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第2章 その石、危険につき
第2話 宝石
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僕達は今王立図書館に来ている。そう、前に錬成陣の調べ物でお世話になった、本が空を飛ぶ大図書館だ。今日は何を調べに来ているのかというと、僕はこの世界における「宝石」について、ハルは刀に宿っている『地精霊ガイア』について。
何故今宝石を調べる必要があるのかというと、先ほど『蒼穹のタリスマン』を錬成した時、一緒についてきたこの称号のせいだった。
《宝石使い》
宝石を使用したアイテムの錬成に成功することで取得。スキル【宝石片弾】を獲得し、宝石の加工に小補正。
【宝石片弾】消費MP:30 クールタイム:なし
宝石を使用した装備品を装備している場合のみ発動可能。装備されている宝石と同じ種類の破片を複数生成し飛ばして攻撃する。数、射程、範囲、効果は宝石の種類により異なり、複数種装備されている場合、その中から選択できる。
……という。欠片とはいえ宝石を飛ばすという、現実じゃ絶対出来ないようなスキルを携えたこの称号。このスキルに対応する宝石とは何か知る必要があった矢先、そもそもこの世界での宝石と現実でのそれは違うものなのではないか、と考えてしまい、その真相を探るべくこうして馳せ参じた次第だったのだ。
そして、本を読んで分かったことをまず一つ。現実とは全然捉え方が違いました。現実では、価値が高くキラキラと輝く綺麗な石のことを大雑把に「宝石」と捉えている。しかしこの世界では違う。というのも、ここでの『宝石』とは、ただ綺麗で価値が高いだけでなく、内部に何らかのエネルギーを秘めている必要があるんだとか。
つまり、あのダイヤモンドのように綺麗だった『輝晶石』は、実際ただ綺麗なだけで内部にエネルギーはなく、宝石とは言わないということ。そして、ビーズほどの大きさしかない『蒼粒石』は、内部にエネルギーを秘めているため宝石として扱われるらしい。最も『蒼粒石』自体にあまり価値はない。放出されるエネルギーが不安定でまともに使用できないからだ。精々宝石ですらない『輝晶石』の半分ほどだ。
しかし、これを何らかの形で安定化してしまえば、その製品の価値は数百倍にも跳ね上がる。僕が(マグレで)やったように、エネルギーの入っていない台座を設ければ安定させられるらしい。逆に台座にエネルギーが含まれていると、エネルギー同士が不安定に反応し、最悪爆発するらしい。怖い怖い。何の知識もなかったから本当に運が良かった。
そして、僕が作ったタリスマンの売価は10万Gだが、これは相場の10~20%程度らしい。それは僕の作ったものの質が悪いというよりも、単純に『蒼粒石』の大きさ、そしてエネルギーとしての使用への期待度によって価格が変動するという。僕は別に売るつもりもないしエネルギーとして使うつもりもなかったのでどうでも良いが。
と、本を最後まで読み終わった。今回も勉強になったなぁと思いながらパタン、と本を閉じると。
ーーー称号《読書好き》を獲得しました。
《読書好き》
図書館で本を3冊以上読了することで取得。INT+20。
なんと、思いがけない収穫。今頃ハルも同じ称号を獲得できたはずだ。特にハルにとってINTはいくらあっても困らないものになった今、SPを振らずに獲得できるのはとてもありがたいことなのだ。
ハルと図書館の外のカフェで待ち合わせ。仲良くランチと洒落込むと、素材集め兼試し撃ちと称していつもの平原へと足を運んだ。
さて、やって来ました平原エリア3。前回は突然変異種のことでまともに探索出来なかったからね。今回はしっかりやっていきたい。
「…ところでハルさん?さっきから怖いくらい敵が襲ってこないんですけど、何かしました?」
「知らないよー、特に何もしてないけど…あっ、もしかしてここって…」
そう言ってハルは僕にある称号のウィンドウを見せる。それは《バークウルフの天敵》。効果は与ダメージ増加ともう一つ、襲われにくくなる。……確定じゃん。言われてみればハルは、レベリングという名のバークウルフの大量殺戮を繰り返していたし、先日の変異種の一件もある。文字情報に更新はなくとも、彼らの中でのハルの危険度は高まる一方のようだ。
「なるほど、ここはウルフたちの巣窟だったわけか…」
「言ってる場合じゃないでしょ!どうしようこれ…?もうエリア4行っちゃう?」
「うーん、最前線か…行ってもいいけど多分目立っちゃうよ?」
「あぁ、それもそうか…目立つのは勘弁かなー」
僕が目立ちたくないのは、実際僕がそういう性格なところもあるが、何よりハルの刀である。さっきのタリスマンはまだ小さい上売価のあるアイテムなので誤魔化しようがある。でも、あの刀は非売品の上、大きいし目立つ。加えて『付加』使いであることも。どうやら環境では『付加』は不遇とされているらしい。何でだろう?他の系統のスキルも使えて滅茶苦茶強いのに。
とまあそれはともかく、僕達は今のところ目立った行動はしない方針でいるのだ。因みに、変異種の一件で知り合ったカンナさんとセイスさんには、フレンド登録を済ませた上で口封じをした。彼女らの言動からして約束を破るような性格には見えなかったので、口封じといってもただの口約束なのだが。
「じゃあ、この前行った洞窟行ってもいい?宝石集めたい」
「いいね!そこなら敵も狼じゃないし丁度いいかも」
そうして2人納得し、宝石や金属鉱石を集めに再び『アルバノの古洞窟』へと進路を取った。古い洞窟なのに何故金属鉱石はともかく宝石があるのかと言えば、その宝石が小さすぎて見つかりにくいというのと、昔『蒼龍石』のエネルギー運搬に使われていた坑道の入り口でもあったかららしい。これも、本に記載されていた。
今はその坑道は当然廃棄されているが、もしかしたら見つけられるかもしれない。余裕があれば探してみようかな。と、そんなことをハルと話しながら歩いていると、目的地に着いたようだった。木陰と岩陰に隠れた少し分かりづらい場所にある入り口は、ここが宝石の採れる洞窟だと知らなければわざわざ入るようなところでも無さそうだった。
プレアデス Lv.14
種族:ホムンクルス/職業:鍛治職人Lv.13
HP:350
MP:110(+210)
STR:35
VIT:10
AGI:0
INT:30(+70)
RES:0
DEX:30
LUK:25
SP:0
頭:なし
胸:初心者の服(上)
右手:恐牙の破城槌
左手:-
脚:初心者の服(下)
足:初心者の靴
特殊:蒼穹のタリスマン
所持金:16900G
満腹度:80%
装備効果:物質特効(100%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒)
称号:《試行錯誤》《木工職人見習い》《伝説を導く者》《宝石使い》《読書好き》
スキル:【統合強化】【硬化】【金属探知】【宝石片弾】
何故今宝石を調べる必要があるのかというと、先ほど『蒼穹のタリスマン』を錬成した時、一緒についてきたこの称号のせいだった。
《宝石使い》
宝石を使用したアイテムの錬成に成功することで取得。スキル【宝石片弾】を獲得し、宝石の加工に小補正。
【宝石片弾】消費MP:30 クールタイム:なし
宝石を使用した装備品を装備している場合のみ発動可能。装備されている宝石と同じ種類の破片を複数生成し飛ばして攻撃する。数、射程、範囲、効果は宝石の種類により異なり、複数種装備されている場合、その中から選択できる。
……という。欠片とはいえ宝石を飛ばすという、現実じゃ絶対出来ないようなスキルを携えたこの称号。このスキルに対応する宝石とは何か知る必要があった矢先、そもそもこの世界での宝石と現実でのそれは違うものなのではないか、と考えてしまい、その真相を探るべくこうして馳せ参じた次第だったのだ。
そして、本を読んで分かったことをまず一つ。現実とは全然捉え方が違いました。現実では、価値が高くキラキラと輝く綺麗な石のことを大雑把に「宝石」と捉えている。しかしこの世界では違う。というのも、ここでの『宝石』とは、ただ綺麗で価値が高いだけでなく、内部に何らかのエネルギーを秘めている必要があるんだとか。
つまり、あのダイヤモンドのように綺麗だった『輝晶石』は、実際ただ綺麗なだけで内部にエネルギーはなく、宝石とは言わないということ。そして、ビーズほどの大きさしかない『蒼粒石』は、内部にエネルギーを秘めているため宝石として扱われるらしい。最も『蒼粒石』自体にあまり価値はない。放出されるエネルギーが不安定でまともに使用できないからだ。精々宝石ですらない『輝晶石』の半分ほどだ。
しかし、これを何らかの形で安定化してしまえば、その製品の価値は数百倍にも跳ね上がる。僕が(マグレで)やったように、エネルギーの入っていない台座を設ければ安定させられるらしい。逆に台座にエネルギーが含まれていると、エネルギー同士が不安定に反応し、最悪爆発するらしい。怖い怖い。何の知識もなかったから本当に運が良かった。
そして、僕が作ったタリスマンの売価は10万Gだが、これは相場の10~20%程度らしい。それは僕の作ったものの質が悪いというよりも、単純に『蒼粒石』の大きさ、そしてエネルギーとしての使用への期待度によって価格が変動するという。僕は別に売るつもりもないしエネルギーとして使うつもりもなかったのでどうでも良いが。
と、本を最後まで読み終わった。今回も勉強になったなぁと思いながらパタン、と本を閉じると。
ーーー称号《読書好き》を獲得しました。
《読書好き》
図書館で本を3冊以上読了することで取得。INT+20。
なんと、思いがけない収穫。今頃ハルも同じ称号を獲得できたはずだ。特にハルにとってINTはいくらあっても困らないものになった今、SPを振らずに獲得できるのはとてもありがたいことなのだ。
ハルと図書館の外のカフェで待ち合わせ。仲良くランチと洒落込むと、素材集め兼試し撃ちと称していつもの平原へと足を運んだ。
さて、やって来ました平原エリア3。前回は突然変異種のことでまともに探索出来なかったからね。今回はしっかりやっていきたい。
「…ところでハルさん?さっきから怖いくらい敵が襲ってこないんですけど、何かしました?」
「知らないよー、特に何もしてないけど…あっ、もしかしてここって…」
そう言ってハルは僕にある称号のウィンドウを見せる。それは《バークウルフの天敵》。効果は与ダメージ増加ともう一つ、襲われにくくなる。……確定じゃん。言われてみればハルは、レベリングという名のバークウルフの大量殺戮を繰り返していたし、先日の変異種の一件もある。文字情報に更新はなくとも、彼らの中でのハルの危険度は高まる一方のようだ。
「なるほど、ここはウルフたちの巣窟だったわけか…」
「言ってる場合じゃないでしょ!どうしようこれ…?もうエリア4行っちゃう?」
「うーん、最前線か…行ってもいいけど多分目立っちゃうよ?」
「あぁ、それもそうか…目立つのは勘弁かなー」
僕が目立ちたくないのは、実際僕がそういう性格なところもあるが、何よりハルの刀である。さっきのタリスマンはまだ小さい上売価のあるアイテムなので誤魔化しようがある。でも、あの刀は非売品の上、大きいし目立つ。加えて『付加』使いであることも。どうやら環境では『付加』は不遇とされているらしい。何でだろう?他の系統のスキルも使えて滅茶苦茶強いのに。
とまあそれはともかく、僕達は今のところ目立った行動はしない方針でいるのだ。因みに、変異種の一件で知り合ったカンナさんとセイスさんには、フレンド登録を済ませた上で口封じをした。彼女らの言動からして約束を破るような性格には見えなかったので、口封じといってもただの口約束なのだが。
「じゃあ、この前行った洞窟行ってもいい?宝石集めたい」
「いいね!そこなら敵も狼じゃないし丁度いいかも」
そうして2人納得し、宝石や金属鉱石を集めに再び『アルバノの古洞窟』へと進路を取った。古い洞窟なのに何故金属鉱石はともかく宝石があるのかと言えば、その宝石が小さすぎて見つかりにくいというのと、昔『蒼龍石』のエネルギー運搬に使われていた坑道の入り口でもあったかららしい。これも、本に記載されていた。
今はその坑道は当然廃棄されているが、もしかしたら見つけられるかもしれない。余裕があれば探してみようかな。と、そんなことをハルと話しながら歩いていると、目的地に着いたようだった。木陰と岩陰に隠れた少し分かりづらい場所にある入り口は、ここが宝石の採れる洞窟だと知らなければわざわざ入るようなところでも無さそうだった。
プレアデス Lv.14
種族:ホムンクルス/職業:鍛治職人Lv.13
HP:350
MP:110(+210)
STR:35
VIT:10
AGI:0
INT:30(+70)
RES:0
DEX:30
LUK:25
SP:0
頭:なし
胸:初心者の服(上)
右手:恐牙の破城槌
左手:-
脚:初心者の服(下)
足:初心者の靴
特殊:蒼穹のタリスマン
所持金:16900G
満腹度:80%
装備効果:物質特効(100%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒)
称号:《試行錯誤》《木工職人見習い》《伝説を導く者》《宝石使い》《読書好き》
スキル:【統合強化】【硬化】【金属探知】【宝石片弾】
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