俺の息子から出る白い液体にはあらゆる怪我や病を癒やす、とんでも効果があるらしい

デスクリムゾン田中-エメラルドグリーン-

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第20話、不穏な影

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 どうやら俺は、無事にゴブリンを討伐することに成功したようだ。

「はぁ……はぁ……おぇっ……」

 戦闘時間は多分一分にも満たなかったはずだ。剣を振った回数もそこまで多くない。だがとてつもない疲労感が俺を襲った。流石に立ち上がれない程ではないが、もう一度同じ事をやれと言われても多分できない。

「あんた、思ったよりもやるじゃない! 見直したわ! ゴブリンが一体だけだったとは言え、初めての戦闘でここまで動けたら上等よ。正直もっと動けないと思ってたわ。」

「ザーメンさん、お疲れ様です。カッコよかったですよ。」

 ルビサファ姉妹が俺の元までやってきた。褒められるのは悪い気がしないが、正直今は素直に喜べる状況じゃなあない。初めての肉を斬る感触、ゴブリンの悲鳴、目の前に転がっているゴブリンの死体。今にも吐きそうだが、ギリギリの所で我慢する。こんな程度でいちいち吐いていたら、これから先身が持たないだろう。

「大丈夫? ほら、手を貸しなさい。」

「す、すまん……」

 ルビーが俺に向かって手を差し伸べてきたので、俺はその手を取って何とか立ち上がった。初めてのゴブリン退治は成功だ。一対一だったからギリギリ何とかなった。だが多分複数体の同時に相手するのは、今はまだ無理だ。

「色々と問題点はあるけど、とりあえずは合格って所ね。安心しなさい。あんたは自分が思っている以上に戦える男よ。それだけ戦えるんなら、見込みが全然ないわけじゃないと思うわ。」

「そうですよ。私なんてゴブリンを一人で倒せるようになるまで、三日間程かかりましたから。ザーメンさんは絶対に私よりも早く、ブロンズまで上がることができると思います!」

 ルビサファ姉妹は俺の事を励ましてくれている。これが仮にお世辞だとしても、ここか素直に受けとっておくべきだろう。

「……はぁ……あ、ありがとう……ふーっ……」

 ようやく息も整ってきた。それにしても、この俺がゴブリンを一人で討伐できたのか。確かに自分で思っていたよりはまだ、戦うことができるのかもしれないな。

「……それで、これからどうするんだ?」

「そうねぇ、できればもう何体かと戦っておきたい所だけど……分かってるからそんな顔しないでよ。流石に今日はこれ以上の戦闘は無理そうだから、一旦町に戻りましょうか。」

 よかった……もしも、もう何体か討伐しようなんて話になったら、多分無傷じゃ済まなかったはずだ。最悪怪我を負っても俺の精液で何とかなるとは思うが、正直自分の精液を自分に使うなんてあまりやりたくはない。そういう意味でも、早く町に帰ってゆっくりしたい。

「とりあえずあんたを無事町まで送り届けたら、私達は別の場所でモンスター退治でもしましょうか。」

「そうですね。少しでもお金は欲しいですし。」

 俺を町まで送り届けた後、ルビサファ姉妹はまた外に出るようだ。何とも申し訳ない話だが、流石に一人で帰るとは言えない。例え町まで数十分程度の距離だとしても、俺一人で帰るのは危険過ぎる。

「じゃあとりあえず一旦、町に戻りましょうか。」

「あぁ、すまないな。」

「謝罪なんてしなくても大丈夫ですよ。私達はパーティーなんですから。」

 もしかしてこの二人は、女神か何かか? こんな俺に、ここまで優しくしてくれるなんて。いくら二人の危機を救ったとは言え、ここまで至れり尽くせりしてもらってもいいのだろうか。

 ……ハッ!? もしかして二人は俺の事が……なーんてな。そんなわけはない。命救った程度で惚れられるなんて、そんな簡単な話があるわけはない。作り話じゃああるまいし。

 色々と考えながら歩くこと数十分、町が見えてきた。あれからモンスターと遭遇することもなく、比較的平和に町近くまでたどり着くことができた。これで一安心だな。町に戻ったらとりあえず飯を食って、それから……

「……ねぇ、何か町がいつもより騒がしくないかしら……?」

「……そうですね。何やらいつもと雰囲気が違うような気がします。」

「そうよね。これは……もしかして叫び声?」

「……どうやらそのようです。特に、男性の悲鳴が多く聞こえる気がします。」

 とか何とか考えていたら、二人が何やら不穏な事を言いだした。俺は特に何も感じない。まだ町まではそこそこ距離があるし、俺の五感は人より優れているなんて事もないからな。股間は優れているかもしれないが(爆笑)。

「何か嫌な予感がするわね……町まで急ぎましょう!」

「はい! 姉さん!」

「え? え?」

「ザーメンさん、私と姉さんは一足先に町へ戻ります! 今は周囲に敵の気配もないので、ザーメンさんはここで待機していてください! 町の様子を確認したらすぐに戻ってきますので!」

 そう言ってルビサファ姉妹は走り去ってしまった。いくら周囲に敵の気配がないと言われても、こんな所に一人でいるのは結構こわい。できれば早く戻ってきてね?

 そしてルビサファ姉妹を待つこと数分、姉妹が血相を変えて戻ってきた。一体何があったと言うんだ。

「……オークが……! 雌のオークの集団が、町を襲っています!」
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