
その瞬間イリアの目から大粒の涙が溢れた。涙を拭きながらイリアは笑って
「君は本当に面白い。死をこんなに肯定的に捉える人間は初めてだ。おかげで元気出たよ。ありがとう。じゃあ僕はこれで。」
「うん。さよなら。」
イリアは何処かへと消えていった。淡い月の光を残して。
数十年後
「久しぶり。」
衰弱した私の前にいたのはイリアだった。
「イリアの仕事はどうだい?」
「君のおかげで結構気は楽。」
イリアは数十年経っても何も変わっていなかった。
「ねえ、そろそろ君を殺していい?」
イリアは真剣な表情でそういう。
「ああ。頼む。」
彼女の指が首に触れると僕の視界も暗くなった。
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