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二章

その13 名ばかり作戦会議

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 どうして今回の不思議は、現場直行ではなく作戦会議から初めているのかというと、二つ目の不思議は体育館に存在しているからである。放課後には俺達文芸部は勿論、その他の部活動も活動を行っている。その為、体育館はインドアスポーツの部活動の練習場所となっているのだ。文芸部が七不思議の調査解明をするからといって、他の運動部の練習の妨げになるようなことになってはならない。

 「運動部の練習時間外に七不思議の解明をすることは前提として、それをどのタイミングで行うかだよねー」
 「早朝とかじゃ駄目なの?」
 「夏休みも近づいてきたし、大会とかの予定も入っていると思うよ。だから早朝練習してる部活もあるし、やめておいた方がいいと思う」

 ふむん。今回の不思議解明もなかなか難航しそうだ。そもそも現場に行けてないしな。だが、体育館とは普段から利用量の多い施設だ。もしかしたら、今の段階でも不思議に繋がるヒントを得ている部員がいるかもしれないと思い、尋ねてみた。

 「体育館って普段の授業でもそれなりに使っているだろ?その時におかしいと感じたりしたことはないのか?」
 「特にありませんね。体育館の隅々まで見たわけじゃないですが、そもそも体育館に違和感がある方が不思議です」
 「やっぱりかぁ…」

 日ノ宮学園の体育館は、他の高校の体育館と比べても代わり映えはしないだろう。至って普通の体育館である。

 どうやら確実に現地に赴く必要があるらしい。

 「まぁ空いている時間、と言うなら昼休みしかないんじゃないのかな。その代わり皆の昼休みも潰れることになっちゃうけど」
 「別に今更構いませんよ、七不思議解明の為ですから。………それに昼休みなんていつも暇ですし」
 「そ、そう……。ねぇフユカ、今度一緒にお昼ごはん食べよっか」
 「いいです。ハルは人気者なので他にも人を連れてきそうで」
 「うぐっ、確かにそのつもりだったけど…」

 フユカが悲しいことを言い出したので、ハルがお誘いを申し出たのだがそれはバッサリと切り捨てられた。まったく……ハルは全然わかっていない。

 いくらハルという共通の友人がいるとはいえ、フユカと連れてこられた人物は初対面の他人に変わりはない。ハルのことだから、それでもきっと上手くいくなんて考えていそうだが、その善意は残酷過ぎる。フユカが初対面の人間と話せるようなら、友達いないっ子なんてなるわけがないだろう。それ程までにフユカのコミュニケーション能力は乏しい。それは入学したて、入部したての俺達が身を持って実感している。

 「フユカー。そんなに暇なら文芸部室に来ればいいよー。私とシュウがいるからさー」
 「別に、そこまでして潰したい暇ではないのですが……まぁ気が向いたらお邪魔します」

 俺だっていつでも部室にいるわけではないのだが、ここでそのことを口に出すのはいくらなんでも空気が読めていないだろう。と、まぁフユカの昼休み事情も丸く収まったので話を元に戻す。

 ナツキがホワイトボードにマーカーで『昼休みに調査』と記入した。

 「じゃあ次の問題点だねー」
 「え?調査時間以外に問題とかあるの?」
 「相変わらず頭のネジが緩いなお前は」
 「もう一発ビンタが喰らいたいなら、遠慮はしなくていいわよ」
 「軽口だ冗談だユーモアだ。俺が悪かったからどうにか抑えてくれ」

 本当におふざけでハルをからかったつもりだったのだが、凄まじい笑顔と怒気に驚いた。相反した二つの感情を同時に表現できるなんて、人って不思議。

 「それで問題点ってなんなのよ」
 「簡単に言ってしまえば二つ目の不思議が示している場所だな」

 恐怖で高鳴る心臓を深呼吸でなだめて、声が震えてしまわないように出来るだけ注意しながら説明を始めた。

 「場所?それって体育館でしょ」
 「ああそうだ。体育館ではあるな」

 俺の説明を聴いても、ハルは理解してくれていないようだ。俺の説明が下手くそというのもあるのだろうが、ハルがアホというのも原因ではあると思う。

 俺ではこれ以上、上手く説明できそうもないので視線でアメにヘルプを要請した。それに苦笑してアメは、応じてくれる。

 「一つ目の不思議は、池の底っていう明確な場所の指定があったよね。でも今回は、体育館としか提示されていないからね。調査する場所の拡大がしているのが問題ってこと」
 「………それはそんなに問題なの?時間をかければ一つ目の不思議みたいに解明できるんじゃないの?」
 「それは一つ目の不思議に『池の底』というワードがあったから必然的に池漁りをしたまでであって、今回は体育館以外に具体的なワードがありません」

 アメの説明を引き継いで、フユカが告げる。薄々問題点に気がついたのか、ハルの顔が引きつってきた。

 「えーと……それじゃあつまり。今回は何をすればいいのかすらも分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・ってこと?」
 「そうですね。最悪文芸部室ここの不思議と同様、時間がかかるだけで解明出来ない可能性もあります」

 フユカのその言葉に、ハルはがくりと肩を落としたのだった。
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