高遠の翁の物語

時は戦国、信州諏方郡を支配する諏方惣領家が敵に滅ぼされた。伊那郡神党の盟主、高遠の諏方頼継は敵に寝返ったと噂されるも、実際は、普通に援軍に来ただけだった。
頼継の父と祖父が昔、惣領家に対して激しく反抗したことがあったため、なにかと誤解を受けてしまう。今回もそうなってしまった。
敵の諏方侵略は突発的だった。頼継の援軍も諏方郡入りが早すぎた。両者は何故、予想以上に早く来れたのか? 事情はまるで違った。
しかし滅亡の裏には憎むべき黒幕がいた。
惣領家家族のうち、ひとりだけ逃走に成功した齢十一歳の姫君を、頼継は、ひょんなことから保護できた。それからの頼継は、惣領家の再興に全てを捧げていく。
頼継は豪傑でもなければ知将でもない。どちらかといえば、その辺の凡将だろう。
それでも、か弱くも最後の建御名方命直血の影響力をもつ姫君や、天才的頭脳とずば抜けた勇敢さを持ち合わせた姐御ら、多くの協力者とともに戦っていく。
伝統深き大企業のように強大な敵国と、頼継に寝返りの濡れ衣を着せた黒幕が共謀した惣領家滅亡問題。中小企業程度の戦力しか持たない頼継は、惣領家への忠義と諏方信仰を守るため、そしてなによりこの二つの象徴たる若き姫の幸せのため、死に物狂いでこの戦いに挑んでいく。
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