アルケミア・オンライン

メビウス

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第1章 錬金術の世界

第4話 付与強化②

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「えっえっちょっと待って!なんか凄いシステムメッセージ来たんだけど!?」

「えっ、見せて見せて!」

そして僕はその問題のウィンドウを春風に公開する。問題の、とは勿論最初のやつである。思いつきでやったことだったが、まさか全プレイヤー初だとは思わなかった。誰でも考え付きそうなことなのにね。武器が壊れる可能性を考えたのかもしれない。僕は耐久力無限という言葉を信じ込んでたのであまり深く考えていない。

ユニークスキルということは、このスキルを獲得できたのは後にも先にも僕だけということだ。きっと、情報のリークによるゲームバランスの崩壊を懸念しての「ユニーク」ということなんだろう。

さて、興奮冷め止まぬ中で獲得したスキルと武器も確認してみよう。

【付与強化】消費MP:10
既存の装備品に素材を消費することで、素材の特徴を活かした方向に強化する。このスキルを使った場合、必ず錬成に成功する。ゲーム内1日毎に3回まで使用可能。

『初心者の石槌』☆1 ATK+10
売却不可。『初心者の槌』に石材をコーティングし、より強度と重量を高めた武器。『初心者の槌』を元にしているため何回使っても壊れない。

「「……ぶっ壊れでは?」」

思いがけない強さに2人でハモるほど。回数制限があるとはいえ必ず製作に成功するのはあまりにも強力だし、武器に至っては『初心者』アイテムに共通の耐久力無限という性質を引き継いでいる。それでいてATKは2倍。まだ序盤なので控えめだが、もしかするとこれは予想以上にとんでもない代物に化けるかもしれない。

「ねえ、折角だからもう一回強化してみて!ちょっと良い案浮かんだんだけど…」

春風の提案はすぐに実現できるものだったため、早速やってみることに。まずは石材を2つ用意。そして石器を作るようにお互いをガンガンぶつけていく。春風と僕2人でやったため早く終わったが、部屋中に硬い音が響いて後半頭がクラクラしかけたのは置いといて。

『石の礫』☆1 ATK+2
石材同士をぶつけてできた片手サイズの礫。短剣としても使える。

どうやらこれ自体が武器のようだが、今回は強化素材として使う。4つの『石の礫』を、槌の頭部の片側に取り付ける。これで片側にスパイクの付いた石槌にでもなれば良いなと思いながら、記念すべき1回目のスキルを発動する。

「よし…行くよ!【付与強化】!」

僕がスキル名を口にして数瞬後、作業台上の『初心者の石槌』と4つの『石の礫』が薄く発光する。が、まだ変化はない。ここから自分で組み立てる感じかな?試しに1つ頭部に当てがうと、まるで最初からそこに付いていたかのように定着した。これは凄いな。その調子で残りの3つも規則正しく並べてあげると。

ーーー付与強化に成功しました。『初心者の石槌』は『石の破城槌』に強化されました。

『石の破城槌』☆2 ATK+10 対物質系ダメージ50%増
売却不可。『初心者の石槌』に『石の礫』を装着しスパイクとした槌。スパイク部分で攻撃した場合、中確率で対象を《出血》にする。『初心者の槌』を元にしているため、何回使っても壊れない。

「おー!ついにレア度まで上がったよ!」

「予想以上だな。それに《出血》か。初日からデバフ武器とは、お主はもしや運が良いのかな?」

いやーいいね、付与強化。さっきのなんちゃって強化とは違って、今回はしっかり素材の特徴を活かした強化が出来たと思う。《出血》は一定時間、5秒毎に最大HPの1%の継続ダメージを与える状態異常。序盤のHPが低い敵にはあまり意味がないが、ボスMOBなどのHPの高い敵にはとても有効だろう。相手の最大HPを参照するため、どんなにこちらのATKが足りなくても削れるのは魅力的だ。

それに、物質系への特効も素晴らしい。最も序盤では物質系のMOBは出現しないことが多い上、物質系は総じて状態異常に耐性があるため噛み合ってないが、僕が思うには敵MOB以外にも有効だ。つまり、素材集めが捗る可能性がある。こればかりは検証が必要だが。

そして先程と同様、耐久力無限。これ、どこまで引き継げるんだろうか?もしこの性質が永遠に継承されるんだとしたら大変なことになる。売却不可なため、これでGを得ること自体は出来ないが、自分の武器代が浮くことを考えれば儲けものだ。

「よーし。じゃあ慣れてきたし、いよいよ春風の武器を強化しようかな!」

「おぉ、良いのかい?楽しみだよ。最初は正直失敗しても仕方ないくらいに思ってたけど、あんな光景を目の前にしたら期待で胸が躍るよ!」

春風は両手で心臓の辺りを押さえて目をキラキラ。これから遊園地に行くと決まってワクワクが隠せない子供みたいで和む。VRだからだろうか、現実では見えない気持ちがオーラみたいに見える気がするのは。それとも、春風という女の子の感情の豊かさ故なのだろうか?

僕は緊張を深呼吸で追い出し、春風の初期武器『初心者の木刀』を手に取る。

『初心者の木刀』☆1 ATK+3
売却不可。冒険を始める初心者のためにギルドから支給された木刀。威力は低いが何回使っても壊れない。

どうやら『初心者』アイテムの説明文は皆大体同じらしい。そしてATKだが…低いな。さっきのボロ槌と2しか違わないのか。まあ槌そのものがATKの高い武器だと言えばそれまでなのだが。どうせならこれはさっき以上の性能にしてあげたい。何しろ人にあげる装備品だし。

使う素材は…うーん、石材にはまだ余裕があるけど。刀は槌と違って重量があれば威力が上がるというわけではないだろう。木刀だから刃の鋭さは無しにしても、取り回しの良さや振り心地などが関わってくる。となると、使用者…ましてや経験者の意見が必要だな。

「ねえ、刀っていうのはただ重く硬くすれば良いわけではないでしょ?なんかこう、ここだけは守ってほしいみたいな部分ってあるかな?」

「うーんそうだね…師範には色々な刀を持たされたものだから正直何でも扱えるとは思うよ?だから質問とは別の答え方になっちゃうけど、物打ちで打った時に威力に補正がかかる感じにしてほしいかなぁ」

さすが、リアルチート。強気な発言。

聞くと刀にはいくつか部位があり、その中で「物打ち」というのは一番斬った時に高い威力が出せる場所なんだとか。剣道においても物打ちで打てるようになるのが基礎で、毎朝稽古前に素振りで練習しているおかげで身体に染みついているらしい。

確かに、この『初心者の木刀』は刀とは似て非なる形をしている。精々直剣と比べて刀身が曲がっているくらいだ。春風はVRでも問題なく物打ちで攻撃ができるようなので、なるべく本来の刀のフォルムに合わせるのが望ましいだろう。

それで威力が上がるなら、重い石材は寧ろ邪魔だな。ここは木材で…よし、思い切ってレア素材の方を使ってしまおう。僕は『アルバノの木の若枝』を取り、作業台に置いた。とりあえず葉っぱと小枝は余計だろうからむしり取っておく。結構多いので春風にも手伝って貰った。プチプチ。

よーし、綺麗な一本枝にできたぞ。因みに葉っぱを取ったくらいではアイテムは変質せず、葉っぱはアイテムとして使えないのか、取った側からポリゴン化してしまった。

うーん、とは言っても刀なんて知らないぞ…?木を加工しようにもどうすればいいのやら。作業セットを探していると、ヤスリのようなものが出てきたので、一先ず樹皮を剥ぎ、木目を剥き出しにした。その後は小さい万力のようなもので、刀に合うようなしなり具合に整えていく。アルバノの木自体が硬いのか、それともレア素材だからか、全く折れる気配はなかった。

「うん、もう出来ることはないかな…?じゃあどうなるか分からないけど【付与強化】!」

2度目のスキル行使で、さっきと同じく作業台上の素材達が淡い光を帯びる。僕は刀を右手で持ち、左手に持った加工した若枝を、物打ちに沿うようにして近づけていく。形を整えたおかげか、何の違和感もなくスッと溶け込んでいった。あれ、あんまり見た目変化ないけど大丈夫!?



プレアデス Lv.5
種族:ホムンクルス/職業:鍛治職人Lv.3
HP:300
MP:50
STR:30
VIT:0
AGI:0
INT:10
RES:0
DEX:30
LUK:10

SP:0

頭:なし
胸:初心者の服(上)
右手:石の破城槌
左手:-
脚:初心者の服(下)
足:初心者の靴

所持金:1600G

満腹度:90%

称号:《試行錯誤》

スキル:【付与強化】
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