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メビウス

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第6章 夢と混沌の祭典

第11話 役者は揃った

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~~side 雪ダルマ~~

「き……決まったぁぁぁ!!プレアデス、何という凄まじい攻撃だぁ!!?一気に10人以上を吹き飛ばし、勝負を決めた!!よってDブロック、勝者は……プレアデス、そしてテラナイト!!」

会場全体が呆気に取られた後、割れんばかりの歓声に呑まれる。無理もない。彼が最後に放ったあの攻撃は、実況の映像を乱れさせるほどの威力だったからだ。あれに耐え切ったテラは……まあ、流石だと言えるだろう。

「あいつ……何て威力よ」

隣のユノンもすっかり呆れて半笑いで顔を引き攣らせている。かくいう彼女もまた、先日とてつもないスキルを習得していて人のことは言えないのだが。

「全くだな……あんなのを喰らったら、ひとたまりもない」

彼のあのスキル……霧の中の何かが一斉に爆発したように見えた。もしそうなのだとすれば、吸い込んだりでもしたら大惨事になるだろうな。流石に連発はできないだろうが……味方ならともかく、敵にするとまた更に脅威になったな、プレアデスは。

「まあ、ともあれこれで俺達三皇の1人は決勝進出……負けてられないな」

「当たり前でしょ。こんな所で恥を晒すのはごめんよ……やるからには、例え相手がアンタでも、叩きのめしてやるわ」

「ふふっ、今はそれが聞けるだけで嬉しいよ……」

俺達はやる気十分。そして、四星も既に2人が勝ち残っている……これは、三皇と四星の戦いも、実現するかもしれないな。

(プレアデス、春風……俺は、君達と本気で戦いたい。そして、必ず勝つ!!)


~~side プレアデス~~

「……ふぅ」

「ったく、凄え威力だったな。カシラ」

「……流石の耐久力ですね、テラナイトさん」

「いやぁ、そうでもねえよ?貰った回復薬とスキルがなかったら、どうなってたことやら」

とは言いつつも、何だかんだで耐えそうなんだよな、と心の中で呟く。何しろ、この人は全プレイヤー中最もHPやDEFが高いとされているのだから。まあ、そんな彼に認めてもらえたことを、今は誇りに思うべきか。

「これで、2人とも決勝進出ですね」

「そうだな。雪ダルマとユノンも、すぐ勝ち上がって来るだろう……決勝で誰かと当たったその時は、借りは返させてもらうぞ」

「ふふっ、僕もそのつもりですよ……」

握手を交わす。雪ダルマさん、か。あらゆるゲームタイトルでその名を轟かせる、名実共に最強のプレイヤー。予選では勝ち残るのに必死だったけど、そうか。この先、彼のようなプレイヤーとの戦いも待ってるんだ。僕みたいな凡人が、彼らトッププレイヤーの足元を捉えられるとは思っていない。けど、それでもこうして機会に恵まれるのなら、その時は。

「胸を……お借りしますよ」

「おう。待ってるぜ」


~~side 第1サーバー代表・早瀬~~

「……凄い」

「どうだ、早瀬君。君にも彼の強さが、少し理解できたのではないか?」

「……ええ。確かに、素晴らしい戦闘でした」

X01が予選で戦ったマントのプレイヤー。あれは、博士が送り込んだ刺客。私達IG社が誇るテストプレイヤーだった。だが、彼は見事にそれを打ち倒してみせた。私にとってはそれだけでも、彼の強さを示すものだった。

「……それもあるが、彼の真の強さは戦闘ではない」

だが、博士は本質はそこではない、と言った。

「……と、言いますと?」

「彼の本来の強さ、それは物作りの中で最大限に発揮される」

「物作り……そういえば、彼は鍛治系の職業を選んでいましたね」

「本人がどういうつもりであの仕事を、そして宝石という失われた技術オーパーツを解明する道を選んだのかは分からないが……結果的にはそれが最適解だったのではないか、と私は思うよ」

モニター越しに、愛おしそうに眺める宙野博士。博士のこんな顔は、今まで見たことがない。

「博士……貴方と彼は、一体……」

「いやー負けた負けた!完敗だぜ」

私が危うく聞いてはいけなさそうな質問をしようとしたタイミングで、別の声に遮られる。奥の扉から、先程のテストプレイヤーが入って来た。

「だからぁ、言ったじゃないですか博士。オレじゃアレは倒せねえって」

「いや、そうでもないだろう?君の本来のアカウントでベストなコンディション……かつ、向こうに何らかの不都合でも生じていれば、勝てない相手ではないはずだ」

「っておいおい、それ遠回しに勝てねぇって言ってねぇか?」

やれやれ、とだらしなく長髪を載せた頭を掻く彼は、テストプレイヤーの三原。普段は彼自身のアカウントで、日々あの世界へとダイブしている。

「てか、今回はどういう意味での刺客だったんすか?オレにも、こういうイベントくらいはまともに楽しむ権利あんだろ?」

「ああ、告知が予選の直後ですまなかったな。今回は単に、早瀬君にプレアデスのことを知ってもらうためだ。もうこのイベントでこれ以上、君のプレイを邪魔することはしないと約束しよう」

「……ケッ、それなら良いんだけどよ」

テストプレイヤー、といっても会社に雇われてゲームをプレイしているだけで、実情は普通のプレイヤーとはそう遠くない。ただ、比較的高水準な生活が保証される代わりに、こういう無茶振りに従わないといけないくらいだ。

「んじゃ、オレ寝るから。予選全部終わったら起こしてくれ~」

そう言いながら、三原は部屋を出て行った。会社内にある、彼専用の住居スペースに戻るのだろう。起こすのは大抵、担当サーバーの職員……要するに、大体私の仕事だ。面倒な雑務が増えるのも、代表の辛いところ、か……。

「さて……私はそろそろメンテナンスに戻るとするよ。君も、あまり遅くならないように」

「はい。では、また……」

博士もいなくなり、部屋に1人取り残される。私もそろそろ戻らなくてはな……と、右手の缶コーヒーをあおる。

「本来の強さ、か」

X01の本来の強さ、それが戦闘技能でないことは何となく分かる。私も、伊達にずっと彼の動向を見続けて来ているわけではない。だが、それでも私がそう言ってしまったのは……きっと、彼の持つポテンシャルの高さが、人智を超えたものであることを知り、恐れているからなのかもしれない。

だからこそ、私は気になってしまったのだ。危険だと分かっていながらも、あそこまで博士が彼を気に入っているのには、一体どのような背景があるのかを。


~~side プレアデス~~

「試合終了!!!それぞれ非常に高いパフォーマンスを見せ、決勝まで勝ち残ったのは……セイス、そしてノルキアだぁ!!」

「おお!ノルキアちゃん勝った!!」

「セイスさんも……あれはヤバかったなぁ」

Hブロック予選。その戦場を動揺で埋め尽くしたのは、セイスさんの圧倒的なスピードだ。そういえばあまり彼の本気の戦闘を見たことがなかったが、思い返せば彼は、AGI全振りの超高速プレイヤーだった。どこからでも現れ、どこへでも消えて行く……そうして音もなく敵を倒していくあの様は、まさにチート級だろう。

ノルキアも、別のところで安定した活躍を見せていた。何より脅威だったのは……自らのバフだけでなく、相手からバフ効果を奪うスキルの習得だろう。ハル曰く、ウルヴァン討伐戦では、そんなスキルは持っていなかったという。どっちも、決勝トーナメントで当たりたくないような、そんな相手になりそうだ……。

「さぁ!これでA~Hブロック、全ての予選が終了しました。明日からの決勝トーナメントに進出した猛者達を、改めてご紹介します!!」

そう言って、モニターに1人ずつ、司会のアナウンスと共にプレイヤーネームと予選での名場面が映し出されて行く。


Aブロック 春風、ミハイル
Bブロック デンジロー、愛戦士ファリス
Cブロック 煌、まいまい
Dブロック プレアデス、テラナイト
Eブロック ローズ、レオン
Fブロック 雪ダルマ、ハニハニ
Gブロック ユノン、ジーク
Hブロック セイス、ノルキア


「さあ、これで決勝トーナメントへと駒を進めた全てのプレイヤーが出揃いました!明日、いよいよ最強を決める戦いが、幕を開けます!!」
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