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第4章 焔の中の怪物
第19話 呼び覚ませ
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~~side スロウ~~
「フフ……ハハハハハハハッ!!」
いいぞ、ぼくの目論見通りだ!まさかプレアデスより先に、あの女が『真影』に触れるとは予想外だったが……これが、感情の成せる力というわけか。
思っていた以上の収穫に、思わず高笑いがこぼれてしまった。誰もいない空間に、ぼくの笑い声が響きわたる。余韻の反響を楽しみながら、ぼくは部屋の奥にある、巨大なカプセルに歩いて行った。表面に触れ、パラメータ画面を表示する。ふむ……エネルギー充填率70%、か。王都を離れた時は2割しか溜まっていなかったので、随分な進歩だ。
一応、完全体にするためのエネルギーはもう揃っている。しかし、これだけではまだ弱い。きっと、あの3人か4人に倒されるのが関の山だろう。だから、ここからは力を蓄える時間だ。そのためには、強大なエネルギーをもたらしてくれる人が必要だ。
「精々、良い養分になってよね?プレアデス、春風。そして……ユノン!」
~~side ユノン~~
「ガガガ!ドウシタ、ソノ程度カ!?」
「くっ……こいつ、見かけによらず速い……!」
今、ウチはグレンの攻撃を躱し続けている。大振りなので回避は出来るが、何しろ手数が多い。そこに、たまに隙の短い突き攻撃なんかが混ざるので、油断できない。そして何より、動きが速い。これだけ大型のゴーレムなので、もっと鈍重な動きをすると思っていたのだが……流石、軍のトップを任されるだけのスペックはある、というわけか。
でもウチだって、ただ避けてるわけではない。相手の攻撃パターンを予測し、より安全性を高める。本来ならタンクがこなすべき仕事だが、生憎今回はウチ1人。序盤に攻め手に欠けるのは仕方ないのだ。
そういえば、さっきから随分と身体が軽い。特にバフがかかってる様子もなく、雪ダルマの言うように、本当に何か身体に変化があったのかもしれないな、と思いながら、相手の袈裟斬りを横跳びに回避。即座に斧を足場に頭上に駆け上がる。跳躍し、空中で宙返りして姿勢を制御。そして撃つ!
「【スパークウェイブ】!」
文字通り、電磁波を飛ばして攻撃するスキル。シンプルで威力は高くないが、その分発生が速く、取り回しが良い。空中からの不意打ちにはピッタリだろう。
「フン、効カンワ」
まあ、ですよね。いくら電気に脆弱なゴーレムとはいえ、素のHPが高ければ耐えられるのも無理はない。でも、そんなことは織り込み済み。むしろ、次が本命だ。ウチは着地してすぐに、二の矢を放つ。
「【ボルテック・スフィア】!」
文字通り電磁波の半球を、グレンを中心に展開させる。あれは半球内にいる敵に電気ダメージを与え続ける、光属性錬金術の1つだ。光属性という割に黒い色が混じっているのは、恐らくさっきのと同じように、闇属性系の1つ、重力がかかっているからだろう。現に、周囲の岩や瓦礫が少しずつ吸い込まれている。
「グオオオオオッ!?」
よし、効いてる効いてる。少し前に分かったことだが、グレンは対陸戦闘力が非常に高い一方で、空からの攻撃への対処が難しいようで、防御してから動き出すまでに少し時間がかかっていた。そこを逃さず撃ったのだ。これで、暫く動けまい。今のうちにMPを回復しておこう。
そう思っていたところ。
「ッ!!?」
背後から急速に接近する敵影あり。ウチの索敵スキルが警鐘を鳴らしていた。咄嗟に振り返る。そこには、半球に囚われているはずのグレンがいた。
(な、どうして……!?)
とにかく逃げなきゃ!そう思ったのも束の間。急に上体を翻したことが災いしたのだろうか、ウチは足を絡ませて尻餅をついてしまった。目の前に、いないはずのグレンが迫る。しかし今度は、斧に首を捧げる気にはなれなかった。今は、倒れるわけにはいかないんだ。
しかし、スキルも間に合わない。立ち上がることも出来ない。仲間2人は他の相手で手一杯。このピンチは1人では何も出来ない。ダメだ……やられる。
(ごめん……フーちゃん)
ギュッと目を瞑る。瞬間、耳を劈くような爆音に驚き、爆風に軽く身体が吹き飛ぶ。一体、何が起こったのか……?見ると、迫っていたグレンの身体が後方に吹き飛んでいた。その身体の各所から黒い煙を立ち上らせて。
「これは……プレアデスの!」
そういえば、彼は王都前の各所に対大型モンスター用の地雷を散布していた。何でも、ウチらプレイヤーやNPCが踏んでも作動することはなく、ゴーレムのように重いモンスターが踏むことで初めて起爆するんだとか。おかげで助かった。
「ガガ……命拾イシタナ……」
目の前のグレンが立ち上がる。と共に、背後から声がする。チラッと振り返ると、囚われていた方のグレンが片膝をついていた。なるほど、謎が解けた。よく見れば分かる話だが、脚の本数が半分になっている。グレンの脚は、左右2本の大脚に4本の脚が付いた8本足構造だった。それが今は4本のみ。つまるところは。
「分裂って……それはズルくないかなぁ」
この強さのゴーレムが、2体。しかも、身体が半分になったことで軽くなっており、さっきよりも素早い。パワーは若干失われているだろうが、正直1人で2体を相手する方がよっぽど辛い。さっきのラッキーパンチも期待しない方が良いだろうし、ウチの不利に変わりはない、か。
2体のグレンが突撃してきた。やっぱり、さっきより速い。後ろ跳びで回避。電気系のスキルで牽制しつつ、距離をとる。攻撃……の暇はないな。回避。くっ、さっきまで1体牽制すれば動きが止まったのに、これではキリがない。スキルの乱発もできない。クールタイムもあるし、外した時のリスクが大きすぎる。だから、1発が限度なのだ。
その後も、避けては牽制してを繰り返す、苦しい展開が続いた。大技を使わない分MPにはまだ余裕はあるが、問題はスキルだ。色々なスキルを駆使したため、残っているのは発動する暇のない大技と、クールタイムの短い数個のみ。次の次の展開を予測しながら使わないといけないため、ウチの頭は疲労を重ねていた。
「ガラ空キダ!」
「うぁっ……!」
一瞬立ち止まった時、身体の側面からタックルを決められる。斧でないとはいえ、仮にも鋼鉄の巨体による体当たり。無事で済むはずもなかった。さっきの雪ダルマのように身体が吹き飛ばされ、宙を舞う。急な出来事に、身体の制御が追いつかない。それを見逃してくれるグレンではなかった。
「ガガ……【パラライズ・ショック】!」
「あああぁぁあぁぁぁっっ!!」
もう片方のグレンだ。空中で何も出来ずにいるウチに、外すことなく決めてきた。コイツ、そういえばまだスキルを使っていなかった……所詮ウチでは、本気を引き出すことすら出来なかったということか。
受け身を取れずに着地。さっきのスキルで《麻痺》がかかっていて、まともに挙動を取れなかったからだ。加えて、タックルと着地でHPも半分を切った。身体が、悲鳴をあげている。
何とか視線をグレンの方に向ける。ヤツは分裂体と合流すると、優雅に元の状態に戻っていた。その様子がどうにも腹立たしく、そして悔しく思えてならなかった。大きな力を前に、何もできない。フーちゃんが味わったのも、きっとこんな感情だったのだろう。
「ガガガ……シブトイ奴メ。ダガ、コレデ終ワリダナ」
合体を終えたグレンが、のそのそと近づいてくる。やめろ……来るな……。心ではそう思っても、どこかに隠し続けていた恐怖が顔を覗かせたか、まともに声を絞り出すこともできない。勝利を確信したように、敢えて余裕を晒すように……さっきまでの高速戦闘が嘘みたいに、ゆっくりと歩みを進めてくる。
きっと、虚ろな目をしていたんだと思う。恐怖や怒りの感情は、いつしか諦めに変わろうとしていた。ダメだ……勝てない。ネガティブな思考が、にじり寄るようにウチの頭を満たしていく。精一杯、抵抗はした。でも、敵わなかった。届かなかった。だから、もう無理だ……。1人では、何も出来なかった。ウチ1人では……。
暗い海に沈むように、ウチの意識は溶けていった。
………
『痛いよ、怖いよ……助けて……ご主人様!お父さん!』
………
『ぐ、あぁぁぁっ、脚が……だが、私は屈しないぞ。あいつが……ご主人の元に帰るまでは!』
………
「……ッッ!」
まだだ、まだ諦めちゃダメだ!
ゴーレムが進軍する危険地帯を、危険を承知でギリギリの高さまで降りて、ウチらに分かりやすいように飛び続けてくれたホーちゃん。自分の娘を助けるために、命と引き換えにウチの元へ逃がしてくれたフーちゃん。
彼らが感じた恐怖は、もっと大きかった。彼らがその身に受けた痛みは、もっと痛かった!
「心配スルナ……ガガ。オ前モスグニ、アノ鳥ノ元ニ送ッテヤロウ」
ふざけるな。ウチはまだ死ねないんだ。ゲームだろうとなかろうと、生き返ろうとなかろうと関係ない。ただ、グレン……お前を消し炭にして、フーちゃんの仇を討つまでは、死にたくない。死ぬわけにはいかないんだ!
ぐっ……身体が麻痺で動かない。動け、動け、動け!
神でも良い。悪魔でも良い。もう一度立ち上がって、コイツと戦うための力を貸してくれ!
「う……ごけ、動け、動け!!」
ウチの手。ウチの足。ゲームのシステムなんかに負けるな!ウチのためじゃない。ウチの一番大切なもののために!
お願い……誰か、力を貸して。
戦うための……守るための……力を!!
………
ーーー称号《生への渇望》を獲得しました。
ーーー感■■ント■■■シ■テムが■カイ■を突破。称号《生への渇望》は究極称号《真理を超える意志》に派生進化しました。
ーーー『真影』との交信を確認……条件が揃いました。エクストラスキル群【真影術】を解放します。
ーーースキル【真影術の壱・遷し身】を獲得しました。
「フフ……ハハハハハハハッ!!」
いいぞ、ぼくの目論見通りだ!まさかプレアデスより先に、あの女が『真影』に触れるとは予想外だったが……これが、感情の成せる力というわけか。
思っていた以上の収穫に、思わず高笑いがこぼれてしまった。誰もいない空間に、ぼくの笑い声が響きわたる。余韻の反響を楽しみながら、ぼくは部屋の奥にある、巨大なカプセルに歩いて行った。表面に触れ、パラメータ画面を表示する。ふむ……エネルギー充填率70%、か。王都を離れた時は2割しか溜まっていなかったので、随分な進歩だ。
一応、完全体にするためのエネルギーはもう揃っている。しかし、これだけではまだ弱い。きっと、あの3人か4人に倒されるのが関の山だろう。だから、ここからは力を蓄える時間だ。そのためには、強大なエネルギーをもたらしてくれる人が必要だ。
「精々、良い養分になってよね?プレアデス、春風。そして……ユノン!」
~~side ユノン~~
「ガガガ!ドウシタ、ソノ程度カ!?」
「くっ……こいつ、見かけによらず速い……!」
今、ウチはグレンの攻撃を躱し続けている。大振りなので回避は出来るが、何しろ手数が多い。そこに、たまに隙の短い突き攻撃なんかが混ざるので、油断できない。そして何より、動きが速い。これだけ大型のゴーレムなので、もっと鈍重な動きをすると思っていたのだが……流石、軍のトップを任されるだけのスペックはある、というわけか。
でもウチだって、ただ避けてるわけではない。相手の攻撃パターンを予測し、より安全性を高める。本来ならタンクがこなすべき仕事だが、生憎今回はウチ1人。序盤に攻め手に欠けるのは仕方ないのだ。
そういえば、さっきから随分と身体が軽い。特にバフがかかってる様子もなく、雪ダルマの言うように、本当に何か身体に変化があったのかもしれないな、と思いながら、相手の袈裟斬りを横跳びに回避。即座に斧を足場に頭上に駆け上がる。跳躍し、空中で宙返りして姿勢を制御。そして撃つ!
「【スパークウェイブ】!」
文字通り、電磁波を飛ばして攻撃するスキル。シンプルで威力は高くないが、その分発生が速く、取り回しが良い。空中からの不意打ちにはピッタリだろう。
「フン、効カンワ」
まあ、ですよね。いくら電気に脆弱なゴーレムとはいえ、素のHPが高ければ耐えられるのも無理はない。でも、そんなことは織り込み済み。むしろ、次が本命だ。ウチは着地してすぐに、二の矢を放つ。
「【ボルテック・スフィア】!」
文字通り電磁波の半球を、グレンを中心に展開させる。あれは半球内にいる敵に電気ダメージを与え続ける、光属性錬金術の1つだ。光属性という割に黒い色が混じっているのは、恐らくさっきのと同じように、闇属性系の1つ、重力がかかっているからだろう。現に、周囲の岩や瓦礫が少しずつ吸い込まれている。
「グオオオオオッ!?」
よし、効いてる効いてる。少し前に分かったことだが、グレンは対陸戦闘力が非常に高い一方で、空からの攻撃への対処が難しいようで、防御してから動き出すまでに少し時間がかかっていた。そこを逃さず撃ったのだ。これで、暫く動けまい。今のうちにMPを回復しておこう。
そう思っていたところ。
「ッ!!?」
背後から急速に接近する敵影あり。ウチの索敵スキルが警鐘を鳴らしていた。咄嗟に振り返る。そこには、半球に囚われているはずのグレンがいた。
(な、どうして……!?)
とにかく逃げなきゃ!そう思ったのも束の間。急に上体を翻したことが災いしたのだろうか、ウチは足を絡ませて尻餅をついてしまった。目の前に、いないはずのグレンが迫る。しかし今度は、斧に首を捧げる気にはなれなかった。今は、倒れるわけにはいかないんだ。
しかし、スキルも間に合わない。立ち上がることも出来ない。仲間2人は他の相手で手一杯。このピンチは1人では何も出来ない。ダメだ……やられる。
(ごめん……フーちゃん)
ギュッと目を瞑る。瞬間、耳を劈くような爆音に驚き、爆風に軽く身体が吹き飛ぶ。一体、何が起こったのか……?見ると、迫っていたグレンの身体が後方に吹き飛んでいた。その身体の各所から黒い煙を立ち上らせて。
「これは……プレアデスの!」
そういえば、彼は王都前の各所に対大型モンスター用の地雷を散布していた。何でも、ウチらプレイヤーやNPCが踏んでも作動することはなく、ゴーレムのように重いモンスターが踏むことで初めて起爆するんだとか。おかげで助かった。
「ガガ……命拾イシタナ……」
目の前のグレンが立ち上がる。と共に、背後から声がする。チラッと振り返ると、囚われていた方のグレンが片膝をついていた。なるほど、謎が解けた。よく見れば分かる話だが、脚の本数が半分になっている。グレンの脚は、左右2本の大脚に4本の脚が付いた8本足構造だった。それが今は4本のみ。つまるところは。
「分裂って……それはズルくないかなぁ」
この強さのゴーレムが、2体。しかも、身体が半分になったことで軽くなっており、さっきよりも素早い。パワーは若干失われているだろうが、正直1人で2体を相手する方がよっぽど辛い。さっきのラッキーパンチも期待しない方が良いだろうし、ウチの不利に変わりはない、か。
2体のグレンが突撃してきた。やっぱり、さっきより速い。後ろ跳びで回避。電気系のスキルで牽制しつつ、距離をとる。攻撃……の暇はないな。回避。くっ、さっきまで1体牽制すれば動きが止まったのに、これではキリがない。スキルの乱発もできない。クールタイムもあるし、外した時のリスクが大きすぎる。だから、1発が限度なのだ。
その後も、避けては牽制してを繰り返す、苦しい展開が続いた。大技を使わない分MPにはまだ余裕はあるが、問題はスキルだ。色々なスキルを駆使したため、残っているのは発動する暇のない大技と、クールタイムの短い数個のみ。次の次の展開を予測しながら使わないといけないため、ウチの頭は疲労を重ねていた。
「ガラ空キダ!」
「うぁっ……!」
一瞬立ち止まった時、身体の側面からタックルを決められる。斧でないとはいえ、仮にも鋼鉄の巨体による体当たり。無事で済むはずもなかった。さっきの雪ダルマのように身体が吹き飛ばされ、宙を舞う。急な出来事に、身体の制御が追いつかない。それを見逃してくれるグレンではなかった。
「ガガ……【パラライズ・ショック】!」
「あああぁぁあぁぁぁっっ!!」
もう片方のグレンだ。空中で何も出来ずにいるウチに、外すことなく決めてきた。コイツ、そういえばまだスキルを使っていなかった……所詮ウチでは、本気を引き出すことすら出来なかったということか。
受け身を取れずに着地。さっきのスキルで《麻痺》がかかっていて、まともに挙動を取れなかったからだ。加えて、タックルと着地でHPも半分を切った。身体が、悲鳴をあげている。
何とか視線をグレンの方に向ける。ヤツは分裂体と合流すると、優雅に元の状態に戻っていた。その様子がどうにも腹立たしく、そして悔しく思えてならなかった。大きな力を前に、何もできない。フーちゃんが味わったのも、きっとこんな感情だったのだろう。
「ガガガ……シブトイ奴メ。ダガ、コレデ終ワリダナ」
合体を終えたグレンが、のそのそと近づいてくる。やめろ……来るな……。心ではそう思っても、どこかに隠し続けていた恐怖が顔を覗かせたか、まともに声を絞り出すこともできない。勝利を確信したように、敢えて余裕を晒すように……さっきまでの高速戦闘が嘘みたいに、ゆっくりと歩みを進めてくる。
きっと、虚ろな目をしていたんだと思う。恐怖や怒りの感情は、いつしか諦めに変わろうとしていた。ダメだ……勝てない。ネガティブな思考が、にじり寄るようにウチの頭を満たしていく。精一杯、抵抗はした。でも、敵わなかった。届かなかった。だから、もう無理だ……。1人では、何も出来なかった。ウチ1人では……。
暗い海に沈むように、ウチの意識は溶けていった。
………
『痛いよ、怖いよ……助けて……ご主人様!お父さん!』
………
『ぐ、あぁぁぁっ、脚が……だが、私は屈しないぞ。あいつが……ご主人の元に帰るまでは!』
………
「……ッッ!」
まだだ、まだ諦めちゃダメだ!
ゴーレムが進軍する危険地帯を、危険を承知でギリギリの高さまで降りて、ウチらに分かりやすいように飛び続けてくれたホーちゃん。自分の娘を助けるために、命と引き換えにウチの元へ逃がしてくれたフーちゃん。
彼らが感じた恐怖は、もっと大きかった。彼らがその身に受けた痛みは、もっと痛かった!
「心配スルナ……ガガ。オ前モスグニ、アノ鳥ノ元ニ送ッテヤロウ」
ふざけるな。ウチはまだ死ねないんだ。ゲームだろうとなかろうと、生き返ろうとなかろうと関係ない。ただ、グレン……お前を消し炭にして、フーちゃんの仇を討つまでは、死にたくない。死ぬわけにはいかないんだ!
ぐっ……身体が麻痺で動かない。動け、動け、動け!
神でも良い。悪魔でも良い。もう一度立ち上がって、コイツと戦うための力を貸してくれ!
「う……ごけ、動け、動け!!」
ウチの手。ウチの足。ゲームのシステムなんかに負けるな!ウチのためじゃない。ウチの一番大切なもののために!
お願い……誰か、力を貸して。
戦うための……守るための……力を!!
………
ーーー称号《生への渇望》を獲得しました。
ーーー感■■ント■■■シ■テムが■カイ■を突破。称号《生への渇望》は究極称号《真理を超える意志》に派生進化しました。
ーーー『真影』との交信を確認……条件が揃いました。エクストラスキル群【真影術】を解放します。
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