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第3章 蒼粒石の秘密
第12話 ホムンクルス
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……おかしい。
さっきからずっと攻撃を受けているのに、全く倒れる気配がない。こちらが決め手に欠けるのかもしれないし、向こうのHPが高すぎるのかもしれない。でも、それだけではない気がする。何かを感じる。
ボスの動き自体は、確実に鈍くなっている。だから、尚更攻撃の手を止めようにも止められないのだ。ハルはというと、まだ出ない。彼女は攻撃の切り札として期待されているらしい。アプデ前なら間違いなく期待出来たんだけれど。新しく造った武器を、どこまで使いこなせるか次第だろう。
「次、来るぞ!」
「っ、はい!」
雪ダルマさんの声と共に喝を入れる。一旦この攻撃を受け止める。といっても、段々と攻撃が弱まっているため、雪ダルマさんにとってはチェインスキルの実験台にされているが。僕にもそれくらいの余裕がほしいよ、ほんと。
「今度こそ…【ショックシールド】【剛剣】!」
雪ダルマさんは先程から、この組み合わせによるチェインスキル作成を試みているようだ。よく見てみると、毎回盾からの剣の出方や振り方が違う。色々とイメージがあるんだろう。今回は……突きだ。
あれだけ硬い腕が相手でも剣が壊れないのは、完全にあの【剛剣】というスキルのおかげだろう。ハルの刀にも似たようなものを付けたいな。今は【硬化】で物理的に硬さを上げただけで、何も数値的なボーナスは得られていないし。
突きを受けた巨人の腕が仰反る。これを巨人の本体に向けて打ち返すのが、僕の役目だ。よし、僕もチェインスキルを試そう。前々からイメージを重ねて来たんだ。そろそろ行けるだろう。
「【宝石片弾】!」
巨人の腕の先端に、宝石の破片を飛ばす。今回は蒼粒石だけでなく、紅焔石も一緒だ。既に不安定なエネルギー同士が反応し始めてパチパチと火花が散っているが、まだ大丈夫だ。さあ、ここからだ。別にスキル化されているわけではないが、多分大丈夫だろう。
「ふっ!」
僕は【ジェットファング】ではなく、ただ炎を纏わせただけの槌で、思い切り腕先をぶっ叩く。瞬間、周囲に飛ばしておいた青と赤の宝石片達が、急激な熱エネルギーを受けて激しく反応する。紅焔石を介することで、より炎との反応性を上げるつもりだったのだが、どうやら上手く行きそうだ。
ッダーン!!
大きな爆発音と共に、さながらロケットのように腕が打ち出されて行く。すぐに本体の方に到達したと思いきや、今の衝撃で本体も少しよろめいた。あの巨体が少しでもバランスを崩したらどうなるか?答えは目に見えている。
先程よりも大きな音を上げて、巨人が尻餅をつく。大チャンスだ。
「よし!総攻撃開始!遊撃隊、後衛を先導しつつ前進してくれ!」
雪ダルマさんの素早い指示で、前衛の多くが突撃していく。そしてその頭上を、ユノンさんを始めとする錬金術師団の攻撃が先行して飛んでいく。僕達も参加するみたいだ。走りながら、さっきの攻撃を確認する。
ーーーチェインスキル【バーストスマッシュ】を獲得しました。
よし、成功だ!どうやら、必ずしもスキル同士の組み合わせでなくてはならないわけではないようだ。まあ確かに、ハルの【閃刀:刹那】も、実際にダメージを与えているのは通常攻撃だし。最も、あの速さで移動しながら抜刀会心なんてされようものなら、誰も通常攻撃だとは思わないだろうが。
「おめでとう、プレアデスさん。俺もさっきので成功したよ」
「おお!良かったですね!」
雪ダルマさんも、さっきのやり方で通ったみたいだ。良いね良いね。どんどん手札が増えて楽しくなってきた。と、危ない危ない。うっかり趣旨を忘れるところだった。僕の遅いAGIのお陰で到着までは時間がある。今のうちに相談してしまおう。
「あの、雪ダルマさん?」
「どうした?」
「あのボスなんですが…もしかするとホムンクルスかもしれません」
「……そうか、そういえばプレアデスさんはホムンクルスだったな。何か特徴を掴んだのか?」
「ええ。雪ダルマさんやテラナイトさん、ユノンさんのような最強プレイヤーの攻撃を受けても平気でいられる理由…そして、攻撃を受ける度に動きが鈍くなって行く理由。この2つはちょうど、ホムンクルスのアビリティの【再生】で説明できるんです」
「確かに。最も、敵がプレイヤーと同じアビリティを有しているかは定かではない……が、参考になりそうだ。ありがとう!」
走りながら真剣に考える素振りを見せた後、爽やかな笑顔でそんなことを言われる。ああ、これが数々の女性プレイヤーを虜にして来たイケメンの笑顔……って、そうじゃなくて!
ともかく、部隊のトップである彼に伝わったのなら話は早い。すぐに伝達されるはずだ。
~~side 春風~~
たった今、雪ダルマさんから部隊全員に通知が入った。どうやら、あのボスはホムンクルスで、再生能力を有している可能性が高い、と。まあ、ホムンクルスなのは名前的に間違い無さそうなので良いとして。
「再生、か……」
プレア殿が使うアビリティと同じだ。使うと体力を大きく回復出来る代わりに、ステータスが減衰する。ボスの動きが鈍っていたのはそういうことか。それなら、チマチマ攻撃しているのでは追いつかない。ボクは一瞬迷った末、腰のベルトに差した刀の片方……右の腰に付けた方に手をかける。
「やれる?小春」
意識の奥底で、小春が反応する。頷いたのだろうか?流石に何も分からないが、穏やかな反応なので否定の意味ではないだろう。こっちの刀には抜刀攻撃のボーナスなんて付いてないので、走りながら引き抜く。桜色の刃が妖しく輝く。うん、行ける気がする!
「行くよ!【電光石火Ⅱ】!」
人で溢れる前線を超速で駆け抜け、ボスの顔面の近くに躍り出る。隊列から「おお……」と感嘆の声が洩れるが、気にしない。小春には事前に【硬化】を起動させている。今の小春は鉄をも引き裂く刃を持つ。ホムンクルスがどうかは分からないが、無いよりは確実に良いだろう。
「からの……【螺旋衝】!」
空中で体制を立て直し、刀身を巨人の眉間に突き立てる。ギンッ!という金属のような音を立てた辺り、やっぱり人間とは全く違う。だが、刃の素材とダウンロードした【硬化】のお陰で、刀身が数センチほど入った。これなら行ける。
「食らえぇ!」
そして、先端から螺旋状の衝撃波を放出する。【レイジ】も使っているし、プレア殿の作ってくれた『刀剣ホルスター』によって刀が2本とも装備出来ている。ステータス的な恩恵もあり、火力は十分だ。
「オォォォォッ!!??」
巨人が驚いたような声を上げる。どうやらかなり効いてくれたようだ。流石に外が硬いホムンクルスでも、内部を攻撃されたらたまったものじゃないだろう。さっき刀を突き立てたのはこのためだ。
「まだだ!再生する隙を与えるな!」
雪ダルマさんから喝が入る。すると一層苛烈に、錬金術が雨のように巨人に降り注ぐ。ボクに当たらないように撃ってくれている辺り、この討伐隊のレベルの高さが窺える。
空中で一回転して、着地。すかさず斬り込んで行く。この刀に付けた硬化は、スキルの【硬化】とは違って、コアからのエネルギー供給の続く限り際限なく続く。単純な機能で消費も少ないため、タリスマンと併用すれば実質半永久的に使用できるはず……と、プレア殿が言ってた。
おかげで、ただでさえ良い切れ味が更に増している。ホムンクルスの硬い表面も、度重なる再生による減衰もあるだろうが、そこそこしっかり斬ることができている。と、半ばいじめのような構図が暫く続いた時。
目の前の巨人が、音もなく弾けた。
~~side 終了~~
「勝った!あの巨人に勝ったぞー!」
皆が勝利を確信し、歓喜の声を、勝鬨を上げる。だが、その中に1人、まだ勝利を確信出来ていない人がいた。セイスさんだ。
「何かおかしい……」
「どうしたんですか?セイスさん」
「いや、俺の憶測でしかないんだが……レイドボスって、こんな単純な動きしかしないものなのか?」
いつもより低い声で、自分の意見を確かめるようにゆっくりと言う。確かに。このゲームの難易度ははっきり言って高めだ。そんなゲームのボスとして、ただパンチをするだけの敵というのは不相応だ。
「ロックギガースの時もそうだ。それに聞いた話では、ここらのボスは全部ゴーレム系だったらしい……」
「全部……セイスさん、まさか」
「ああ。裏で誰かがそいつらを操っていた可能性が……」
「あれれ?もう倒されちゃったのか。やっぱり旧型は使えないなぁ」
言い切る前に、何者かが口を挟む。僕達だけじゃない。この部屋にいる討伐隊全員に聞こえるほどの大きさで。悪戯に失敗した少年のような声。そんな声を発する隊員は誰もいない。
「誰だ!?」
突然の事態に部屋中が半ばパニックになる。その隙間を縫うようにして、ハルとカンナさんが合流した。
「プレア殿、これは……?」
「分からない、でも一つ可能性があるとしたら……」
「ああ、真のボスの登場かもしれない」
その瞬間、部屋の奥が開ける。どうやら、奥の壁は隔壁のようなもので、更に奥があったらしい。そこにあったのは、大きな椅子。そしてかなりメカニックな見た目の少年だった。
「面倒だけど……はぁ、居場所もバレちゃったし、生きて帰すわけにもいかないしなぁ。ほんと、面倒くさい」
気怠そうな声を上げる少年。言ってることは相当不穏だけれど。と、やれやれと言った風に指を鳴らす。すると、どこからともなく数体のゴーレムが僕達討伐隊を取り囲む。
「代わりにやっといて~、ぼくは寝る」
そう言うや否や、少年は椅子にもたれて寝てしまった。討伐隊の誰かが寝ている少年に近づこうとしたが、ゴーレムに行手を阻まれた。どうやら、勝手に動けるだけの知能を搭載しているようだ。
「皆、第二ラウンドだ!」
雪ダルマさんの声がかかる。やはり今回の敵、一筋縄ではいかないようだ。
さっきからずっと攻撃を受けているのに、全く倒れる気配がない。こちらが決め手に欠けるのかもしれないし、向こうのHPが高すぎるのかもしれない。でも、それだけではない気がする。何かを感じる。
ボスの動き自体は、確実に鈍くなっている。だから、尚更攻撃の手を止めようにも止められないのだ。ハルはというと、まだ出ない。彼女は攻撃の切り札として期待されているらしい。アプデ前なら間違いなく期待出来たんだけれど。新しく造った武器を、どこまで使いこなせるか次第だろう。
「次、来るぞ!」
「っ、はい!」
雪ダルマさんの声と共に喝を入れる。一旦この攻撃を受け止める。といっても、段々と攻撃が弱まっているため、雪ダルマさんにとってはチェインスキルの実験台にされているが。僕にもそれくらいの余裕がほしいよ、ほんと。
「今度こそ…【ショックシールド】【剛剣】!」
雪ダルマさんは先程から、この組み合わせによるチェインスキル作成を試みているようだ。よく見てみると、毎回盾からの剣の出方や振り方が違う。色々とイメージがあるんだろう。今回は……突きだ。
あれだけ硬い腕が相手でも剣が壊れないのは、完全にあの【剛剣】というスキルのおかげだろう。ハルの刀にも似たようなものを付けたいな。今は【硬化】で物理的に硬さを上げただけで、何も数値的なボーナスは得られていないし。
突きを受けた巨人の腕が仰反る。これを巨人の本体に向けて打ち返すのが、僕の役目だ。よし、僕もチェインスキルを試そう。前々からイメージを重ねて来たんだ。そろそろ行けるだろう。
「【宝石片弾】!」
巨人の腕の先端に、宝石の破片を飛ばす。今回は蒼粒石だけでなく、紅焔石も一緒だ。既に不安定なエネルギー同士が反応し始めてパチパチと火花が散っているが、まだ大丈夫だ。さあ、ここからだ。別にスキル化されているわけではないが、多分大丈夫だろう。
「ふっ!」
僕は【ジェットファング】ではなく、ただ炎を纏わせただけの槌で、思い切り腕先をぶっ叩く。瞬間、周囲に飛ばしておいた青と赤の宝石片達が、急激な熱エネルギーを受けて激しく反応する。紅焔石を介することで、より炎との反応性を上げるつもりだったのだが、どうやら上手く行きそうだ。
ッダーン!!
大きな爆発音と共に、さながらロケットのように腕が打ち出されて行く。すぐに本体の方に到達したと思いきや、今の衝撃で本体も少しよろめいた。あの巨体が少しでもバランスを崩したらどうなるか?答えは目に見えている。
先程よりも大きな音を上げて、巨人が尻餅をつく。大チャンスだ。
「よし!総攻撃開始!遊撃隊、後衛を先導しつつ前進してくれ!」
雪ダルマさんの素早い指示で、前衛の多くが突撃していく。そしてその頭上を、ユノンさんを始めとする錬金術師団の攻撃が先行して飛んでいく。僕達も参加するみたいだ。走りながら、さっきの攻撃を確認する。
ーーーチェインスキル【バーストスマッシュ】を獲得しました。
よし、成功だ!どうやら、必ずしもスキル同士の組み合わせでなくてはならないわけではないようだ。まあ確かに、ハルの【閃刀:刹那】も、実際にダメージを与えているのは通常攻撃だし。最も、あの速さで移動しながら抜刀会心なんてされようものなら、誰も通常攻撃だとは思わないだろうが。
「おめでとう、プレアデスさん。俺もさっきので成功したよ」
「おお!良かったですね!」
雪ダルマさんも、さっきのやり方で通ったみたいだ。良いね良いね。どんどん手札が増えて楽しくなってきた。と、危ない危ない。うっかり趣旨を忘れるところだった。僕の遅いAGIのお陰で到着までは時間がある。今のうちに相談してしまおう。
「あの、雪ダルマさん?」
「どうした?」
「あのボスなんですが…もしかするとホムンクルスかもしれません」
「……そうか、そういえばプレアデスさんはホムンクルスだったな。何か特徴を掴んだのか?」
「ええ。雪ダルマさんやテラナイトさん、ユノンさんのような最強プレイヤーの攻撃を受けても平気でいられる理由…そして、攻撃を受ける度に動きが鈍くなって行く理由。この2つはちょうど、ホムンクルスのアビリティの【再生】で説明できるんです」
「確かに。最も、敵がプレイヤーと同じアビリティを有しているかは定かではない……が、参考になりそうだ。ありがとう!」
走りながら真剣に考える素振りを見せた後、爽やかな笑顔でそんなことを言われる。ああ、これが数々の女性プレイヤーを虜にして来たイケメンの笑顔……って、そうじゃなくて!
ともかく、部隊のトップである彼に伝わったのなら話は早い。すぐに伝達されるはずだ。
~~side 春風~~
たった今、雪ダルマさんから部隊全員に通知が入った。どうやら、あのボスはホムンクルスで、再生能力を有している可能性が高い、と。まあ、ホムンクルスなのは名前的に間違い無さそうなので良いとして。
「再生、か……」
プレア殿が使うアビリティと同じだ。使うと体力を大きく回復出来る代わりに、ステータスが減衰する。ボスの動きが鈍っていたのはそういうことか。それなら、チマチマ攻撃しているのでは追いつかない。ボクは一瞬迷った末、腰のベルトに差した刀の片方……右の腰に付けた方に手をかける。
「やれる?小春」
意識の奥底で、小春が反応する。頷いたのだろうか?流石に何も分からないが、穏やかな反応なので否定の意味ではないだろう。こっちの刀には抜刀攻撃のボーナスなんて付いてないので、走りながら引き抜く。桜色の刃が妖しく輝く。うん、行ける気がする!
「行くよ!【電光石火Ⅱ】!」
人で溢れる前線を超速で駆け抜け、ボスの顔面の近くに躍り出る。隊列から「おお……」と感嘆の声が洩れるが、気にしない。小春には事前に【硬化】を起動させている。今の小春は鉄をも引き裂く刃を持つ。ホムンクルスがどうかは分からないが、無いよりは確実に良いだろう。
「からの……【螺旋衝】!」
空中で体制を立て直し、刀身を巨人の眉間に突き立てる。ギンッ!という金属のような音を立てた辺り、やっぱり人間とは全く違う。だが、刃の素材とダウンロードした【硬化】のお陰で、刀身が数センチほど入った。これなら行ける。
「食らえぇ!」
そして、先端から螺旋状の衝撃波を放出する。【レイジ】も使っているし、プレア殿の作ってくれた『刀剣ホルスター』によって刀が2本とも装備出来ている。ステータス的な恩恵もあり、火力は十分だ。
「オォォォォッ!!??」
巨人が驚いたような声を上げる。どうやらかなり効いてくれたようだ。流石に外が硬いホムンクルスでも、内部を攻撃されたらたまったものじゃないだろう。さっき刀を突き立てたのはこのためだ。
「まだだ!再生する隙を与えるな!」
雪ダルマさんから喝が入る。すると一層苛烈に、錬金術が雨のように巨人に降り注ぐ。ボクに当たらないように撃ってくれている辺り、この討伐隊のレベルの高さが窺える。
空中で一回転して、着地。すかさず斬り込んで行く。この刀に付けた硬化は、スキルの【硬化】とは違って、コアからのエネルギー供給の続く限り際限なく続く。単純な機能で消費も少ないため、タリスマンと併用すれば実質半永久的に使用できるはず……と、プレア殿が言ってた。
おかげで、ただでさえ良い切れ味が更に増している。ホムンクルスの硬い表面も、度重なる再生による減衰もあるだろうが、そこそこしっかり斬ることができている。と、半ばいじめのような構図が暫く続いた時。
目の前の巨人が、音もなく弾けた。
~~side 終了~~
「勝った!あの巨人に勝ったぞー!」
皆が勝利を確信し、歓喜の声を、勝鬨を上げる。だが、その中に1人、まだ勝利を確信出来ていない人がいた。セイスさんだ。
「何かおかしい……」
「どうしたんですか?セイスさん」
「いや、俺の憶測でしかないんだが……レイドボスって、こんな単純な動きしかしないものなのか?」
いつもより低い声で、自分の意見を確かめるようにゆっくりと言う。確かに。このゲームの難易度ははっきり言って高めだ。そんなゲームのボスとして、ただパンチをするだけの敵というのは不相応だ。
「ロックギガースの時もそうだ。それに聞いた話では、ここらのボスは全部ゴーレム系だったらしい……」
「全部……セイスさん、まさか」
「ああ。裏で誰かがそいつらを操っていた可能性が……」
「あれれ?もう倒されちゃったのか。やっぱり旧型は使えないなぁ」
言い切る前に、何者かが口を挟む。僕達だけじゃない。この部屋にいる討伐隊全員に聞こえるほどの大きさで。悪戯に失敗した少年のような声。そんな声を発する隊員は誰もいない。
「誰だ!?」
突然の事態に部屋中が半ばパニックになる。その隙間を縫うようにして、ハルとカンナさんが合流した。
「プレア殿、これは……?」
「分からない、でも一つ可能性があるとしたら……」
「ああ、真のボスの登場かもしれない」
その瞬間、部屋の奥が開ける。どうやら、奥の壁は隔壁のようなもので、更に奥があったらしい。そこにあったのは、大きな椅子。そしてかなりメカニックな見た目の少年だった。
「面倒だけど……はぁ、居場所もバレちゃったし、生きて帰すわけにもいかないしなぁ。ほんと、面倒くさい」
気怠そうな声を上げる少年。言ってることは相当不穏だけれど。と、やれやれと言った風に指を鳴らす。すると、どこからともなく数体のゴーレムが僕達討伐隊を取り囲む。
「代わりにやっといて~、ぼくは寝る」
そう言うや否や、少年は椅子にもたれて寝てしまった。討伐隊の誰かが寝ている少年に近づこうとしたが、ゴーレムに行手を阻まれた。どうやら、勝手に動けるだけの知能を搭載しているようだ。
「皆、第二ラウンドだ!」
雪ダルマさんの声がかかる。やはり今回の敵、一筋縄ではいかないようだ。
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