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第4章 焔の中の怪物

第10話 開戦

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あの後、僕達は更なる設備の充実を図った。具体的には、迎撃用の櫓を作ったり、僕達がいない間、本陣や街を守るための機械を作ったりした。それが終わった後は、雪ダルマさん達と戦術の確認をしたり、模擬戦で戦闘スタイルを共有したりした。流石に彼らは強かったな。

特に雪ダルマさんとの模擬戦は楽しかった。お互いチェインスキルの使い手というのもあり、何が起きるか分からないあの感覚が後を引いた。終わった後、そのまま新しいチェインスキルを模索する流れになって、戦争前日とは思えないくらい楽しかった。まあ、ゲームだし楽しんだ者勝ちだもんね?

そして、日が明けて。いよいよ、スロウ率いるゴーレム軍との戦争が始まる。僕は朝7:00を前に、最後の錬成を行なっていた。出発の時、餞別としてグスターヴさんヵら大量の紅焔石を貰っていた。勿論他の防衛施設にも注ぎ込んだが、本来一番使いたかったものがまだだった。色々ドタバタしてたからね。

「改めて見ると凄いな、その武器」

背後から声が聞こえる。雪ダルマさんだ。

「ええまあ、これだけゴテゴテしてますしね……」

「見た目だけではないぞ。性能も一級品だろう?」

「最前線プレイヤーから見ても、ですか!?」

「ああ、自作ならではのオリジナリティもあってな。今最前線で出回っているのは、殆どステータスだけの市販品なんだ」

それは意外だな。最前線といえば、もっと多彩なスキルが飛び交い、武器の効果も多岐に渡ると思っていただけに。

「実際、VRMMOなんてステータスが全てだからな……でも、俺はそうじゃないって思ってる」

そう言いながら、雪ダルマさんは盾に内蔵された鞘から剣を引き抜いて、僕に見せてくれた。スロウと遭遇したあの時と同じ剣だ。細身だが、力強さを感じる。

「良い剣ですよね、それ」

「流石、見ただけで分かるか。でも、この剣の力はこんなものではないぞ」

見ててくれ、と言うや否や、雪ダルマさんがボソボソと詠唱を始める。剣にマナを注ぎ込んでいるのだろう。しかし、何故わざわざ詠唱を?

「【剣の解放】」

彼がそのスキル名を口にした次の瞬間、彼の剣が形を変えた。刃の一部がスライドし、内部が赤く輝いている。ドクドクと心臓が脈打つように。

「これが……」

「そう、俺の剣『天命剣デュランダル』の本来の姿さ。これを打った鍛治職人は……君と似ているかもな」

ハハッ、と笑いをこぼす。それを見て、僕も笑いがこぼれた。僕と似た鍛治職人……か。多分プレイヤーだろうが、一体どんな人なんだろうか?今度紹介してくれるらしい。楽しみにしていよう。

「まあ、確かにステータスの高さだけで一律化されたゲームなんて、面白くないですもんね」

「その通りだ。最も、ステータスの追求にも色々な工夫があるのは事実だが……俺は、俺のスタイルで少しでも皆の意識を変えたいんだ。だから、初めて君のことを聞いた時……正直嬉しかったよ。自分と同じ考えの人がいた、とな」

そう言いながら彼は木の幹に背をもたれ、天を仰ぎ……爽やかな笑みをこぼした。彼は、このゲームのみならず、数々のゲームで最強であり続けたプレイヤー。そして、誰もが知る有名人。しかし、本当は……どこか、孤独だったのかもしれない。

「昔はテラとユノンも、ステータス至上主義だった。今はこうして理解して、一緒に色々なゲームを遊んでくれてはいるが」

僕のような一般プレイヤーとは違う。最強を手にし、誰もが知る存在になったからこそ。その認知度と比例しない理解者の数に、苦悩しているんだ。

「……すまない、しんみりさせてしまったな」

「い、いえ、別にそんなことは……」

「俺が嫌なのさ。ゲームは、楽しく遊ぶものだからな」

言いながら土埃を払い、立ち上がる。その足取りは、妙にぎこちなかった。

「さあ、俺に見せてくれ。君の力を……【統合強化】の可能性を」

「……はいっ」

雪ダルマさんにそう言われちゃ、頑張らないわけにはいかない。恐らく僕のこのスタイルも、共感できるという人は多くはなかろう。それでもここまで来れているのは、ハルを中心に、一緒に行動をしてくれた仲間達のおかげなのだ。だから今度は、僕が雪ダルマさんにそれを繋ぐ番だ。作品を通して、少しでも彼を勇気付けられたら。

ーーー統合強化に成功しました。『噴炎する恐牙の戦槌ブーストファング・ウォーハンマー』『精錬されたドラゴンの骨』『紅焔石』『ファイアリザードの秘薬』は『噴炎する竜骨牙の戦槌ブーストファング・ドラゴハンマー』に統合強化されました。

ーーー職業レベルがアップしました。(Lv.24→26)

ーーー宝石技師Lv.25に到達。スキル【宝石変換ジェム・コンバージョン】を獲得しました。

「ふぅ、出来ました」

「さっきのドラゴンの骨を使ったのか。フィールドに落ちていただけの素材が、こんな形に昇華するとはな」

通常、生物由来の素材については、その辺に落ちているものよりも当然、直接倒してドロップさせた方が、主に耐久性においてずっと品質が良い。しかし、僕の武器はずっと「初心者」装備の派生を貫いている。耐久力無限の性質を活かせば、ある程度風化した素材でも導入できるのが魅力なのだ。

「それで、今回はどこが強化されたんだ?」

「それはですね……ッ!!」

「来たか」

武器の性能紹介でもしようとしたところ、どうやら敵のお出ましのようだ。ハル達も既に気づいてか、こちらに合流しようと動いてるのが分かる。

「ついに来ましたか……」

「そのようだな。武器の性能は、戦いの中で教えてくれ」

「勿論、そのつもりです」

さて、前回のゴーレム100体の行軍。あれを戦争の引き金にするくらいなのだから、今回の軍はその比ではないだろう。それに向こうは、失うものが何もない。恐れという感情も。だから、恐らく物量にものを言わせて、被弾覚悟で強引に突破を図ってくる。そして、たった7人で前線を張る僕達にとって、その戦法は一番キツい。

一応、罠や地雷、固定砲台も各所に設置し、加えて手の空いているプレイヤーの多くがフリーディア防衛にあたっている。今回のは緊急クエストとして、プレイヤー向けに大々的に報じられていたのが大きい。当然、僕達も参加者だ。それでも、参加者の平均レベルが知れない以上油断はできない。最低限、上位機だけでも食い止めなくては。

春風:プレア殿!

ハルからのチャットだ。こちらに来ないということは、手が離せないか、よほど状況が悪いかだろう。それでこちらに来ることが出来ずにいる、と。

プレアデス:ハル、何かあったの?

春風:雪ダルマさんと2人だよね?急いで来て!

プレアデス:了解、すぐ行くよ!

「雪ダルマさん!」

「俺も連絡を受けた。急ぐぞ」

「はい!」

こういう時のために、移動用の柱を建てておいてよかった。僕は背後で雪ダルマさんがスキルを発動していくのを尻目に、柱の一番上に向けてアンカーを射出した。ハルのいるポイントまでは遠くない。射出は一回で十分だ。慣性に身を任せ滑空しながら目で素早く誰もいない地点を見つけると、バックエンジンを逆回転させて着地の衝撃を和らげた。

「ハル!」

「プレア殿、あれ見て!」

ハルの指し示す方向には、カンナさん達が勢揃いしていた。僕は後ろにあった岩によじ登り、その光景を目にしたのだった。

「なん、なんだよ、この数……!?」

ここは丘の上。眼下に見下ろすのは、黒金色に覆われた大地。初めはそれが元の色だと納得しかける。しかし、よく見るとそれら一つ一つは粒のようで、粒の群勢は狭そうにひしめき合いながら、確かにこちらへ向けて歩みを止めずにいる。それら全てが敵軍であると、認めたくない現実を納得するのに、そう時間はかからなかった。



プレアデス Lv.31
種族:ホムンクルス/職業:宝石技師Lv.26
HP:550(+250)
MP:170(+360)
STR:75(+50)
VIT:50(+50)
AGI:0(+30)
INT:50(+120)
RES:0
DEX:30
LUK:30

SP:0

頭…なし
胸…バトラースーツ
右手…噴炎する竜骨牙の戦槌ブーストファング・ドラゴハンマー
左手…-
脚…バトラートラウザーズ
足…執事の革靴
特殊…蒼穹のタリスマン
特殊…レイジ・オブ・イフリート
特殊…空間機動ベルト

所持金:38500G

満腹度:80%

装備効果:物質特効(200%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) 付加エンチャント(火炎) 《火傷》付与(高) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒) 《火傷》耐性

称号:《試行錯誤》《伝説を導く者》《読書好き》《宝石採集者ジェム・コレクター》《伝説を錬成する者》《岩砕き》《破壊者》《無慈悲なる一撃》《石工職人見習い》《木工職人の一番弟子》《宝石技師》《禁忌の扉》《炎纏いし者》《運命の赤い糸》

生産スキルセット(9/12)
【統合強化】【金属探知】【分解】【精錬】【拡大鏡】【簡易調整】【宝石融合ジェム・ボンド】【宝石分解ジェム・スクラップ】【宝石変換ジェム・コンバージョン

戦闘スキルセット(9/12)(装備中)
【硬化】【宝石片弾ジェム・ブラスト】【ジェットファング】【付加エンチャント:陽炎柱ヘイズピラー】【脆弱化】【ジェノサイド】【精霊喚起】【付加エンチャント:炎獄ブレイズプリズン】【ドラゴンフレイム】

チェインスキル:【連鎖爆破】【バーストスマッシュ】【桜花壊塵撃】【ヴォルカニック・ゲイザー】
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