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第二部
21話 初デート
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「真さんって甘いもの好きですか? こないだココア飲んでたし」
「え、まあ好きだけど」
「じゃあ今から食べに行きましょ」
電車に乗って都心へ向かう。大きい駅で降りて、スイーツを売りにしているカフェに入った。
「なんでも好きなもの食べてください」
「お、おい……」
「今日の報酬の俺の取り分から奢ります。あ、パフェとかいいんじゃないですか。すみませーん」
店員を呼んで一番大きいパフェと飲み物を注文する。
「おい、こんなでかいの食うのか?」
「真さんは好きなところだけ食べていいですよ。味に飽きたら残りは俺が食べます」
「お前なあ、保護者じゃないんだから」
真があきれ顔になる。
周囲はほとんど女性客で、一部はこちらを見てひそひそ噂している。
「男同士のカップルかな?」「てかあの人、配信に顔晒してた……」
カシャッと盗撮される音までする。
少し恥ずかしいが、もう慣れたものだ。
頼んだメロンソーダを飲みながら、巨大なパフェを困ったようにつつく真を眺める。
「あんまりじろじろ見るな。恥ずかしい」
「おいしいですか?」
「うまいけど、お前に見られてるとなんか変になりそうだ。味がわからなくなる」
へへ、と笑うとスニーカーで足先をこづかれた。
2人で甘いものをたらふく食べて、カフェを出る。
「うまかったよ。ありがとう」
「まだ終わりじゃないですよ。真さん、この近くに家具の量販店ってありますか?」
「ああ、それなら大通り沿いに……って、家具なんて買うのか?」
「秘密です」
ずんずんと店に入って目当ての物を探す。
寝具コーナーで見つけたのはダブルのマットレスと掛け布団だった。
商品番号を控えて店員を呼ぶ。
「これとこれください」
「ご自宅に発送いたしましょうか?」
「持ち帰りで」
ちょ、ちょっと待て。真が慌てて和樹を隅に引っ張っていく。
「無謀だろ、千葉まであのでかいマット持って帰るつもりか?」
「千葉じゃない、真さんの部屋に持って帰るんです」
真が、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
「またどうして……」
「このあいだ真さんの部屋で寝た時狭かったから」
「わかった、わかったからせめて郵送にしてくれ」
今日一緒に寝たかったのに。和樹がむくれると、「俺の負けだよ」と真がようやく笑った。
寝具は郵送にしてもらって代金を支払い、店を出る。
「真さんのハンカチ汚しちゃったし、次は新しいのを買いに……」
「和樹」
「あ、そうだ、どうせならそのへんで夜食も買って……」
「和樹、こっち見ろ」
両手で頬を挟まれる。びっくりして顔を見つめると、「いったん落ち着け」と諫められた。
「お前ほんとすぐ突っ走る癖あるよな」
「ご、ごめんなさい。俺、デートとかしたことなかったから」
「待て待て、これデートのつもりだったのか?」
そうですけど。答えると、真が顔に手をやった。
「お前のことがたまにわからなくなるよ。俺が悩んでたのが馬鹿みたいだ」
「嫌でしたか?」
言ったそばからずるい聞き方になったと後悔したが、「嫌じゃないよ」と優しい声が返ってくる。
和樹はごくりと唾を飲み込んで言った。
「真さん、俺、いい方に考えたいんです。俺が誘惑したから真さんが俺のことを好きになったんじゃなくて、神様のお導きで俺たちは結ばれたんだって」
「……」
「今日も手をつなぎたいとかずっと考えてたくらい真さんが好きです」
真が赤くなって和樹の顔を手で押さえる。
「ちょっと待ってくれ。本当に恥ずかしいから」
「俺は本当に好きですから」
「わかった、残りは帰って聞くから。路上だぞここ」
はっと周囲を見回すと、じろじろ見ていた通行人たちがさっと目をそらせた。
「帰ろう、和樹」
真が手を差し出してくる。それだけで胸がいっぱいになる。
「……はい!」
叫ぶように答えて手を取った。
「え、まあ好きだけど」
「じゃあ今から食べに行きましょ」
電車に乗って都心へ向かう。大きい駅で降りて、スイーツを売りにしているカフェに入った。
「なんでも好きなもの食べてください」
「お、おい……」
「今日の報酬の俺の取り分から奢ります。あ、パフェとかいいんじゃないですか。すみませーん」
店員を呼んで一番大きいパフェと飲み物を注文する。
「おい、こんなでかいの食うのか?」
「真さんは好きなところだけ食べていいですよ。味に飽きたら残りは俺が食べます」
「お前なあ、保護者じゃないんだから」
真があきれ顔になる。
周囲はほとんど女性客で、一部はこちらを見てひそひそ噂している。
「男同士のカップルかな?」「てかあの人、配信に顔晒してた……」
カシャッと盗撮される音までする。
少し恥ずかしいが、もう慣れたものだ。
頼んだメロンソーダを飲みながら、巨大なパフェを困ったようにつつく真を眺める。
「あんまりじろじろ見るな。恥ずかしい」
「おいしいですか?」
「うまいけど、お前に見られてるとなんか変になりそうだ。味がわからなくなる」
へへ、と笑うとスニーカーで足先をこづかれた。
2人で甘いものをたらふく食べて、カフェを出る。
「うまかったよ。ありがとう」
「まだ終わりじゃないですよ。真さん、この近くに家具の量販店ってありますか?」
「ああ、それなら大通り沿いに……って、家具なんて買うのか?」
「秘密です」
ずんずんと店に入って目当ての物を探す。
寝具コーナーで見つけたのはダブルのマットレスと掛け布団だった。
商品番号を控えて店員を呼ぶ。
「これとこれください」
「ご自宅に発送いたしましょうか?」
「持ち帰りで」
ちょ、ちょっと待て。真が慌てて和樹を隅に引っ張っていく。
「無謀だろ、千葉まであのでかいマット持って帰るつもりか?」
「千葉じゃない、真さんの部屋に持って帰るんです」
真が、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
「またどうして……」
「このあいだ真さんの部屋で寝た時狭かったから」
「わかった、わかったからせめて郵送にしてくれ」
今日一緒に寝たかったのに。和樹がむくれると、「俺の負けだよ」と真がようやく笑った。
寝具は郵送にしてもらって代金を支払い、店を出る。
「真さんのハンカチ汚しちゃったし、次は新しいのを買いに……」
「和樹」
「あ、そうだ、どうせならそのへんで夜食も買って……」
「和樹、こっち見ろ」
両手で頬を挟まれる。びっくりして顔を見つめると、「いったん落ち着け」と諫められた。
「お前ほんとすぐ突っ走る癖あるよな」
「ご、ごめんなさい。俺、デートとかしたことなかったから」
「待て待て、これデートのつもりだったのか?」
そうですけど。答えると、真が顔に手をやった。
「お前のことがたまにわからなくなるよ。俺が悩んでたのが馬鹿みたいだ」
「嫌でしたか?」
言ったそばからずるい聞き方になったと後悔したが、「嫌じゃないよ」と優しい声が返ってくる。
和樹はごくりと唾を飲み込んで言った。
「真さん、俺、いい方に考えたいんです。俺が誘惑したから真さんが俺のことを好きになったんじゃなくて、神様のお導きで俺たちは結ばれたんだって」
「……」
「今日も手をつなぎたいとかずっと考えてたくらい真さんが好きです」
真が赤くなって和樹の顔を手で押さえる。
「ちょっと待ってくれ。本当に恥ずかしいから」
「俺は本当に好きですから」
「わかった、残りは帰って聞くから。路上だぞここ」
はっと周囲を見回すと、じろじろ見ていた通行人たちがさっと目をそらせた。
「帰ろう、和樹」
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