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第二部
22話 3分クッキング
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あたりはもう暗い。真の最寄り駅で降りたあたりで、急に恥ずかしくなってきた。
また突っ走ってしまった自覚はある。散々連れまわして路上での愛の告白。それから……。
急に立ち止まった和樹の方を真が振り返る。
「どうした?」
「今からヤるのかなって思ったら……」
呆れられるかと思ったが、真は笑い出した。
「お前の恥ずかしがる基準がわからん」
真は和樹の手を引いて自宅アパートに引き入れると、「あっためるからその辺座ってな」と言ってエアコンをかける。
布団の脇に体育座りをして冷えた両手を息で温める。冷たい床で和樹がもじもじしていると、真が隣にしゃがみこんだ。
「どうした?」
「いや、真さんの部屋に来たんだなあって実感してたところです」
「ドアに押し付けられてキスされて玄関セックスみたいな流れ、期待した?」
「……はい」
顔がかあっと熱くなる。
「20代後半に入ったくらいからそういう情緒的な行動しなくなったな。俺たちには十分時間があるんだから、ゆっくりな」
「すみません、俺ばっかり」
真と比べると自分の振る舞いが全部子どもみたいだ。
真が笑って立ち上がる。
「上着脱ぎな。かけといてやるよ」
もぞもぞとダウンジャケットを脱いで手渡す。
コートを脱いだ真のシャツの袖から細い包帯で巻かれたガーゼが見えてぎょっとした。
「え、怪我」
「ああ、これか。ちょっとな」
「もしかして、俺がひっかいちゃいました?」
慌てて真に駆け寄った。
「いや、やったのは狐だから」
「そんな……やっぱり半分くらい俺のせいじゃないですか」
「この仕事は生傷が絶えないからな。気にすんな」
頭を撫でるために伸びてきた真の腕をそっと取って、手を握る。
「責任取ります」
「え?」
「俺に真さんのお世話をさせてください!」
* * *
真をユニットバスのバスタブの中にしゃがませ、自分はトイレの側に立って真の頭をシャンプーで洗う。
「なんか恥ずかしいなこれ」
「怪我人はおとなしく洗われててください」
温めたシャワーで頭を流し、怪我した腕に気を使いながら、古いスポンジで体をごしごし洗う。
「気持ちいいですか?」
「甲羅掃除されてるウミガメの気分だ」
真の文句に笑いながら、お湯で背中をきれいに流した。
「拭きますから立ってください」
「拭くくらい俺がやるって。というか、お前また突っ走ってないか」
タオルを奪われてはっとする。
「ごめんなさい」
「いいよ。部屋行こうぜ」
「でも、俺も風呂入らないと」
服を脱ぐ手を真に止められる。
「お前はいいよ。どうせヤったら後で入るんだし」
「でも、お尻を洗わなきゃいけないので」
数拍唖然としたように固まった跡、真が「はあ?」と言う。
「自分でお尻もほぐしたんです。だからその、今日はいれられると思います」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
真がいったん止めに入る。
「まじで言ってる?」
うなずくと、真が頭を抱えた。
「『はい、こちらが拡張後の尻です』って、料理番組かよ……」
「えへ」
「えへじゃありません。一緒にじっくり準備するつもりだったのに」
真が困ったように笑って、和樹の頭をわしわし撫でた。
「わかった、待ってる」
また突っ走ってしまった自覚はある。散々連れまわして路上での愛の告白。それから……。
急に立ち止まった和樹の方を真が振り返る。
「どうした?」
「今からヤるのかなって思ったら……」
呆れられるかと思ったが、真は笑い出した。
「お前の恥ずかしがる基準がわからん」
真は和樹の手を引いて自宅アパートに引き入れると、「あっためるからその辺座ってな」と言ってエアコンをかける。
布団の脇に体育座りをして冷えた両手を息で温める。冷たい床で和樹がもじもじしていると、真が隣にしゃがみこんだ。
「どうした?」
「いや、真さんの部屋に来たんだなあって実感してたところです」
「ドアに押し付けられてキスされて玄関セックスみたいな流れ、期待した?」
「……はい」
顔がかあっと熱くなる。
「20代後半に入ったくらいからそういう情緒的な行動しなくなったな。俺たちには十分時間があるんだから、ゆっくりな」
「すみません、俺ばっかり」
真と比べると自分の振る舞いが全部子どもみたいだ。
真が笑って立ち上がる。
「上着脱ぎな。かけといてやるよ」
もぞもぞとダウンジャケットを脱いで手渡す。
コートを脱いだ真のシャツの袖から細い包帯で巻かれたガーゼが見えてぎょっとした。
「え、怪我」
「ああ、これか。ちょっとな」
「もしかして、俺がひっかいちゃいました?」
慌てて真に駆け寄った。
「いや、やったのは狐だから」
「そんな……やっぱり半分くらい俺のせいじゃないですか」
「この仕事は生傷が絶えないからな。気にすんな」
頭を撫でるために伸びてきた真の腕をそっと取って、手を握る。
「責任取ります」
「え?」
「俺に真さんのお世話をさせてください!」
* * *
真をユニットバスのバスタブの中にしゃがませ、自分はトイレの側に立って真の頭をシャンプーで洗う。
「なんか恥ずかしいなこれ」
「怪我人はおとなしく洗われててください」
温めたシャワーで頭を流し、怪我した腕に気を使いながら、古いスポンジで体をごしごし洗う。
「気持ちいいですか?」
「甲羅掃除されてるウミガメの気分だ」
真の文句に笑いながら、お湯で背中をきれいに流した。
「拭きますから立ってください」
「拭くくらい俺がやるって。というか、お前また突っ走ってないか」
タオルを奪われてはっとする。
「ごめんなさい」
「いいよ。部屋行こうぜ」
「でも、俺も風呂入らないと」
服を脱ぐ手を真に止められる。
「お前はいいよ。どうせヤったら後で入るんだし」
「でも、お尻を洗わなきゃいけないので」
数拍唖然としたように固まった跡、真が「はあ?」と言う。
「自分でお尻もほぐしたんです。だからその、今日はいれられると思います」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
真がいったん止めに入る。
「まじで言ってる?」
うなずくと、真が頭を抱えた。
「『はい、こちらが拡張後の尻です』って、料理番組かよ……」
「えへ」
「えへじゃありません。一緒にじっくり準備するつもりだったのに」
真が困ったように笑って、和樹の頭をわしわし撫でた。
「わかった、待ってる」
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