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終章
その52 魔竜を封じる部室にて!!
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今日はもう終業式。
体育館に全校生徒を集めて、校長先生の話や生活指導の教師が冬休みの過ごし方についてなどの注意を行う。それらの話を体育座りでぼんやりと聞いた後、それぞれの教室へと生徒達は戻されていった。
今日の予定は終業式のみなので、午前中で解散となる。
いつもより少し長めのホームルームを終えて、担任教師への挨拶も済ませれば、教室内は一瞬にして喧騒に包まれた。
明日からはついに待ちに待った冬休みとなる。皆が皆、冬休みの予定を立てるのに忙しいのであろう。それと、これから友達と遊びに行こうだとか昼食を食べに行こうという会話も聴こえてきた。
俺は一人そそくさと帰り支度を整えて席を立つ。
グループで固まって楽しそうに話しているクラスメイト達の間を縫って出入り口の方へと歩いていった。教室後方の扉に手をかけた時、教室内のクラスメイトから声をかけられた。
「おーい、山梨ー。これから何人かでラーメン屋行こうって話になってるんだけどさ、お前もいかねー?」
男友達が俺に声をかけてくれた。
ありがたい申し出なのだが、俺は苦笑して片手を挙げた。
「悪い。これから部活なんだ」
◆◆◆
「冬休み皆で遊びましょうよ」
「いきなりだな」
五人が集まった文芸部室でハルが唐突に声を上げた。
「冬は冬で沢山遊べるものがあるのよ。なら遊ばなきゃ損じゃない。スキーとかどう?結構楽しいわよ」
「アウトドアの遊びは遠慮したいのですが」
「だーめ!フユカとシュウはセットで強制参加!二人の思い出作らなきゃだめじゃない!」
「私に拒否権はないんですかね……」
「文芸部総出で遊びに行っている時点で二人の思い出ではないんだよなぁ」
やけに張り切るハルと、外遊びを想像してげんなりとしているフユカ。そんな二人を見て、俺は軽く笑ってしまった。
ハルの言葉からもわかる通り、俺とフユカの関係は文芸部には伝えてある。元々隠すつもりでもなかったので、告白した翌日の部活動で皆にそのことを話した。
けれど皆の反応は「え?今更?」みたいな感じだった。どうやらお互いの気持ちを理解していなかったのは俺達だけだったようで、俺達が付き合い出したことは特にいじられたりすることもなかった。それでも、皆からそれぞれおめでとうと言ってもらえて嬉しくなった。
アメの時も、素直におめでとうと言ってやれればと悔やむ気持ちも湧いてきたが、そのことは俺もアメもお互い謝って水に流した話だ。だから俺は純粋にアメからの祝福を受け取った。
ただまぁ付き合い出したからと言って何かが変わるわけでもなく。デートに行ったわけでもなく。普段通りに文芸部で一緒に過ごしているだけなのだが。
けれど、流石に冬休みの間にデートくらい誘わないと、くらいは俺も考えてはいる。………………今の所考えているだけなんですけどね。
「遊びに行くのは大賛成だよー。でも、文芸部の活動に区切りがついてからだからねー」
「一つ目の不思議も後もう少しって所だからね。頑張れば明日にでも完成するんじゃないかな」
ナツキの言葉にアメが続く。それを聴いたハルが小さく口を尖らせた。
「わかってるわよ。でも、以外と大変なのね七不思議を作るのって」
ハルはそう言って、長机の中央に広げたノートに視線を落とす。そこには日ノ宮学園の図に加えて、沢山の絵や文章が書かれていた。いろんな場所に印をつけて、妖精やら幽霊やら怪しげなワードも所々に散りばめられている。
俺達の新たな目標。それは新たな七不思議を作ることだ。
俺達は今ある七不思議を解明して『永遠の愛』と出会うことが出来た。しかし、この七不思議は秋の花壇のみに限定されているのが難点だ。
そこで俺達が考えたのは、季節毎の花壇へと辿り着く七不思議を作ってみようということだった。
この学園の花壇には、それぞれの季節毎に美しい花が咲く。それなのに秋の花だけ七不思議にされているのは少し不公平だと考えたのだ。
それに、今後俺達のように七不思議に興味を持って解明してくれる人も出て来るかもしれない。そんな人達に俺達が得たような感動を、全ての季節で味わって欲しいのだ。………まぁ期待外れだったと思われる可能性も無きにしもあらずなのだが。
それでも俺達は七不思議を作ることにした。
七不思議と関わっていくことにした。
それが、七不思議を追い求めてきた文芸部らしい活動だろう。
文芸部部員が話している光景に俺は軽く微笑みを浮かべて、それから窓の外の花壇を眺めた。そこにはキキョウとは違う花が、風に吹かれて揺れていた。
思えば、七不思議なんてものはきっかけでしかなかった。
大切なものは、きっと最初からあったのだろう。
それでも、七不思議には感謝してやろう。
七不思議がなければ、辛いことも楽しいことも何一つ得ることなんてできやしなかっただろうから。
だから、感謝してやるよ。
俺達の始まりはここだったから。
俺達はここから始まったのだから。
魔竜を封じる部室にて━━━━
《了》
体育館に全校生徒を集めて、校長先生の話や生活指導の教師が冬休みの過ごし方についてなどの注意を行う。それらの話を体育座りでぼんやりと聞いた後、それぞれの教室へと生徒達は戻されていった。
今日の予定は終業式のみなので、午前中で解散となる。
いつもより少し長めのホームルームを終えて、担任教師への挨拶も済ませれば、教室内は一瞬にして喧騒に包まれた。
明日からはついに待ちに待った冬休みとなる。皆が皆、冬休みの予定を立てるのに忙しいのであろう。それと、これから友達と遊びに行こうだとか昼食を食べに行こうという会話も聴こえてきた。
俺は一人そそくさと帰り支度を整えて席を立つ。
グループで固まって楽しそうに話しているクラスメイト達の間を縫って出入り口の方へと歩いていった。教室後方の扉に手をかけた時、教室内のクラスメイトから声をかけられた。
「おーい、山梨ー。これから何人かでラーメン屋行こうって話になってるんだけどさ、お前もいかねー?」
男友達が俺に声をかけてくれた。
ありがたい申し出なのだが、俺は苦笑して片手を挙げた。
「悪い。これから部活なんだ」
◆◆◆
「冬休み皆で遊びましょうよ」
「いきなりだな」
五人が集まった文芸部室でハルが唐突に声を上げた。
「冬は冬で沢山遊べるものがあるのよ。なら遊ばなきゃ損じゃない。スキーとかどう?結構楽しいわよ」
「アウトドアの遊びは遠慮したいのですが」
「だーめ!フユカとシュウはセットで強制参加!二人の思い出作らなきゃだめじゃない!」
「私に拒否権はないんですかね……」
「文芸部総出で遊びに行っている時点で二人の思い出ではないんだよなぁ」
やけに張り切るハルと、外遊びを想像してげんなりとしているフユカ。そんな二人を見て、俺は軽く笑ってしまった。
ハルの言葉からもわかる通り、俺とフユカの関係は文芸部には伝えてある。元々隠すつもりでもなかったので、告白した翌日の部活動で皆にそのことを話した。
けれど皆の反応は「え?今更?」みたいな感じだった。どうやらお互いの気持ちを理解していなかったのは俺達だけだったようで、俺達が付き合い出したことは特にいじられたりすることもなかった。それでも、皆からそれぞれおめでとうと言ってもらえて嬉しくなった。
アメの時も、素直におめでとうと言ってやれればと悔やむ気持ちも湧いてきたが、そのことは俺もアメもお互い謝って水に流した話だ。だから俺は純粋にアメからの祝福を受け取った。
ただまぁ付き合い出したからと言って何かが変わるわけでもなく。デートに行ったわけでもなく。普段通りに文芸部で一緒に過ごしているだけなのだが。
けれど、流石に冬休みの間にデートくらい誘わないと、くらいは俺も考えてはいる。………………今の所考えているだけなんですけどね。
「遊びに行くのは大賛成だよー。でも、文芸部の活動に区切りがついてからだからねー」
「一つ目の不思議も後もう少しって所だからね。頑張れば明日にでも完成するんじゃないかな」
ナツキの言葉にアメが続く。それを聴いたハルが小さく口を尖らせた。
「わかってるわよ。でも、以外と大変なのね七不思議を作るのって」
ハルはそう言って、長机の中央に広げたノートに視線を落とす。そこには日ノ宮学園の図に加えて、沢山の絵や文章が書かれていた。いろんな場所に印をつけて、妖精やら幽霊やら怪しげなワードも所々に散りばめられている。
俺達の新たな目標。それは新たな七不思議を作ることだ。
俺達は今ある七不思議を解明して『永遠の愛』と出会うことが出来た。しかし、この七不思議は秋の花壇のみに限定されているのが難点だ。
そこで俺達が考えたのは、季節毎の花壇へと辿り着く七不思議を作ってみようということだった。
この学園の花壇には、それぞれの季節毎に美しい花が咲く。それなのに秋の花だけ七不思議にされているのは少し不公平だと考えたのだ。
それに、今後俺達のように七不思議に興味を持って解明してくれる人も出て来るかもしれない。そんな人達に俺達が得たような感動を、全ての季節で味わって欲しいのだ。………まぁ期待外れだったと思われる可能性も無きにしもあらずなのだが。
それでも俺達は七不思議を作ることにした。
七不思議と関わっていくことにした。
それが、七不思議を追い求めてきた文芸部らしい活動だろう。
文芸部部員が話している光景に俺は軽く微笑みを浮かべて、それから窓の外の花壇を眺めた。そこにはキキョウとは違う花が、風に吹かれて揺れていた。
思えば、七不思議なんてものはきっかけでしかなかった。
大切なものは、きっと最初からあったのだろう。
それでも、七不思議には感謝してやろう。
七不思議がなければ、辛いことも楽しいことも何一つ得ることなんてできやしなかっただろうから。
だから、感謝してやるよ。
俺達の始まりはここだったから。
俺達はここから始まったのだから。
魔竜を封じる部室にて━━━━
《了》
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