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メビウス

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第1章 錬金術の世界

第7話 ハル

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よし、なんか上手く行ったぞ。しかも称号までついてきた。ラッキー。

そうしたらハンマーヘッドと柄を接着する。考えてみれば、これ本来どうするつもりだったんだろう。【付与強化】を使わずにやろうとしていたが、考えてみれば使わないと無理じゃないか?釘も窪みもないし。

と、思っていた矢先のこの称号。小補正というのがどこまで効果的なのかは知らないが、試してみる価値はあるだろう。僕は四角いハンマーヘッドを作業台の上に置くと、上に柄になる部分をあてがって…槌で叩く!

うん、普通にやったら絶対失敗する。何しろ釘も窪みもない。加えてこの『石の破城槌』は物質系へのダメージが10%も増加する。石材や木材も無生物である以上例外とは言えない。木は植物系として分類されるならば杞憂だが、それを抜きにしてもこんな作業は普通ありえない。

だが、木材の加工に小補正がかかった今ならどうだ。槌のダメージを柄に与えるのではなく、柄を通して上手くハンマーヘッドに伝えられないか?ヘッド自体は圧縮加工しているので強度は心配していない。ただ、柄がしっかり食い込むかどうか、それだけなのだ。

ゴン、ゴン、ゴン、と近所迷惑不可避の音を立て続けること数分。何とか形に収まった。途中『石の礫』を加工する時に出た小破片と万力でグリグリと穴を空けようとしたのが、結果的に功を奏したのだった。小補正も相まって、柄はしっかり圧縮された木材を貫通した。あとはヤスリで表面を軽く磨いてやれば…

ーーーアイテムの製作に成功しました。『アルバノの木の枝』『圧縮された木材(アルバノ)』は『加工屋の小木槌』に加工されました。

『加工屋の小木槌』☆1 ATK+0
売価150G。街の加工屋が日常的に使う片手サイズの木槌。軽いため武器としても片手で装備できるが威力はからっきし。頭部は圧縮加工により強度が高められており、耐久性はそこそこ。

ふむふむ、見様見真似で作った適当アイテムは、どうやらこの世界で日常的に使われるレベルの消耗品らしい。これはこっちのレベルが高いのか、この世界のアイテム水準が低いのか分からないな。まあどうでもいいか。

『初心者』アイテムでないため売却も出来るし壊れるが、正直これで生計立てようとは思わない。初めてとはいえ結構時間かかったもの。やるならもう少しコスパの良い物を売り出したい。それに、僕の考えがもし正しければ、これは今から別のアイテムに変質する。

窓を見るともう日が昇っている。7時まで残り少ない。急ごう!僕は作業台セットの工具達を作業台上に集めて、そこに今作った木槌を追加。上手く行くかな?

「【付与強化】!」

その瞬間、載せられた工具達が淡く発光した。勿論、木槌も含めて。僕は作業台の収納ボックスに木槌を含めた4つを収納し、心の中で完了、とでも言ってみる。

ーーー付与強化に成功しました。『初心者の作業台セット』に『加工屋の小木槌』が追加されます。これにより『加工屋の小木槌』は『初心者の小木槌』に変化しました。

ーーースキル【付与強化】の使用制限回数に到達しました。ゲーム時間7:00まで【付与強化】は使用できません。

ーーー職業レベルがアップしました。(Lv.4→5)

ーーー鍛治職人Lv.5に到達。スキル【硬化】を獲得しました。

【硬化】消費MP:20 クールタイム:60秒
対象を硬くする。味方に使用した場合、5秒間DEFを100%アップする。(重ねがけ不可)

「ちょ、ちょっと待って!流石に処理しきれんぞ!」

よし一旦落ち着こう。まず付与強化に成功。これは予想通りの結果。『初心者の作業台セット』の説明文は変化なし。ただ、収納ボックスにはきちんと木槌も入っている。そして『初心者』アイテム扱いなので例の如く耐久力無限。

次に職業レベル。今回のでLv.5に到達したみたいだ。今のプレイヤーレベルに追いついたため、これ以上レベルは上がらない。春風がログインしてきたら、試し斬りついでにレベル上げかな。あっそういえば、今までのレベルアップ報酬貰ってないじゃん。うっかり。プレゼント内はG、スキル玉というアイテムと街に露店を出せる許可証だった。

後から知ったことだがレベルアップ報酬のGはプレイヤーレベルも職業レベルも同じで、2~5が400G、6~10が700G、11~15が1000G…と、一定区間毎に300Gずつ増えていくようだ。序盤は嬉しいけど後半はあまり美味しくないのかも。まあその頃には自分で稼げているだろうという意味だろうな。

そしてスキル。これ強くないか?序盤はまだしも、DEFを2倍にできるとは、後半ではお世話になりそうだな。デバフ武器にバフスキルか、いよいよゲームらしくなってきたぞ!

「んー…あっプレア殿、早いね!」

「おー、お帰りハル。見て見て、職業Lv.5まで上がった」

「わー、てことはスキルも!?良いなぁ、ボクはまだ4だから上げないと…」

あの後、僕達はお互いのことをあだ名で呼び合うことに決めた。まあ自分で名付けておいて今更だけど、プレアデスって呼びづらいもんね。だから彼女にはプレアと呼んでもらっている。殿が付くのは相変わらずだけど。そういうキャラだと思えば良いか。そして僕も彼女のことをハル、と呼ぶことにした。最初は恥ずかしそうに赤らめていたが、もう慣れたらしい。

とりあえず、さっきの加工で手持ちの素材が少なくなってきたので、素材集め兼試し斬り兼レベリングのために、朝の平原に出かけることにした。因みに宿屋の料金は1人300G。レベルアップ報酬のおかげで余裕だった。受付のおばさんはお決まりの「ゆうべはお楽しみでしたね」と。ナニもしてないよ!僕達は!

………

ところ変わって『中央エルメイア平原』。さっきから雑魚MOBの『ホワイトラビット』の悲鳴とポリゴン化が止まらないのは何故だろうか。…はい、僕達のせいですね。ハルは本当に必ず物打ちで攻撃できている。それがどんな体勢や振り方でも出来るんだからリアルチートって怖い。会心攻撃特有のズバン!という気持ち良い音が鳴る。

「ふぅ、これ凄くいいね。剣道って急所に当てても一本取れるだけだからさ、こうやって実際にMOBを一撃で倒せるのは爽快感が違うね!」

ハル、もしかしてリアルで何かストレスでも抱えているのだろうか…深く聞かないのがマナーだよな、うん。とりあえずハルのことは絶対に怒らせない方向で…。

そして僕。『ホワイトラビット』のHPではワンパンできてしまうため《出血》の検証はまだ出来てないが、石材採取の効率が格段に上がっていたので満足。因みに木材は変化なし。植物系という別の枠組みが実際にあったようで、先程の心配は杞憂だったようだ。

「よーし、レベル上がった!」

「お疲れ様。まだまだ行けそう?」

「うん、空腹度も余裕あるし、プレア殿のおかげで耐久力は気にしなくていいし!」

「ありがと。じゃあ少し先進んでみようか」

そして僕達は更なる敵を求めて、エリア2と言われる場所に足を運んだ。因みに最前線はエリア4らしい。まだまだ遠いね。



プレアデス Lv.6
種族:ホムンクルス/職業:鍛治職人Lv.5
HP:300
MP:50
STR:30→35
VIT:0
AGI:0
INT:10
RES:0
DEX:30
LUK:10

SP:5→0

頭:なし
胸:初心者の服(上)
右手:石の破城槌
左手:-
脚:初心者の服(下)
足:初心者の靴

所持金:4500G

満腹度:60%

称号:《試行錯誤》《木工職人見習い》

スキル:【付与強化】【硬化】
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