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第5章 失われたもの、大切なもの
第13話 結束の力、チャネリング
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「おい!オレはデュエルに勝ったんだぞっ!さっさとここから出しやがれ!!」
ミハイルの声が響き、ボクは思考の海から引きずり出される。はっ、危ない危ない。うっかり趣旨を忘れるところだった。デュエルはどちらかのHPが尽きて敗北が決定するまで、専用空間からは出られない。てことは、ボクはまだ生きてる判定になっているのか。でも、一体どういう原理で……?
《小春、ボクの身体に何かした?普通なら今頃、死んでると思うんだけど……》
《それは、ワタシが賜った能力の一つですネ。1回の戦闘につき1度ダケ、マスターのHPを1残すことができマス》
なるほど、そういう仕組みだったのか。てことはつまり、ボクが死ぬギリギリのところで、小春が能力を獲得してくれたってことか。また、プレア殿に助けてもらっちゃったな。……でも、不思議と申し訳ないとひがむ気持ちは湧いて来なかった。心にあるのはただ、もう一度立ち上がる力をくれてありがとう。純粋なその感情だ。
ボクは前からずっと、プレア殿に助けて貰ってばかりで、そのことを心のどこかで、後ろめたいと思っていたんだ。今回ボクが彼から離れたのも、そういう感情が大きくなった結果だった。
でも、1人でダンジョンに潜って、途中で仲間に会って、話を聞いて。そして、ギリギリで小春に助けられてようやく分かった。ボクは1人で戦っていたんじゃない。初めから、ボクの中には彼がいてくれたんだ。だから、もう彼の助けを拒む必要なんてない。だって、離れていても、小春を通じて彼の心が伝わって来るから。それがこんなにも、頼もしいから。
本当に大切なのは、割りに合うお返しをすることでも、役に立つことでもない。ただ感謝の気持ちだけを忘れずに、心を共にする。重ね合わせる。それがボクの助けになり、彼の力になるんだ。小春が、そのことを気づかせてくれた。
《ありがとう小春、プレア殿……。ボクは、戦わなくちゃいけない。戦って、勝たなくちゃ。そのために……力を貸してくれる?》
《モチロンです。マスターの喜びは、ワタシの喜び。勝利への最適なルートを共に導くのが、ワタシの使命ですカラ》
瞬間、暗かった視界が開ける。さっきの空間だ。まだミハイルは、ボクが死んだと勘違いしてここからの脱出を試みているようだ。丁度良い……ちょっと卑怯だけど、不意打ちさせてもらおう。進化した小春の使い方を試す練習にもなるし。
《小春、今ボクたちの距離は大きく離れている。でも、取りに行けば間違いなく敵に見つかる……どうすれば良い?》
《【チャネリング】をお試し下サイ。スキル欄にも追加されているハズです》
そう言われ、ボクはミハイルに見つからないようにそっとステータスを覗く。……ほんとだ、いつの間に。小春が進化した段階で、装備スキルとして追加されたのかな?
【チャネリング】消費MP:なし クールタイム:なし
自身と魂を共有した特定の武器を、思念波によって自在に操る。
ほんとだ。ちゃんとスキルになってる。しかも超優秀……。とと、感傷に浸ってる場合じゃなかった。えっと、思念波って確か、最初に小春を作る時にやってたアレ、だよね?とりあえずやってみよう。動け~……!
《……マスター、それデハどうすれば良いのか分かりまセン》
くっ、やっぱりダメか。でもそうするとなぁ、どうすれば良いんだろ。こう、頭からビビビって指示を出すあの感じ。それを具体的にっていうと……あれ、これもしかして結構練習が必要なやつ……?
《……マスター。今やっているこの会話も、思念波の一つですヨ》
《……え》
なんだ!そうだったのか。確かに、頭の中で会話してるわけだし、言われてみればこれも思念波なわけだ。よし、そうと分かれば……!
《小春!一発あの敵にスキルで攻撃しながらボクの方に戻ってきて!》
《リョーカイ》
そう言うと、視界の隅で僅かに小春が動く。凄い、ほんとに自力で動けるんだ。さて、ミハイルが気付いておらず、完全にボクたちに反撃の機会が与えられたこの状況。普通だったら最大火力を稼ごうと【桜花爛漫】を撃ちたくなるところ。小春はどう動く……?
《行きマス……【脳天斬り】!》
「ぐぁっ!?」
……流石だ。今の場面、下手に【桜花爛漫】を撃っていればバレていた。あれは攻撃前に溜めが必要なスキル。桜の花びらを刀に纏わせる派手な見た目は、潜伏する上では不向きなんだ。小春はそれをちゃんと分かっていて、次に最大火力を出せる【脳天斬り】を選んだ。不意打ちだからこそ、必ず頭に当てられるからだ。
「ってぇなあ!今度は何だ……おいおい、どういうことだよこれは!?」
死角から頭へ痛恨の一撃を食らったミハイルが、こちらを振り向く。その反応をするのも無理はない。だって、刀が自立して動いているのだから。外からの声は聞こえないけど、きっとギャラリーも驚いていることだろう。実際はボクが死んだフリをしたまま思念波で動かしているんだけど。それが気づかれることはまずないだろう。
「……なるほど、ようやく分かったぜ。つまり女狐に続いて、この刀をブッ壊せばいいんだな!?」
彼なりの解釈で、この不思議な状況を納得したミハイル。そこからの動きは早かった。小春を敵と認め、即座に大剣で断ち切りにかかった。
《避けて!小春!》
《ハイ!》
ふわりとした挙動でミハイルの一撃を回避した。……予備動作が大きい。さっきのようなラッシュを受けたら、当たるのも時間の問題だ。しかも、コアの部分が先行して動くから、致命傷を回避できても刃をへし折られる可能性がある。なるほど……流石に小春単体で戦わせるのは難しいか。
《マスター、ここはワタシが引き受けマス。今のうちニ、態勢を立て直して下サイ!》
小春はそう言って、1人で立ち向かおうとする。確かに、このまま待っていればボクのHPは全快する。そうすれば、デュエルの残り時間的にもボクが優位に立てる。恐らくそれが、小春が叩き出した勝利の方程式なんだろう。でも……。
《ごめん、小春。それはできない……。無茶かもしれないけど、ボク自身が戦って勝たないと》
《……何故でしょうカ?勝利の可能性が下がるダケでは?》
《確かに、そうかもしれない……でも、この戦いはボクが強くなるために、ボクが始めたものなんだ。だから……やっぱりボクが戦わないと、誰も納得しないよ》
元はといえば、ボクがプレア殿の隣に立つため、その一貫として吹っかけた勝負だ。今こうして小春に助けてもらっている以上、最初思い描いていた理想からは離れてしまったけど……それでもボクが強くなって、彼を守れる力になりたいという願いは変わらない。それこそがボクの原動力であり、戦う理由なんだ。
《ナルホド、強くなるタメ……分かりまシタ。ですが、無理は禁物ですヨ?》
《ッ!ありがと!じゃあ早速……》
そう言って、ボクは小春に作戦を伝えた。内容は至ってシンプル、ボクの元まで誘き寄せてほしい。これだけだ。ミハイルが良い位置に来るまで避け続けてもらわないといけないけど、そこは小春を信じる。一応、スキルも大体のものは好きに使って良いとしている。
「オラ!ちょこまかと逃げてんじゃねえぞ!!」
《クッ……!》
ミハイルの大剣が加速する。一撃一撃の隙間が短くなり、小春の動きに合わせて来た。何とか回避はしたものの、急加速で躱したせいか、反動で小春は動けない。そこにすかさずミハイルが仕掛けた。
「ブッ壊れろ、【エアロスラッシュ】!」
《……【カウンター】!》
動けないところへ高速の剣波。対応できるか……!?と一瞬ヒヤッとしたけど、杞憂に終わった。恐らく、わざと誘ったんだろう。これは本気を出していなかったというより……実戦経験を積んでいく過程で学習している、と見るべきだろうな。
そして、今ので仮説が確信に変わった。小春はボクとは独立してスキルを使うことができる。つまり、ボクが既に使った後で使えない間でも、小春は小春で、同じように使うことができるということだ。
《マスター!》
《よし!そのまま攻撃を引きつけて!》
思念波というのは思考まで読み取るのか、ボクの考えたことは小春にも伝わっていた。さっきの作戦を加筆修正して、実行を促す。小春が剣戟をゆらゆらと避けながらボクの元に近づいてくるのは、それからすぐのことだった。
《ワワッ》
痛っ。勢い余ってか、小春がよろめいてボクの上に落ちた。回収しようとうっかり身体が動かないように、必死に自分を抑える。まだだ。まだあと、少し先。ミハイルが小春めがけてトドメを刺そうとするとき。そのときが勝負だ。
「ヘヘッ、やっと捕まえたぜ……散々コケにしやがって、あぁん!?」
《…………》
ミハイルが小春の柄を乱暴に掴み、恐喝する。これは……相当イラついてるな。自分の勝利がなかったことにされた挙句、攻撃が全然当たらない時間を過ごしたんだ。当然だろう。でも、だからって小春をそんなふうに扱う彼に、同情する義理なんてものはない。ただ虎視眈々と、その時を待つ。
「……チッ、もう良い」
埒が明かないと思ったのか、ミハイルが小春をボクの方に落とす。痛っ。ダメージ判定がなくて良かった。それより、わざわざボクの上に落としたってことは……?
「そこの女狐と一緒に、消えて失くなれェ!!【メテオ ォォ……!」
そう言ってミハイルが高く跳び上がる。跳んで、ボクのずっと上空で剣を構える。これは、間違いない。スキル発動のモーションだ!わざわざこんなに跳躍し距離をとったということは、それだけ大規模なスキルなんだろう。……ここぞとばかりに、どうぞ【カウンター】して下さいと言わんばかりの。
「ブレイカー】ァァァッッ!!!」
目を閉じ、タイミングを図る。小春のおかげで取り戻せた冷静さも、繋がったプレア殿の想いも。全部、この一撃に結実させるんだ。
ミハイルの声が響き、ボクは思考の海から引きずり出される。はっ、危ない危ない。うっかり趣旨を忘れるところだった。デュエルはどちらかのHPが尽きて敗北が決定するまで、専用空間からは出られない。てことは、ボクはまだ生きてる判定になっているのか。でも、一体どういう原理で……?
《小春、ボクの身体に何かした?普通なら今頃、死んでると思うんだけど……》
《それは、ワタシが賜った能力の一つですネ。1回の戦闘につき1度ダケ、マスターのHPを1残すことができマス》
なるほど、そういう仕組みだったのか。てことはつまり、ボクが死ぬギリギリのところで、小春が能力を獲得してくれたってことか。また、プレア殿に助けてもらっちゃったな。……でも、不思議と申し訳ないとひがむ気持ちは湧いて来なかった。心にあるのはただ、もう一度立ち上がる力をくれてありがとう。純粋なその感情だ。
ボクは前からずっと、プレア殿に助けて貰ってばかりで、そのことを心のどこかで、後ろめたいと思っていたんだ。今回ボクが彼から離れたのも、そういう感情が大きくなった結果だった。
でも、1人でダンジョンに潜って、途中で仲間に会って、話を聞いて。そして、ギリギリで小春に助けられてようやく分かった。ボクは1人で戦っていたんじゃない。初めから、ボクの中には彼がいてくれたんだ。だから、もう彼の助けを拒む必要なんてない。だって、離れていても、小春を通じて彼の心が伝わって来るから。それがこんなにも、頼もしいから。
本当に大切なのは、割りに合うお返しをすることでも、役に立つことでもない。ただ感謝の気持ちだけを忘れずに、心を共にする。重ね合わせる。それがボクの助けになり、彼の力になるんだ。小春が、そのことを気づかせてくれた。
《ありがとう小春、プレア殿……。ボクは、戦わなくちゃいけない。戦って、勝たなくちゃ。そのために……力を貸してくれる?》
《モチロンです。マスターの喜びは、ワタシの喜び。勝利への最適なルートを共に導くのが、ワタシの使命ですカラ》
瞬間、暗かった視界が開ける。さっきの空間だ。まだミハイルは、ボクが死んだと勘違いしてここからの脱出を試みているようだ。丁度良い……ちょっと卑怯だけど、不意打ちさせてもらおう。進化した小春の使い方を試す練習にもなるし。
《小春、今ボクたちの距離は大きく離れている。でも、取りに行けば間違いなく敵に見つかる……どうすれば良い?》
《【チャネリング】をお試し下サイ。スキル欄にも追加されているハズです》
そう言われ、ボクはミハイルに見つからないようにそっとステータスを覗く。……ほんとだ、いつの間に。小春が進化した段階で、装備スキルとして追加されたのかな?
【チャネリング】消費MP:なし クールタイム:なし
自身と魂を共有した特定の武器を、思念波によって自在に操る。
ほんとだ。ちゃんとスキルになってる。しかも超優秀……。とと、感傷に浸ってる場合じゃなかった。えっと、思念波って確か、最初に小春を作る時にやってたアレ、だよね?とりあえずやってみよう。動け~……!
《……マスター、それデハどうすれば良いのか分かりまセン》
くっ、やっぱりダメか。でもそうするとなぁ、どうすれば良いんだろ。こう、頭からビビビって指示を出すあの感じ。それを具体的にっていうと……あれ、これもしかして結構練習が必要なやつ……?
《……マスター。今やっているこの会話も、思念波の一つですヨ》
《……え》
なんだ!そうだったのか。確かに、頭の中で会話してるわけだし、言われてみればこれも思念波なわけだ。よし、そうと分かれば……!
《小春!一発あの敵にスキルで攻撃しながらボクの方に戻ってきて!》
《リョーカイ》
そう言うと、視界の隅で僅かに小春が動く。凄い、ほんとに自力で動けるんだ。さて、ミハイルが気付いておらず、完全にボクたちに反撃の機会が与えられたこの状況。普通だったら最大火力を稼ごうと【桜花爛漫】を撃ちたくなるところ。小春はどう動く……?
《行きマス……【脳天斬り】!》
「ぐぁっ!?」
……流石だ。今の場面、下手に【桜花爛漫】を撃っていればバレていた。あれは攻撃前に溜めが必要なスキル。桜の花びらを刀に纏わせる派手な見た目は、潜伏する上では不向きなんだ。小春はそれをちゃんと分かっていて、次に最大火力を出せる【脳天斬り】を選んだ。不意打ちだからこそ、必ず頭に当てられるからだ。
「ってぇなあ!今度は何だ……おいおい、どういうことだよこれは!?」
死角から頭へ痛恨の一撃を食らったミハイルが、こちらを振り向く。その反応をするのも無理はない。だって、刀が自立して動いているのだから。外からの声は聞こえないけど、きっとギャラリーも驚いていることだろう。実際はボクが死んだフリをしたまま思念波で動かしているんだけど。それが気づかれることはまずないだろう。
「……なるほど、ようやく分かったぜ。つまり女狐に続いて、この刀をブッ壊せばいいんだな!?」
彼なりの解釈で、この不思議な状況を納得したミハイル。そこからの動きは早かった。小春を敵と認め、即座に大剣で断ち切りにかかった。
《避けて!小春!》
《ハイ!》
ふわりとした挙動でミハイルの一撃を回避した。……予備動作が大きい。さっきのようなラッシュを受けたら、当たるのも時間の問題だ。しかも、コアの部分が先行して動くから、致命傷を回避できても刃をへし折られる可能性がある。なるほど……流石に小春単体で戦わせるのは難しいか。
《マスター、ここはワタシが引き受けマス。今のうちニ、態勢を立て直して下サイ!》
小春はそう言って、1人で立ち向かおうとする。確かに、このまま待っていればボクのHPは全快する。そうすれば、デュエルの残り時間的にもボクが優位に立てる。恐らくそれが、小春が叩き出した勝利の方程式なんだろう。でも……。
《ごめん、小春。それはできない……。無茶かもしれないけど、ボク自身が戦って勝たないと》
《……何故でしょうカ?勝利の可能性が下がるダケでは?》
《確かに、そうかもしれない……でも、この戦いはボクが強くなるために、ボクが始めたものなんだ。だから……やっぱりボクが戦わないと、誰も納得しないよ》
元はといえば、ボクがプレア殿の隣に立つため、その一貫として吹っかけた勝負だ。今こうして小春に助けてもらっている以上、最初思い描いていた理想からは離れてしまったけど……それでもボクが強くなって、彼を守れる力になりたいという願いは変わらない。それこそがボクの原動力であり、戦う理由なんだ。
《ナルホド、強くなるタメ……分かりまシタ。ですが、無理は禁物ですヨ?》
《ッ!ありがと!じゃあ早速……》
そう言って、ボクは小春に作戦を伝えた。内容は至ってシンプル、ボクの元まで誘き寄せてほしい。これだけだ。ミハイルが良い位置に来るまで避け続けてもらわないといけないけど、そこは小春を信じる。一応、スキルも大体のものは好きに使って良いとしている。
「オラ!ちょこまかと逃げてんじゃねえぞ!!」
《クッ……!》
ミハイルの大剣が加速する。一撃一撃の隙間が短くなり、小春の動きに合わせて来た。何とか回避はしたものの、急加速で躱したせいか、反動で小春は動けない。そこにすかさずミハイルが仕掛けた。
「ブッ壊れろ、【エアロスラッシュ】!」
《……【カウンター】!》
動けないところへ高速の剣波。対応できるか……!?と一瞬ヒヤッとしたけど、杞憂に終わった。恐らく、わざと誘ったんだろう。これは本気を出していなかったというより……実戦経験を積んでいく過程で学習している、と見るべきだろうな。
そして、今ので仮説が確信に変わった。小春はボクとは独立してスキルを使うことができる。つまり、ボクが既に使った後で使えない間でも、小春は小春で、同じように使うことができるということだ。
《マスター!》
《よし!そのまま攻撃を引きつけて!》
思念波というのは思考まで読み取るのか、ボクの考えたことは小春にも伝わっていた。さっきの作戦を加筆修正して、実行を促す。小春が剣戟をゆらゆらと避けながらボクの元に近づいてくるのは、それからすぐのことだった。
《ワワッ》
痛っ。勢い余ってか、小春がよろめいてボクの上に落ちた。回収しようとうっかり身体が動かないように、必死に自分を抑える。まだだ。まだあと、少し先。ミハイルが小春めがけてトドメを刺そうとするとき。そのときが勝負だ。
「ヘヘッ、やっと捕まえたぜ……散々コケにしやがって、あぁん!?」
《…………》
ミハイルが小春の柄を乱暴に掴み、恐喝する。これは……相当イラついてるな。自分の勝利がなかったことにされた挙句、攻撃が全然当たらない時間を過ごしたんだ。当然だろう。でも、だからって小春をそんなふうに扱う彼に、同情する義理なんてものはない。ただ虎視眈々と、その時を待つ。
「……チッ、もう良い」
埒が明かないと思ったのか、ミハイルが小春をボクの方に落とす。痛っ。ダメージ判定がなくて良かった。それより、わざわざボクの上に落としたってことは……?
「そこの女狐と一緒に、消えて失くなれェ!!【メテオ ォォ……!」
そう言ってミハイルが高く跳び上がる。跳んで、ボクのずっと上空で剣を構える。これは、間違いない。スキル発動のモーションだ!わざわざこんなに跳躍し距離をとったということは、それだけ大規模なスキルなんだろう。……ここぞとばかりに、どうぞ【カウンター】して下さいと言わんばかりの。
「ブレイカー】ァァァッッ!!!」
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