勇者よりも魔王を選んだ僕 ～魔王のダンジョン攻略～

２７．ダーウィンの進化論の嘘

兎が知能を持ったのは５０年前。種族ごと同時に覚醒したと言われる。きっかけは不明だ。だが兎達は一様に神から知能を授かったと話している。
知能を得た兎達は初めは人間を尊重し、人間達に共存を求めたという。
しかし、急に喋り始め、共存を求めてくる兎達。人間にとっては恐怖と脅威でしかない。個々の対応の差はもちろんあっただろうが、人間の全体のベクトルは、「悪魔から知能を得た兎達を抹殺する」という選択だった。
人間至上主義の価値観を、急に変えられはしなかったのだろう。
王がそう決めたことにより、人間はゴキブリを叩き潰すように、ヒステリックに兎達を抹殺し始めた。
初めは人間が優性だった。しかし、兎達が知能を持ってから5日が過ぎた頃だった。人間から逃げ惑っていた兎達は知能を得た影響だろうか、脳の発達により体が急速に成長し、人間と変わらない大きさとなって2足歩行を始めた。そして兎達は急激な体の成長と共に、あることに気が付く。
自分達は魔法が使えると。
兎達は体が人間と同じ大きさとなったことで、1匹1匹の力では人間に勝っていた。それが更に魔法を使い出したことにより、一気に形勢は逆転した。

やがて人間を制圧した兎達。兎達は未だ兎に刃向かう人間は殺し、従うものは奴隷として生かした。従う知能ある人間は最高級の奴隷だ。利用価値が高い。
そして、今のこの世界が出来上がっていく。

ラドは長く語ったが、要約するとだいたいこのような話を僕へと伝えた。

「重要な話が抜けている。何故、キングラビットを倒せば兎の知能が元に戻るんだ？」
僕が話の終わりを待ち、ラドに尋ねる。
レミはとっくに壁への落書きに飽き、おはじきのような玩具で一人で遊び始めていた。

「兎達が一斉に知能を持つ前。実はある1匹の兎が先に知能を持っていたと云われている。」

「つまり、神や悪魔ではなく兎達に知能を与えたのはその１匹の兎。」
僕は話を先読みする。

「そうだ。それがキングラビット。」


聳え立つ城の中。
闘技場や、レッドドラゴンとの闘いの様子は当然キングラビットに伝っていた。
キングラビットから下った命令。

最優先。全軍で探し出して存在を抹消しろ。