勇者よりも魔王を選んだ僕 ～魔王のダンジョン攻略～

１５．降懸かる火の粉を払っただけ

「対象３匹を確認。攻撃用意……。撃て！」
ドラゴンライダー達が隊長の命令に合わせて一斉に身を乗り出し、炎の呪文フレアを唱える。大きな火炎球がまるで隕石のように３人を目掛けて降り注ぐ。
スナイフとリツは抱き合い目を閉じる。

僕は落ちてくる10の大きな火炎球を、衝撃波を利用して一瞬で掻き消す。
そして右手の平から黒い光を放って円を描く。ドラゴンライダー10匹を黒い光が貫く。
ドラゴンライダー達は黒い光に貫かれると、バラバラと観客席の外周へと落下した。

僕はそれを見届けると闘技場の出口へと向かって歩いていく。

スナイフとリツは恐る恐るようやく目を開けた。
何故自分達がまだ生きているのか、何が起こったのか全く理解できていないようだった。
そしてスタスタと闘技場の出口へと向かう僕を見つける。

「おいっ！アンタ！出口に行っても兎達が！」

「僕は包囲されている言っただけで、外に出ることができないとは言っていない。」

スナイフとリツは顔を見合わせると、僕の後ろを半信半疑でついてくる。

南口の出口には鎧の兎達が盾と槍を構え密集していた。

「止まれ！！」
僕は兎達の忠告を無視して歩みを進める。

「全員前進！」
兎達も盾を構えながら槍を突き出し、一斉に隊列を前進させる。

僕は隊列の内の１本の槍を掴むと、兎ごと持ち上げ後ろへと放り投げる。
スナイフとリツがビクッとしてそれを避ける。

僕に槍の刃が集中する。僕は全てを一旦皮膚で受け止めると、槍の柄の部分を手刃で切断し刃の部分を切り落とす。

最大の攻撃手段を失った、兎達が怯む。
隊列の後方から、隊長らしき兎の命令が聞こえる。
「と…突撃だ！」

しかし、兎達は動くことができない。
隊列の１番前にいた１匹の兎が悲鳴をあげて逃げ出す。

「ま、待て！」
隊長が引き留めるも、それを皮切りに次々に兎達が逃げていく。
昨日の隊長らしき赤い鎧の兎が、剣を構えて１匹だけ残る。しかし僕が１歩踏み出すと、悲鳴と共に剣を放り投げ、一目散に逃げ出した。

僕はその剣を拾うと、スナイフへと放り投げる。
スナイフはしっかりと柄を掴んで剣を受け取った。