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第2章 その石、危険につき

第12話 誘爆

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行くぞ、ロックギガース!

「まずは…【宝石片弾ジェム・ブラスト】!」

僕は蒼粒石の破片を生み出し、ボスの巨大な右腕…その関節部分に次々とぶつけていく。外層は岩で出来ているのだが、よく見ると関節部分は金属だ。要は、岩の装甲で全身を覆った機械の番人…それがロックギガースなのだろう。遥か昔からそんな技術があったことに驚きだがそれは置いといて!

「次!【付加エンチャント:陽炎柱ヘイズピラー】!」

僕はさっき攻撃した関節部分目がけて火柱を撃ち込む。さっき試した通りなら、大きなダメージにも障害にもならないだろう。だが、さっきの攻撃で僕は、蒼粒石…それも不安定な天然の破片を残してきた!蒼粒石は他の宝石のエネルギーを活性化させるが、不安定な状態で近づけると暴走させてしまう。つまり、今の状態で火柱なんて当てようものなら…!

「オォォォッッ!?」

「何っ!どうなってるんだ?」

「これは…!」

ゴーレムだけでなく向こうの2人も良い反応をしてくれている。まあ、突然腕の関節部が連続的に爆発したらそういう反応にもなるか。チラッとログを見ると2000近く削れていた。うわ、これ思ったより危険なコンボかもしれない…!おかげでゴーレムは腕に力が入りにくくなっている。だが、まだ足りない。ヤツが回復する前に、ここから間髪入れずに押し返す!

「最大火力だ…【ジェットファング】!!」

こちらの槌の紅焔石も最大限活性化させ、そのエネルギーをブースターとして後ろに炎を噴射する。カンナさんも一緒に燃えないか今更心配になったが、僕がスキル名を叫んだだけで察して後ろに下がってくれたようだ。流石の洞察力だ。これで心置きなくぶっ放せる!

「うおぉぉぉぉっ!!」

全力のジェット噴射で、迫る腕を少しずつ押し返して行く。さっきは半分足が浮く勢いで押されていたが今度は違う。一歩一歩、自分の足で前進し、STR150の大質量を押し戻して行く。といっても、絶対さっきの咆吼でSTRは2倍以上に増えているだろうが。じゃないと、通常ATK300になる僕があそこまで追い込まれたりはしない。さしずめVIT280が邪魔したのだろうが、そんなもの、スキル効果で900までATKを跳ね上げた今の僕の敵ではない!

「そーれっ!」

バコーン、という爽快な音と共に、遂に僕はロックギガースの右腕を弾き飛ばした。いやー危なかった。あのタイミングで【ジェットファング】が復活していなければ押し返せなかったな。最終的にカンナさんを無傷で守れたし、結果オーライかな。

「プレア殿!大丈夫?」

「ありがとハル、何とかなったよ…」

ハルが僕の身を案じて飛び出して来てくれた。さっきの押し返しで大きく怯んで、左腕の牽制が解けたのだろう。向こうを見るとセイスさんも、カンナさんの元に駆け寄っている。

「それにしても、さっきの爆発凄かったね…2000くらい削れてたし、よくあんなの思いついたね!」

「僕もびっくりしたよ…【付加エンチャント:陽炎柱ヘイズピラー】を習得した時から考えてはいたんだけど、まさか威力が3倍近く上がるとは…」

ダメージ的には5倍だが、それは相手のRESを差し引いた話。元のATK自体は、90から225まで上がったはずだ。要は(ATK+INT)÷2の等倍ということ。それで変わらず10回攻撃ともなれば、そのダメージ量の差は一目瞭然。今後ステータスが上がれば上がるほど、この攻撃はより強力なものになるに違いないな。弱点といえばMPの消費が大きいことだが…。

ーーー『チェインスキル』の発動に成功しました。新たに『チェインスキル』のスロットを追加しました。

ーーーチェインスキル【連鎖爆破】を獲得しました。

「あ、なんか見たことないの来た」

「えっ、見せて見せて…チェインスキル?初めて見るね?」

【連鎖爆破】消費MP:100 クールタイム:3分
不安定な蒼粒石の破片を撒布し、一つを発火させることで連鎖的に爆破する。威力は蒼粒石の数と使用者のINTに依存する。

「これはまた調べ物が増えたなぁ…」

ATK依存でない分特効倍率がかからないのは残念だが、MP消費量を鑑みればお得なスキルだ。あとは、これがどれくらいの威力になるかだが…こればかりは試してみるしかなさそうだ。

「要は蒼粒石をたくさん用意すれば良いんだよね?それなら…【宝石片弾ジェム・ブラスト】!」

僕はMP100近くまで残して全てを注ぎ込んで、連続してスキルを発動した。クールタイムないし無限に宝石生み出せるから本当に便利だよなぁ、これ。最も、不安定だし1分で消えちゃうから素材としては使えないけど。恐らく【連鎖爆破】でも撒布されるだろうが、どうせならこれで倒し切りたいから思い切って使う。

「ボクも援護するよ!【付加エンチャント:地縛アースバインド】!」

「ナイス、ハル!」

ハルのおかげで、体勢を崩していたロックギガースは地面に縫い付けられた。これで避けられることもなくなった。チェックメイトだ。

「これで…終わりだよ!【連鎖爆破】!」

スキルの発動と共に、宙空から更に蒼粒石の破片が降り注ぐ…あらら、思ったよりたくさん降らせてくれるのね…これならあんなにMP消費しなくても良かったかも?まあ、念には念を置くべきだ。そして…僕が指を鳴らすと、それを契機に破片の一つが赤く光る…その光は見る見る周囲に移っていき、あっという間にボスを覆い隠してしまった。

「来る!」

ドドドドドドドドッ!!

凄まじい音と光と熱。立ち昇る噴煙と眩しさに、思わず顔を覆う。これは攻撃を越してテロの領域だなぁ。使い方には気をつけないと。それにしても、やっぱり発動前の【宝石片弾ジェム・ブラスト】は余計だったかな?だって、明らかにオーバーキルみたいな感じ出てるし。序盤のボスがこんなに攻撃して倒せないわけないもの。大体残りHP5000くらいだったし。

ーーープレアデスが『古の番人ロックギガース』に合計30000ダメージ!

ーーー『古の番人ロックギガース』を討伐しました!貢献度に応じて報酬を配分します。

ーーープレイヤーレベルがアップしました。(Lv.18→20)

ーーープレイヤーレベルがLv.20に到達しました。特殊装備品スロットを一つ解放します。

あっ、やっぱりやり過ぎだったみたいね…反省。ともあれ、これで勝利だ。MVPは…僕みたい。そりゃそうか。ダメージ量的には最後で圧倒的に勝ってしまったから。それにしても、MP消費400で一撃必殺か。他にも条件とかあるのかもしれないけど、もし何も無いなら今後の周回はこれでサッサと済ませられるな。MP回復薬買い込んでおこうっと。

しかし、チェインスキルか。何の気無しにとりあえず挑戦してみたボス戦だが、思わぬ収穫をしてしまった。あれは恐らくユニークスキルを獲得できるというよりは、あのシステムを使ってもっと色々なスキルを作ってみてほしいという、ゲーム側の図らいなのだろう。じゃなければ、わざわざ新しいスキルスロットを用意したりはしない。

ユニークスキルも通常スキルである以上、スキルスロットを圧迫してしまう。このゲームにはスキルセット上限という制限が存在し、それに引っかかるとそれ以上スキルを獲得しても使用することが出来なくなる。勿論、付け替えれば良いだけだが、それでも使える種類に上限があるのは後々厳しい。その点、スキルスロットを別に用意してくれるのはありがたい。まあ、具体的にどういうシステムになるのかは検証が必要だが。

「13分26秒…こんなものか」

「お、おい…何者なんだよ、お前ら…!?」

一応聞こえよがしにクリアタイムを呟いておくと、ダンジョンから出る直前、ミハイルに呼び止められた。ここで別に名乗らなくても良かったのだが、折角なのでこう言ったのだ。勿論、2人一緒に。

「狐の刀使い、春風。そしてこっちが?」

「プレアデス。ホムンクルスの…鍛治職人だよ!」

やっぱり。皆一番驚くポイントは僕が鍛治職人なことなんだね…。ともあれ、これで初めてのダンジョン攻略終了!色々あったけど、楽しかったなぁ。

ーーー称号《破壊者》を獲得しました。

ーーー称号《無慈悲なる一撃》を獲得しました。



プレアデス Lv.20
種族:ホムンクルス/職業:鍛治職人Lv.14
HP:400(+250)
MP:110→155(+360)
STR:50(+50)
VIT:20(+50)
AGI:0
INT:30→45(+120)
RES:0
DEX:30
LUK:25

SP:15→0

頭:なし
胸:初心者の服(上)
右手:噴炎する恐牙の戦槌ブーストファング・ウォーハンマー
左手:-
脚:初心者の服(下)
足:初心者の靴
特殊:蒼穹のタリスマン
特殊:なし

所持金:23400G

満腹度:40%

装備効果:物質特効(200%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) 付加エンチャント(火炎) 《火傷》付与(中) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒)

称号:《試行錯誤》《木工職人見習い》《伝説を導く者》《宝石使い》《読書好き》《宝石採集者ジェム・コレクター》《伝説を錬成する者》《岩砕き》《破壊者》《無慈悲なる一撃》

スキル:【統合強化】【硬化】【金属探知】【宝石片弾ジェム・ブラスト】【ジェットファング】【付加エンチャント:陽炎柱ヘイズピラー】【脆弱化】【ジェノサイド】

チェインスキル:【連鎖爆破】
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