勇者よりも魔王を選んだ僕 ～魔王のダンジョン攻略～

１７．怯えていた

僕はスナイフとリツから離れ、闘技場を出る。

先程の馬鹿騒ぎが嘘のように、闘技場の外はシンと静まり返っていた。
鎧の兎達は圧倒的な力の差に成す術なく、既に撤退をしていた。遠ざかっていく兎達の足音が微かに聞こえた。

それでも逃げ遅れたのか、闘技場の周りの家の方から気配を感じる。
僕は気配を頼りに家の庭へと入っていく。
広い庭を見回すと、地下に降りる階段を見つける。僕はその薄暗い階段を降りていく。
階段の下には腐りかけて湿った木の扉があった。
僕は扉を開く。扉を開いた途端、酷い悪臭に襲われる。地下室の中には檻があり、汚い服を着た小学生ぐらいの男の子と幼い少女がいた。

男の子は僕をみつけると目を丸くして驚き、檻の端まで飛んできた。

「お兄ちゃん！駄目だよ！殺されちゃうよ！」
男の子は僕を気遣って声を顰めながらも、強い口調で僕に注意をした。

「僕は大丈夫なんだ。それより、ここを出たくないか？」
僕は男の子に聞いた。

「出たくない！」
男の子は即答する。

「…殺されなくて、自由になれるとしたらどうかな？」

「……それでもやだ…。」

僕は意外な答えに少し驚く。
「…どうして？」

「人間はちゃんと兎様にご奉仕しなきゃ！」

檻の奥で少女は怯えていた。
僕はそれを見ると何も言わずに地下室から出て、腐りかけの木の扉を閉めた。


階段をあがるとスナイフとリツが立っていた。