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第5章 失われたもの、大切なもの
第5話 信じる道への一歩
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「カンナさん、セイスさん……!?」
目の前にいるのは間違いない、あの2人だ。着いてきたんだろうか?いやいや、まさか。それだったらもっと早く気づいているはずだ。
「どうして、ここに……」
「言っただろ。お前を探しにな」
ボクを探しに……か。皆まで言われなくても何となく分かる。プレア殿のことだろう。うぅ、やっぱり心配してるのかな。フレンドも消しちゃったし……。
「それより、お前はこんなとこで何してんだ?目隠しまで着けて……」
「あ、修行です。音だけで周りを把握して戦う」
「へぇ、すげえな。そんな大変な修行までして……そこまでして、強くなりたいのか?」
目をじっと見入られる。うぐ、核心を突く質問。気圧されないためか、或いは出まかせか、気づけばボクの口は違う言葉を紡いでいた。
「え、ええ。プレイヤーが強くなろうと努力するのは、当然のことでしょう?」
「そりゃあ違いない。だが、本当にそんな向上心だけで動ける人間はそういないさ。それこそ……誰かのために、でもなけりゃな」
~~side カンナ~~
全く、セイスはまたやり過ぎですね……焦りからか、春風さんの目がすっかり虚ろになり始めてます。これ以上は危険ですね。
カンナ:そこまでよ、セイス。これ以上は……。
セイス:ん?おう、分かったよ。
やれやれ、油断ならないですね。彼は人を煽ることに関しては長けていますから……といっても、彼がそうする時は必ず奥に大切な意味があるんですが。そんなこと知っているのは私しかいないでしょうから、こうして止めてあげないと可哀想なことになってしまいます。
それに今回の相手はプレアデスさんではなくて、春風さん。女の子の心理に関しては、流石に彼より私の方が理解できます。というわけで、選手交代ですね。
「春風さん。あなたのやっていた修行……私たちにも見せてくれませんか?」
「え、修行を……?」
パッと顔を上げた彼女の表情は、戸惑いと驚きが半々といったもの。無理もありません。さっきまで否定されかけていた修行を、今度は見せてほしいなんて言われれば。確かに、その修行に……彼女自身が強くなることに、そこまで大きな意味はないかもしれません。でも私は、春風さんは彼女なりに出来ることを考えて、ここに来たんだと思うんです。
「はい。春風さんの思うように、やってほしいんです。あなたが修行の中で答えを探そうとしているのなら……その意志を貫いた方が、納得の行く結果が出るんじゃないでしょうか?」
これは私自身、研究をしてきて実感したことでもある。一度決めたことは途中で投げ出すよりも、納得がいくまで反復し検証を重ねる方が、結局一番早く結果を導けるし、見落としも少ない。最も、そのためにはどうアプローチすべきかを初めに吟味する必要がありますが……彼女なら、きっとその道を何回も通ったと思います。
リアルの都合でやむを得ず彼の元を離れた私とは違う。自らの意思で親密な人と距離を置くということは……とても重く、辛い決断だったでしょうから。
「……分かりました。では、後ろを着いて来て下さい」
彼女はそう言うと、額にたくし上げていた目隠しを下ろし、くるりと向き直り……そのまま私達に背を向けて、一歩一歩、歩き出しました。とても視界を奪われているとは思えないほどの、速い足取り。でも、それは同時にどこか、迷っているかのように感じられました。
「……ボクは、どうしたら良いか分かりません」
敵の気配がないと分かったのか、歩みは止めないまま、春風さんが徐に話し始めました。また何か言おうとするセイスを右手で宥め、無言で続きを促します。今は、黙って彼女の独白を聞き入れるべきです。私もそうですが、こういう時一番してほしいことは、とにかく話を聞いてほしい。何も言えなくても良い、ただ受け止めてほしいだけなんです。
「プレア殿の元を離れて、こんな所まで来て……本当にこれで良かったのか、自分でも分からないんです」
「後悔……してますか?」
「……そうなのかもしれません。実際、今ボクの心の中は、プレア殿の隣に戻りたいって気持ちでいっぱいですから」
彼女の進む足が遅くなります。それでも、まだ止めない。それこそが彼女の心の強さであり、強くなろうと決意した彼女の覚悟の表れなんでしょう。
「それでも、ここから立ち戻ろうとはしないんですね」
「ええ。自分で決めたことですし……それに、ボクが彼にできるのはそれだけですから」
隣でなるほどな、と頷くセイス。彼が考えていることが私の予想通りなら……同感です。やはり春風さんは、どこか昔の私に似ているみたいですね。私では口下手ですし、セイスにまた代わってもらいましょう。チャットでその旨を伝えます。
~~side セイス~~
カンナからの指示が出た。後は俺に任せてくれるらしい。なら、また止めに入られないように気をつけないとだな。さて……また昔の思い出と繋げるとしようか。
「そうだな……確かに、大切な人のために強くなりたいって気持ちはよく分かる。俺もそうだしな」
「セイスさん……」
「……だがな。悲しいことに、時にそれが裏目に出ることもあるんだ」
頭の中に映し出すフィルムは、かつての俺……ではなく、カンナの方だ。あれは確か、俺達が会って3年が経とうとしていた頃だ。いつも通りに集まって遊んでいたある時、彼女は突然こう切り出した。
『ねえセイス。私にも、戦い方を教えてほしいな……』
聞くと、普段守ってもらってばかりで悪いから、自分で自分を守れるように……とのことだった。今までずっとそのやり方で来たし、別に俺は何も思ってなかったんだが、だからと言って彼女の気持ちを蔑ろにするわけにもいかないから、俺は要望通りに、彼女の出来る範囲で戦い方を教えた。
それが全ての始まりだった。今思えば、あの時戦いを教えていなければ、あんなことにはならずに済んだのかもしれない。
~~side プレアデス~~
「……よし、こんなものかな」
たっぷりと準備に時間を費やした。あの研究所に立ち向かうため、その戦闘を容易にするために。特に今回は、誰のサポートも受けられない、1人での戦いだ。回復手段にヘイト管理、索敵に隠密と、考えるべきことが余りにも多い。
部屋を出る前に、忘れ物がないかもう一度確認。まず武器。これはいつも通り、槌と聖炎筒だ。特に炎筒の方は暗闇における光源にもなり得るため超重要品だ。特殊装備品も、タリスマンは変わらない。持続回復の効果量は、作った当時と比べると随分と少なく感じてしまうが、蒼粒石のことを考えるとまだまだ何かある……そんな気がするんだ。
一方、移動手段の2つは装備しない方がいいだろう。あの閉鎖空間ではフックショットやジェットパックの機能を活かすのは難しい。そこで、新たに特殊装備品を作成し、研究所での戦闘に適応できるようにした。まあ、新たにといっても以前作ったものをリメイクしたものだが。
『闇霊のローブ』☆7 AGI+50 発見率70%減
売価不明。暗闇に棲む亡霊の魂を取り込んで作られたローブ。周囲の闇と一体化することで発見率を大きく下げる。装備中、スキル【幻影化】を使用可能。耐久性は高くないが、敵MOBの討伐によって修繕可能。
【幻影化】消費MP:50 クールタイム:1分
発動後1分間透明化&《呪い》状態になり、最初に受けた攻撃を無効にする。攻撃を無効化すると透明化状態は解除されるが《呪い》は1分間残り続ける。
カンナさんに作った『闇夜のローブ』のリメイク版だ。研究所内は暗く狭いということもあり、そういう環境に好んで生息するダークスパイダーが巣を作っていたが、それ以外にも何故かアストラル系……所謂亡霊型のモンスターがそこら中に漂っていた。見た目もかなり人間に近く、あたかも当時の研究員であるのように振舞っているようにも見えた。
そのまま敵対しなければ良かったのだが……そう上手くはいかなかった。その時は【潜影】を駆使して1体だけ誘き寄せ、聖炎で浄化してやった。このローブに使ったのはその時ドロップした素材だった。
そうして出来たアイテムは……例に漏れず、とんでもなく強い。着けているだけで常時発見率70%ダウンはどう考えてもおかしい。まあ、ソロだからこそ使えるものだろうが。パーティで攻略する分には、仲間を守るどころか攻撃を飛び火させるようなものだ。
スキルも地味だが、なかなかに強い。簡単に言えば、使うと攻撃一回分だけ無敵状態になれると。ローブ自体の性能でそもそも見つかりにくいという点も含めると、消費MPとクールタイムの少なさが最大の武器となりそうではあるが。
ただ、流石にそんな強力な効果をローリスクで使い回せるほどヌルいゲームではない。素材のせいかもしれないが、面倒な性質まで持ち合わせている。この《呪い》状態だ。この手の強い装備やスキルに付属しているデバフ効果は、よく「代償効果」なんて言われたりしている。そして《呪い》は、そんな代償効果の中でも特に厄介なのだ。
「僕はスキルとか装備の効果で何とか戦えてるだけだからなぁ」
歩きながら思わずそう独り言をこぼす程度には面倒ということだ。《呪い》は2つの効果を持ち合わせている。一つは10秒毎にHPが最大値の1%減少する効果。これはそんなに気にしなくて良い。そもそも攻撃を受けにくいからだ。だが、もう一つの効果……全てのスキルと装備の効果が無効化されるというのが、あまりにも厄介すぎる。
これのせいでまともにスキルは使えないし、タリスマンの持続回復などの効果すらも使えない。しかもそれが1分も続くのだ。一回でも攻撃を受けてしまえば、残りの時間をほぼ素の状態で乗り切らなくてはならない。PSの高くない僕にとってこれは辛い。
本当はそのデメリットを打ち消すものも作りたかったのだが、生憎素材が集まりそうになかった。聖なる力でどうにか出来ないかとイフリートにも相談したが、そう簡単にはいかないそうだ。ひとまずは、なるべく使わずに行くしかない。
「……いよいよか」
色々と思案しながら歩くうちに、遂に研究所の地下への扉まで辿り着いてしまった。ここから先は、闇。歴史の中に葬られ、忘れ去られた亡霊達の跋扈する空間。出来ればこんな所、足を踏み入れたくはない。それでも、スロウから託された思いを繋ぐために……そして、僕とハルが、また笑っていられるように。
息を整え、重い扉を押し開けて……暗い暗い階段を、意を決して降りて行った。
プレアデス Lv.44
種族:ホムンクルス/職業:宝石技師Lv.36
HP:600→700(+250)
MP:170(+360)
STR:100(+50)
VIT:60→80(+50)
AGI:0(+50)
INT:50(+120)
RES:0
DEX:30
LUK:30
SP:0
頭…なし
胸…バトラースーツ
右手…噴炎する竜骨牙の戦槌
左手…-
脚…バトラートラウザーズ
足…執事の革靴
特殊…蒼穹のタリスマン
特殊…聖炎筒イフリート
特殊…闇霊のローブ
所持金:184700G
満腹度:60%
装備効果:物質特効(200%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) 付加(火炎) 《火傷》付与(高) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒) 対魔特効 《火傷》無効 発見率70%減
称号:《試行錯誤》《伝説を導く者》《読書好き》《宝石採集者》《伝説を錬成する者》《岩砕き》《破壊者》《無慈悲なる一撃》《石工職人見習い》《木工職人の一番弟子》《宝石技師》《禁忌の扉》《炎纏いし者》《運命の赤い糸》《昨日の敵は今日の友》《精霊を宿す者》《神域に至る者》
生産スキルセット(12/12)
【統合強化】【金属探知】【分解】【精錬】【拡大鏡】【簡易調整】【宝石融合】【宝石分解】【宝石変換】【交渉術】【覚醒強化】【宝石加工】
戦闘スキルセット(12/12)(装備中)
【硬化】【宝石片弾】【ジェットファングⅡ】【付加:陽炎柱】【脆弱化】【ジェノサイド】【精霊喚起】【付加:炎獄】【ドラゴンフレイム】【宝石爆烈弾】【退魔の神炎】【幻影化】
チェインスキル:【連鎖爆破】【バーストスマッシュ】【桜花壊塵撃】【ヴォルカニック・ゲイザー】
進行中のクエスト:『王都に眠る蒼い石』『錬金術と歴史の裏側』
目の前にいるのは間違いない、あの2人だ。着いてきたんだろうか?いやいや、まさか。それだったらもっと早く気づいているはずだ。
「どうして、ここに……」
「言っただろ。お前を探しにな」
ボクを探しに……か。皆まで言われなくても何となく分かる。プレア殿のことだろう。うぅ、やっぱり心配してるのかな。フレンドも消しちゃったし……。
「それより、お前はこんなとこで何してんだ?目隠しまで着けて……」
「あ、修行です。音だけで周りを把握して戦う」
「へぇ、すげえな。そんな大変な修行までして……そこまでして、強くなりたいのか?」
目をじっと見入られる。うぐ、核心を突く質問。気圧されないためか、或いは出まかせか、気づけばボクの口は違う言葉を紡いでいた。
「え、ええ。プレイヤーが強くなろうと努力するのは、当然のことでしょう?」
「そりゃあ違いない。だが、本当にそんな向上心だけで動ける人間はそういないさ。それこそ……誰かのために、でもなけりゃな」
~~side カンナ~~
全く、セイスはまたやり過ぎですね……焦りからか、春風さんの目がすっかり虚ろになり始めてます。これ以上は危険ですね。
カンナ:そこまでよ、セイス。これ以上は……。
セイス:ん?おう、分かったよ。
やれやれ、油断ならないですね。彼は人を煽ることに関しては長けていますから……といっても、彼がそうする時は必ず奥に大切な意味があるんですが。そんなこと知っているのは私しかいないでしょうから、こうして止めてあげないと可哀想なことになってしまいます。
それに今回の相手はプレアデスさんではなくて、春風さん。女の子の心理に関しては、流石に彼より私の方が理解できます。というわけで、選手交代ですね。
「春風さん。あなたのやっていた修行……私たちにも見せてくれませんか?」
「え、修行を……?」
パッと顔を上げた彼女の表情は、戸惑いと驚きが半々といったもの。無理もありません。さっきまで否定されかけていた修行を、今度は見せてほしいなんて言われれば。確かに、その修行に……彼女自身が強くなることに、そこまで大きな意味はないかもしれません。でも私は、春風さんは彼女なりに出来ることを考えて、ここに来たんだと思うんです。
「はい。春風さんの思うように、やってほしいんです。あなたが修行の中で答えを探そうとしているのなら……その意志を貫いた方が、納得の行く結果が出るんじゃないでしょうか?」
これは私自身、研究をしてきて実感したことでもある。一度決めたことは途中で投げ出すよりも、納得がいくまで反復し検証を重ねる方が、結局一番早く結果を導けるし、見落としも少ない。最も、そのためにはどうアプローチすべきかを初めに吟味する必要がありますが……彼女なら、きっとその道を何回も通ったと思います。
リアルの都合でやむを得ず彼の元を離れた私とは違う。自らの意思で親密な人と距離を置くということは……とても重く、辛い決断だったでしょうから。
「……分かりました。では、後ろを着いて来て下さい」
彼女はそう言うと、額にたくし上げていた目隠しを下ろし、くるりと向き直り……そのまま私達に背を向けて、一歩一歩、歩き出しました。とても視界を奪われているとは思えないほどの、速い足取り。でも、それは同時にどこか、迷っているかのように感じられました。
「……ボクは、どうしたら良いか分かりません」
敵の気配がないと分かったのか、歩みは止めないまま、春風さんが徐に話し始めました。また何か言おうとするセイスを右手で宥め、無言で続きを促します。今は、黙って彼女の独白を聞き入れるべきです。私もそうですが、こういう時一番してほしいことは、とにかく話を聞いてほしい。何も言えなくても良い、ただ受け止めてほしいだけなんです。
「プレア殿の元を離れて、こんな所まで来て……本当にこれで良かったのか、自分でも分からないんです」
「後悔……してますか?」
「……そうなのかもしれません。実際、今ボクの心の中は、プレア殿の隣に戻りたいって気持ちでいっぱいですから」
彼女の進む足が遅くなります。それでも、まだ止めない。それこそが彼女の心の強さであり、強くなろうと決意した彼女の覚悟の表れなんでしょう。
「それでも、ここから立ち戻ろうとはしないんですね」
「ええ。自分で決めたことですし……それに、ボクが彼にできるのはそれだけですから」
隣でなるほどな、と頷くセイス。彼が考えていることが私の予想通りなら……同感です。やはり春風さんは、どこか昔の私に似ているみたいですね。私では口下手ですし、セイスにまた代わってもらいましょう。チャットでその旨を伝えます。
~~side セイス~~
カンナからの指示が出た。後は俺に任せてくれるらしい。なら、また止めに入られないように気をつけないとだな。さて……また昔の思い出と繋げるとしようか。
「そうだな……確かに、大切な人のために強くなりたいって気持ちはよく分かる。俺もそうだしな」
「セイスさん……」
「……だがな。悲しいことに、時にそれが裏目に出ることもあるんだ」
頭の中に映し出すフィルムは、かつての俺……ではなく、カンナの方だ。あれは確か、俺達が会って3年が経とうとしていた頃だ。いつも通りに集まって遊んでいたある時、彼女は突然こう切り出した。
『ねえセイス。私にも、戦い方を教えてほしいな……』
聞くと、普段守ってもらってばかりで悪いから、自分で自分を守れるように……とのことだった。今までずっとそのやり方で来たし、別に俺は何も思ってなかったんだが、だからと言って彼女の気持ちを蔑ろにするわけにもいかないから、俺は要望通りに、彼女の出来る範囲で戦い方を教えた。
それが全ての始まりだった。今思えば、あの時戦いを教えていなければ、あんなことにはならずに済んだのかもしれない。
~~side プレアデス~~
「……よし、こんなものかな」
たっぷりと準備に時間を費やした。あの研究所に立ち向かうため、その戦闘を容易にするために。特に今回は、誰のサポートも受けられない、1人での戦いだ。回復手段にヘイト管理、索敵に隠密と、考えるべきことが余りにも多い。
部屋を出る前に、忘れ物がないかもう一度確認。まず武器。これはいつも通り、槌と聖炎筒だ。特に炎筒の方は暗闇における光源にもなり得るため超重要品だ。特殊装備品も、タリスマンは変わらない。持続回復の効果量は、作った当時と比べると随分と少なく感じてしまうが、蒼粒石のことを考えるとまだまだ何かある……そんな気がするんだ。
一方、移動手段の2つは装備しない方がいいだろう。あの閉鎖空間ではフックショットやジェットパックの機能を活かすのは難しい。そこで、新たに特殊装備品を作成し、研究所での戦闘に適応できるようにした。まあ、新たにといっても以前作ったものをリメイクしたものだが。
『闇霊のローブ』☆7 AGI+50 発見率70%減
売価不明。暗闇に棲む亡霊の魂を取り込んで作られたローブ。周囲の闇と一体化することで発見率を大きく下げる。装備中、スキル【幻影化】を使用可能。耐久性は高くないが、敵MOBの討伐によって修繕可能。
【幻影化】消費MP:50 クールタイム:1分
発動後1分間透明化&《呪い》状態になり、最初に受けた攻撃を無効にする。攻撃を無効化すると透明化状態は解除されるが《呪い》は1分間残り続ける。
カンナさんに作った『闇夜のローブ』のリメイク版だ。研究所内は暗く狭いということもあり、そういう環境に好んで生息するダークスパイダーが巣を作っていたが、それ以外にも何故かアストラル系……所謂亡霊型のモンスターがそこら中に漂っていた。見た目もかなり人間に近く、あたかも当時の研究員であるのように振舞っているようにも見えた。
そのまま敵対しなければ良かったのだが……そう上手くはいかなかった。その時は【潜影】を駆使して1体だけ誘き寄せ、聖炎で浄化してやった。このローブに使ったのはその時ドロップした素材だった。
そうして出来たアイテムは……例に漏れず、とんでもなく強い。着けているだけで常時発見率70%ダウンはどう考えてもおかしい。まあ、ソロだからこそ使えるものだろうが。パーティで攻略する分には、仲間を守るどころか攻撃を飛び火させるようなものだ。
スキルも地味だが、なかなかに強い。簡単に言えば、使うと攻撃一回分だけ無敵状態になれると。ローブ自体の性能でそもそも見つかりにくいという点も含めると、消費MPとクールタイムの少なさが最大の武器となりそうではあるが。
ただ、流石にそんな強力な効果をローリスクで使い回せるほどヌルいゲームではない。素材のせいかもしれないが、面倒な性質まで持ち合わせている。この《呪い》状態だ。この手の強い装備やスキルに付属しているデバフ効果は、よく「代償効果」なんて言われたりしている。そして《呪い》は、そんな代償効果の中でも特に厄介なのだ。
「僕はスキルとか装備の効果で何とか戦えてるだけだからなぁ」
歩きながら思わずそう独り言をこぼす程度には面倒ということだ。《呪い》は2つの効果を持ち合わせている。一つは10秒毎にHPが最大値の1%減少する効果。これはそんなに気にしなくて良い。そもそも攻撃を受けにくいからだ。だが、もう一つの効果……全てのスキルと装備の効果が無効化されるというのが、あまりにも厄介すぎる。
これのせいでまともにスキルは使えないし、タリスマンの持続回復などの効果すらも使えない。しかもそれが1分も続くのだ。一回でも攻撃を受けてしまえば、残りの時間をほぼ素の状態で乗り切らなくてはならない。PSの高くない僕にとってこれは辛い。
本当はそのデメリットを打ち消すものも作りたかったのだが、生憎素材が集まりそうになかった。聖なる力でどうにか出来ないかとイフリートにも相談したが、そう簡単にはいかないそうだ。ひとまずは、なるべく使わずに行くしかない。
「……いよいよか」
色々と思案しながら歩くうちに、遂に研究所の地下への扉まで辿り着いてしまった。ここから先は、闇。歴史の中に葬られ、忘れ去られた亡霊達の跋扈する空間。出来ればこんな所、足を踏み入れたくはない。それでも、スロウから託された思いを繋ぐために……そして、僕とハルが、また笑っていられるように。
息を整え、重い扉を押し開けて……暗い暗い階段を、意を決して降りて行った。
プレアデス Lv.44
種族:ホムンクルス/職業:宝石技師Lv.36
HP:600→700(+250)
MP:170(+360)
STR:100(+50)
VIT:60→80(+50)
AGI:0(+50)
INT:50(+120)
RES:0
DEX:30
LUK:30
SP:0
頭…なし
胸…バトラースーツ
右手…噴炎する竜骨牙の戦槌
左手…-
脚…バトラートラウザーズ
足…執事の革靴
特殊…蒼穹のタリスマン
特殊…聖炎筒イフリート
特殊…闇霊のローブ
所持金:184700G
満腹度:60%
装備効果:物質特効(200%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) 付加(火炎) 《火傷》付与(高) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒) 対魔特効 《火傷》無効 発見率70%減
称号:《試行錯誤》《伝説を導く者》《読書好き》《宝石採集者》《伝説を錬成する者》《岩砕き》《破壊者》《無慈悲なる一撃》《石工職人見習い》《木工職人の一番弟子》《宝石技師》《禁忌の扉》《炎纏いし者》《運命の赤い糸》《昨日の敵は今日の友》《精霊を宿す者》《神域に至る者》
生産スキルセット(12/12)
【統合強化】【金属探知】【分解】【精錬】【拡大鏡】【簡易調整】【宝石融合】【宝石分解】【宝石変換】【交渉術】【覚醒強化】【宝石加工】
戦闘スキルセット(12/12)(装備中)
【硬化】【宝石片弾】【ジェットファングⅡ】【付加:陽炎柱】【脆弱化】【ジェノサイド】【精霊喚起】【付加:炎獄】【ドラゴンフレイム】【宝石爆烈弾】【退魔の神炎】【幻影化】
チェインスキル:【連鎖爆破】【バーストスマッシュ】【桜花壊塵撃】【ヴォルカニック・ゲイザー】
進行中のクエスト:『王都に眠る蒼い石』『錬金術と歴史の裏側』
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