13 / 53
二章
その13 名ばかり作戦会議
しおりを挟む
どうして今回の不思議は、現場直行ではなく作戦会議から初めているのかというと、二つ目の不思議は体育館に存在しているからである。放課後には俺達文芸部は勿論、その他の部活動も活動を行っている。その為、体育館はインドアスポーツの部活動の練習場所となっているのだ。文芸部が七不思議の調査解明をするからといって、他の運動部の練習の妨げになるようなことになってはならない。
「運動部の練習時間外に七不思議の解明をすることは前提として、それをどのタイミングで行うかだよねー」
「早朝とかじゃ駄目なの?」
「夏休みも近づいてきたし、大会とかの予定も入っていると思うよ。だから早朝練習してる部活もあるし、やめておいた方がいいと思う」
ふむん。今回の不思議解明もなかなか難航しそうだ。そもそも現場に行けてないしな。だが、体育館とは普段から利用量の多い施設だ。もしかしたら、今の段階でも不思議に繋がるヒントを得ている部員がいるかもしれないと思い、尋ねてみた。
「体育館って普段の授業でもそれなりに使っているだろ?その時におかしいと感じたりしたことはないのか?」
「特にありませんね。体育館の隅々まで見たわけじゃないですが、そもそも体育館に違和感がある方が不思議です」
「やっぱりかぁ…」
日ノ宮学園の体育館は、他の高校の体育館と比べても代わり映えはしないだろう。至って普通の体育館である。
どうやら確実に現地に赴く必要があるらしい。
「まぁ空いている時間、と言うなら昼休みしかないんじゃないのかな。その代わり皆の昼休みも潰れることになっちゃうけど」
「別に今更構いませんよ、七不思議解明の為ですから。………それに昼休みなんていつも暇ですし」
「そ、そう……。ねぇフユカ、今度一緒にお昼ごはん食べよっか」
「いいです。ハルは人気者なので他にも人を連れてきそうで」
「うぐっ、確かにそのつもりだったけど…」
フユカが悲しいことを言い出したので、ハルがお誘いを申し出たのだがそれはバッサリと切り捨てられた。まったく……ハルは全然わかっていない。
いくらハルという共通の友人がいるとはいえ、フユカと連れてこられた人物は初対面の他人に変わりはない。ハルのことだから、それでもきっと上手くいくなんて考えていそうだが、その善意は残酷過ぎる。フユカが初対面の人間と話せるようなら、友達いないっ子なんてなるわけがないだろう。それ程までにフユカのコミュニケーション能力は乏しい。それは入学したて、入部したての俺達が身を持って実感している。
「フユカー。そんなに暇なら文芸部室に来ればいいよー。私とシュウがいるからさー」
「別に、そこまでして潰したい暇ではないのですが……まぁ気が向いたらお邪魔します」
俺だっていつでも部室にいるわけではないのだが、ここでそのことを口に出すのはいくらなんでも空気が読めていないだろう。と、まぁフユカの昼休み事情も丸く収まったので話を元に戻す。
ナツキがホワイトボードにマーカーで『昼休みに調査』と記入した。
「じゃあ次の問題点だねー」
「え?調査時間以外に問題とかあるの?」
「相変わらず頭のネジが緩いなお前は」
「もう一発ビンタが喰らいたいなら、遠慮はしなくていいわよ」
「軽口だ冗談だユーモアだ。俺が悪かったからどうにか抑えてくれ」
本当におふざけでハルをからかったつもりだったのだが、凄まじい笑顔と怒気に驚いた。相反した二つの感情を同時に表現できるなんて、人って不思議。
「それで問題点ってなんなのよ」
「簡単に言ってしまえば二つ目の不思議が示している場所だな」
恐怖で高鳴る心臓を深呼吸でなだめて、声が震えてしまわないように出来るだけ注意しながら説明を始めた。
「場所?それって体育館でしょ」
「ああそうだ。体育館ではあるな」
俺の説明を聴いても、ハルは理解してくれていないようだ。俺の説明が下手くそというのもあるのだろうが、ハルがアホというのも原因ではあると思う。
俺ではこれ以上、上手く説明できそうもないので視線でアメにヘルプを要請した。それに苦笑してアメは、応じてくれる。
「一つ目の不思議は、池の底っていう明確な場所の指定があったよね。でも今回は、体育館としか提示されていないからね。調査する場所の拡大がしているのが問題ってこと」
「………それはそんなに問題なの?時間をかければ一つ目の不思議みたいに解明できるんじゃないの?」
「それは一つ目の不思議に『池の底』というワードがあったから必然的に池漁りをしたまでであって、今回は体育館以外に具体的なワードがありません」
アメの説明を引き継いで、フユカが告げる。薄々問題点に気がついたのか、ハルの顔が引きつってきた。
「えーと……それじゃあつまり。今回は何をすればいいのかすらも分からないってこと?」
「そうですね。最悪文芸部室の不思議と同様、時間がかかるだけで解明出来ない可能性もあります」
フユカのその言葉に、ハルはがくりと肩を落としたのだった。
「運動部の練習時間外に七不思議の解明をすることは前提として、それをどのタイミングで行うかだよねー」
「早朝とかじゃ駄目なの?」
「夏休みも近づいてきたし、大会とかの予定も入っていると思うよ。だから早朝練習してる部活もあるし、やめておいた方がいいと思う」
ふむん。今回の不思議解明もなかなか難航しそうだ。そもそも現場に行けてないしな。だが、体育館とは普段から利用量の多い施設だ。もしかしたら、今の段階でも不思議に繋がるヒントを得ている部員がいるかもしれないと思い、尋ねてみた。
「体育館って普段の授業でもそれなりに使っているだろ?その時におかしいと感じたりしたことはないのか?」
「特にありませんね。体育館の隅々まで見たわけじゃないですが、そもそも体育館に違和感がある方が不思議です」
「やっぱりかぁ…」
日ノ宮学園の体育館は、他の高校の体育館と比べても代わり映えはしないだろう。至って普通の体育館である。
どうやら確実に現地に赴く必要があるらしい。
「まぁ空いている時間、と言うなら昼休みしかないんじゃないのかな。その代わり皆の昼休みも潰れることになっちゃうけど」
「別に今更構いませんよ、七不思議解明の為ですから。………それに昼休みなんていつも暇ですし」
「そ、そう……。ねぇフユカ、今度一緒にお昼ごはん食べよっか」
「いいです。ハルは人気者なので他にも人を連れてきそうで」
「うぐっ、確かにそのつもりだったけど…」
フユカが悲しいことを言い出したので、ハルがお誘いを申し出たのだがそれはバッサリと切り捨てられた。まったく……ハルは全然わかっていない。
いくらハルという共通の友人がいるとはいえ、フユカと連れてこられた人物は初対面の他人に変わりはない。ハルのことだから、それでもきっと上手くいくなんて考えていそうだが、その善意は残酷過ぎる。フユカが初対面の人間と話せるようなら、友達いないっ子なんてなるわけがないだろう。それ程までにフユカのコミュニケーション能力は乏しい。それは入学したて、入部したての俺達が身を持って実感している。
「フユカー。そんなに暇なら文芸部室に来ればいいよー。私とシュウがいるからさー」
「別に、そこまでして潰したい暇ではないのですが……まぁ気が向いたらお邪魔します」
俺だっていつでも部室にいるわけではないのだが、ここでそのことを口に出すのはいくらなんでも空気が読めていないだろう。と、まぁフユカの昼休み事情も丸く収まったので話を元に戻す。
ナツキがホワイトボードにマーカーで『昼休みに調査』と記入した。
「じゃあ次の問題点だねー」
「え?調査時間以外に問題とかあるの?」
「相変わらず頭のネジが緩いなお前は」
「もう一発ビンタが喰らいたいなら、遠慮はしなくていいわよ」
「軽口だ冗談だユーモアだ。俺が悪かったからどうにか抑えてくれ」
本当におふざけでハルをからかったつもりだったのだが、凄まじい笑顔と怒気に驚いた。相反した二つの感情を同時に表現できるなんて、人って不思議。
「それで問題点ってなんなのよ」
「簡単に言ってしまえば二つ目の不思議が示している場所だな」
恐怖で高鳴る心臓を深呼吸でなだめて、声が震えてしまわないように出来るだけ注意しながら説明を始めた。
「場所?それって体育館でしょ」
「ああそうだ。体育館ではあるな」
俺の説明を聴いても、ハルは理解してくれていないようだ。俺の説明が下手くそというのもあるのだろうが、ハルがアホというのも原因ではあると思う。
俺ではこれ以上、上手く説明できそうもないので視線でアメにヘルプを要請した。それに苦笑してアメは、応じてくれる。
「一つ目の不思議は、池の底っていう明確な場所の指定があったよね。でも今回は、体育館としか提示されていないからね。調査する場所の拡大がしているのが問題ってこと」
「………それはそんなに問題なの?時間をかければ一つ目の不思議みたいに解明できるんじゃないの?」
「それは一つ目の不思議に『池の底』というワードがあったから必然的に池漁りをしたまでであって、今回は体育館以外に具体的なワードがありません」
アメの説明を引き継いで、フユカが告げる。薄々問題点に気がついたのか、ハルの顔が引きつってきた。
「えーと……それじゃあつまり。今回は何をすればいいのかすらも分からないってこと?」
「そうですね。最悪文芸部室の不思議と同様、時間がかかるだけで解明出来ない可能性もあります」
フユカのその言葉に、ハルはがくりと肩を落としたのだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる