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屈強な騎士達に守られながらの旅は波乱もなく、予定通りの日程で、王都までやって来た。
国内で遭遇する魔物なんて、うちの騎士達にとっては敵ではなかったし、馬車にうちの家紋がくっきりと描かれていたので、家紋を見ただけで盗賊が逃げて行ったので、ちょっと引いた。うちって、盗賊に恐れられるような家柄だったのかと。今まで領地から出た事がなかったから知らなかっただけで、他家からしたら、関わりたくない家なのだろうか?
と、心配になったりした。
だとしても、俺なんて母親似で強面じゃないし、認めたくないけど背も低い……成長期だからこれから、ぐっと伸びるに違いないが!
し、心配することはないはず。たぶん!
馬車の窓から見える王都の壁の向こうに聳え立つ城や塔を見上げながら、ごくりと唾を飲んで身構えた俺の肩に、姉上が面白がる顔で手を置いた。
「フィリッツ。私は、王都に戻ったらその足で王宮に戻るが、お前も一緒に来るか?」
「は? 王宮?! ……ないない。行かないよ」
姉上の言葉に、俺はブンブンと首を横に振った。一応、家庭教師に貴族一般の礼儀作法は習ったけど、王宮なんて敷居が高すぎる。
「そうか? 王妃様も是非、お前に会いたいって仰ってたが。まあ、落ち着いてからでいいか」
「ま、待って! 何でそういう話になってんの?! 俺なんか跡取りでも何でもないじゃないか」
姉上は俺の言葉に、ちょっと考えるような顔になってから、ニンマリと悪い顔になった。
「跡取り領主に姫を嫁にやると、めったに会えなくなってしまうから、法衣貴族か、もしくは長男以外の貴族の子息がいいって言われたからお前を推薦しといたからな」
「一体、なんの推薦?!」
「ここまで言って解らないのか? 王女様の婿に決まってるだろ?」
「はあー?!」
意味わかんないです!
「まだ、候補段階だし、そう固く考えるな。この先、お前が姫の護衛騎士になったりするかもだろ?」
何言ってるんだって、叫びたいのを俺はぐっと堪えた。騒げば騒ぐ程、この姉は面白がる。そして、悪乗りするに違いない。
「俺なんか推薦して、恥をかくのは姉上ですからね?!」
「あはは……姫は小動物が好きだから、きっとお前を気に入るさ」
小動物? ペットかよ!
頬を膨らました俺の顔を見て、姉上は一頻り笑った。
「冗談はさておき、歳が近くて親しみやすいお前くらいが、箱入りの姫様にちょうどいいって、まあただの、話し相手程度さ。それくらいならいいだろ?」
これは、どうしても王宮に連れて行かれそうだと俺は、嫌な顔になった。
「これは、他言無用だぞ? お忍びで出席なさった下位貴族のパーティで大柄で下種な輩に絡まれて、どうも姫様が、男が苦手になってしまったらしくてな。心配された王妃様に頼まれてしまってね。まあ、この姉を助けると思って頼む」
「……そこまで仰るなら、一度くらいなら……」
いつもは、強引な姉上が下手に出たので、つい同意してしまったのだった。兄や姉には、ホントに逆らえない。
今すぐでないならいいかなんて思っていまった俺は浅はかだったとしか言いようがない。
馬車は王都の正門を容易に抜けて、城壁の先に入った。長い検問の列に並ばなくていいなんて、お貴族様の特権ってやつだな。通行証と家紋入り馬車で簡単に通されたし。
領都なんかとは比べものにならないくらいの人がひしめいて、おしゃれそうな店が一杯あって、流石王都だなって、関心しながら貴族街に向かう馬車の窓から外の景色に見入ってしまった。
現代日本みたいな世界を知っているから、圧倒されたりはしなかったが、自分の住んでる国が活気があって平和そうだと安心できた。やっぱ、ちょっと外に出たら魔物とばったりなんてなさそうだし。
貴族街にセカンドハウスがあるのは、領地貴族では常識らしい。王都に行ってやる事が一杯あるって三兄が言ってたしな。しょっちゅう来るのに宿屋を毎回予約ってのも大変そうだ。
馬車が止まったので、先に降りて姉上が降りるのをエスコートした。貴族ってやる事が多くて大変だ。
「30点。相手が私だからと適当になっていたぞ」
「点数制?」
「マイナスになったら、領地に強制送還だからな」
「そんな~」
ずっとこんな調子でからかわれていたが、姉上って真面目で堅物って雰囲気なのに、やっぱり同じ一族だよ。
兄上達なんか、もっと豪快にからかってくるもんな。
「そうだ。先に来ている寄子の、えーっと何とかが挨拶しに待ってるらしいぞ」
「何とかって……」
適当過ぎるが、辺境一帯の広大な領地を持つ我が家の周辺に位置する小領主達はうちと主従関係を結んでいて、一般には寄子って呼ばれている。王に対する忠誠程じゃないけど、何かあったら助ける代りに、国境に大量の魔物や敵兵が押し寄せたら兵を出して協力するってなってると教わった。
「なめられるなよ?」
「いや、ただの挨拶だよね?」
何でそんなに殺気立つことがあるんだって俺は、思った。
俺なんて領主になるわけでもないし、はっきり言って長兄じゃないんだから、穏便にいきたいです。
「姉上は王宮に戻られるんでしょ?」
「ああ。お前の荷物を下ろしたらな」
俺の荷物なんて、姉上の半分以下なんだから、幾らもかからずに終わった。
「お嬢様。長旅でしたし、少し休まれてはいかがですか?」
「はは……剣を抜くこともなかったし、心配は無用だ」
屋敷から家令やメイド達が出て来て、家令に気遣われて姉上は、一蹴した。
「フィリッツは寮に入るが、何かあったら頼む」
「かしこまりました」
姉上の言葉に家令は大きく頷いて見せた。
いや、何もないと思うけど?
貴族の五男だし、元々平凡な高校生が平凡なまま育ったし?
平穏に騎士になって、まあ領地で兄上達の使いっぱしりになる運命だとしても、幼馴染と旧交を温めたりしたいなって、細やかな希望があるだけだってのに、大げさだなって俺は苦笑を浮かべたのだった。
国内で遭遇する魔物なんて、うちの騎士達にとっては敵ではなかったし、馬車にうちの家紋がくっきりと描かれていたので、家紋を見ただけで盗賊が逃げて行ったので、ちょっと引いた。うちって、盗賊に恐れられるような家柄だったのかと。今まで領地から出た事がなかったから知らなかっただけで、他家からしたら、関わりたくない家なのだろうか?
と、心配になったりした。
だとしても、俺なんて母親似で強面じゃないし、認めたくないけど背も低い……成長期だからこれから、ぐっと伸びるに違いないが!
し、心配することはないはず。たぶん!
馬車の窓から見える王都の壁の向こうに聳え立つ城や塔を見上げながら、ごくりと唾を飲んで身構えた俺の肩に、姉上が面白がる顔で手を置いた。
「フィリッツ。私は、王都に戻ったらその足で王宮に戻るが、お前も一緒に来るか?」
「は? 王宮?! ……ないない。行かないよ」
姉上の言葉に、俺はブンブンと首を横に振った。一応、家庭教師に貴族一般の礼儀作法は習ったけど、王宮なんて敷居が高すぎる。
「そうか? 王妃様も是非、お前に会いたいって仰ってたが。まあ、落ち着いてからでいいか」
「ま、待って! 何でそういう話になってんの?! 俺なんか跡取りでも何でもないじゃないか」
姉上は俺の言葉に、ちょっと考えるような顔になってから、ニンマリと悪い顔になった。
「跡取り領主に姫を嫁にやると、めったに会えなくなってしまうから、法衣貴族か、もしくは長男以外の貴族の子息がいいって言われたからお前を推薦しといたからな」
「一体、なんの推薦?!」
「ここまで言って解らないのか? 王女様の婿に決まってるだろ?」
「はあー?!」
意味わかんないです!
「まだ、候補段階だし、そう固く考えるな。この先、お前が姫の護衛騎士になったりするかもだろ?」
何言ってるんだって、叫びたいのを俺はぐっと堪えた。騒げば騒ぐ程、この姉は面白がる。そして、悪乗りするに違いない。
「俺なんか推薦して、恥をかくのは姉上ですからね?!」
「あはは……姫は小動物が好きだから、きっとお前を気に入るさ」
小動物? ペットかよ!
頬を膨らました俺の顔を見て、姉上は一頻り笑った。
「冗談はさておき、歳が近くて親しみやすいお前くらいが、箱入りの姫様にちょうどいいって、まあただの、話し相手程度さ。それくらいならいいだろ?」
これは、どうしても王宮に連れて行かれそうだと俺は、嫌な顔になった。
「これは、他言無用だぞ? お忍びで出席なさった下位貴族のパーティで大柄で下種な輩に絡まれて、どうも姫様が、男が苦手になってしまったらしくてな。心配された王妃様に頼まれてしまってね。まあ、この姉を助けると思って頼む」
「……そこまで仰るなら、一度くらいなら……」
いつもは、強引な姉上が下手に出たので、つい同意してしまったのだった。兄や姉には、ホントに逆らえない。
今すぐでないならいいかなんて思っていまった俺は浅はかだったとしか言いようがない。
馬車は王都の正門を容易に抜けて、城壁の先に入った。長い検問の列に並ばなくていいなんて、お貴族様の特権ってやつだな。通行証と家紋入り馬車で簡単に通されたし。
領都なんかとは比べものにならないくらいの人がひしめいて、おしゃれそうな店が一杯あって、流石王都だなって、関心しながら貴族街に向かう馬車の窓から外の景色に見入ってしまった。
現代日本みたいな世界を知っているから、圧倒されたりはしなかったが、自分の住んでる国が活気があって平和そうだと安心できた。やっぱ、ちょっと外に出たら魔物とばったりなんてなさそうだし。
貴族街にセカンドハウスがあるのは、領地貴族では常識らしい。王都に行ってやる事が一杯あるって三兄が言ってたしな。しょっちゅう来るのに宿屋を毎回予約ってのも大変そうだ。
馬車が止まったので、先に降りて姉上が降りるのをエスコートした。貴族ってやる事が多くて大変だ。
「30点。相手が私だからと適当になっていたぞ」
「点数制?」
「マイナスになったら、領地に強制送還だからな」
「そんな~」
ずっとこんな調子でからかわれていたが、姉上って真面目で堅物って雰囲気なのに、やっぱり同じ一族だよ。
兄上達なんか、もっと豪快にからかってくるもんな。
「そうだ。先に来ている寄子の、えーっと何とかが挨拶しに待ってるらしいぞ」
「何とかって……」
適当過ぎるが、辺境一帯の広大な領地を持つ我が家の周辺に位置する小領主達はうちと主従関係を結んでいて、一般には寄子って呼ばれている。王に対する忠誠程じゃないけど、何かあったら助ける代りに、国境に大量の魔物や敵兵が押し寄せたら兵を出して協力するってなってると教わった。
「なめられるなよ?」
「いや、ただの挨拶だよね?」
何でそんなに殺気立つことがあるんだって俺は、思った。
俺なんて領主になるわけでもないし、はっきり言って長兄じゃないんだから、穏便にいきたいです。
「姉上は王宮に戻られるんでしょ?」
「ああ。お前の荷物を下ろしたらな」
俺の荷物なんて、姉上の半分以下なんだから、幾らもかからずに終わった。
「お嬢様。長旅でしたし、少し休まれてはいかがですか?」
「はは……剣を抜くこともなかったし、心配は無用だ」
屋敷から家令やメイド達が出て来て、家令に気遣われて姉上は、一蹴した。
「フィリッツは寮に入るが、何かあったら頼む」
「かしこまりました」
姉上の言葉に家令は大きく頷いて見せた。
いや、何もないと思うけど?
貴族の五男だし、元々平凡な高校生が平凡なまま育ったし?
平穏に騎士になって、まあ領地で兄上達の使いっぱしりになる運命だとしても、幼馴染と旧交を温めたりしたいなって、細やかな希望があるだけだってのに、大げさだなって俺は苦笑を浮かべたのだった。
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