22 / 22
第二部
22話 3分クッキング
しおりを挟む
あたりはもう暗い。真の最寄り駅で降りたあたりで、急に恥ずかしくなってきた。
また突っ走ってしまった自覚はある。散々連れまわして路上での愛の告白。それから……。
急に立ち止まった和樹の方を真が振り返る。
「どうした?」
「今からヤるのかなって思ったら……」
呆れられるかと思ったが、真は笑い出した。
「お前の恥ずかしがる基準がわからん」
真は和樹の手を引いて自宅アパートに引き入れると、「あっためるからその辺座ってな」と言ってエアコンをかける。
布団の脇に体育座りをして冷えた両手を息で温める。冷たい床で和樹がもじもじしていると、真が隣にしゃがみこんだ。
「どうした?」
「いや、真さんの部屋に来たんだなあって実感してたところです」
「ドアに押し付けられてキスされて玄関セックスみたいな流れ、期待した?」
「……はい」
顔がかあっと熱くなる。
「20代後半に入ったくらいからそういう情緒的な行動しなくなったな。俺たちには十分時間があるんだから、ゆっくりな」
「すみません、俺ばっかり」
真と比べると自分の振る舞いが全部子どもみたいだ。
真が笑って立ち上がる。
「上着脱ぎな。かけといてやるよ」
もぞもぞとダウンジャケットを脱いで手渡す。
コートを脱いだ真のシャツの袖から細い包帯で巻かれたガーゼが見えてぎょっとした。
「え、怪我」
「ああ、これか。ちょっとな」
「もしかして、俺がひっかいちゃいました?」
慌てて真に駆け寄った。
「いや、やったのは狐だから」
「そんな……やっぱり半分くらい俺のせいじゃないですか」
「この仕事は生傷が絶えないからな。気にすんな」
頭を撫でるために伸びてきた真の腕をそっと取って、手を握る。
「責任取ります」
「え?」
「俺に真さんのお世話をさせてください!」
* * *
真をユニットバスのバスタブの中にしゃがませ、自分はトイレの側に立って真の頭をシャンプーで洗う。
「なんか恥ずかしいなこれ」
「怪我人はおとなしく洗われててください」
温めたシャワーで頭を流し、怪我した腕に気を使いながら、古いスポンジで体をごしごし洗う。
「気持ちいいですか?」
「甲羅掃除されてるウミガメの気分だ」
真の文句に笑いながら、お湯で背中をきれいに流した。
「拭きますから立ってください」
「拭くくらい俺がやるって。というか、お前また突っ走ってないか」
タオルを奪われてはっとする。
「ごめんなさい」
「いいよ。部屋行こうぜ」
「でも、俺も風呂入らないと」
服を脱ぐ手を真に止められる。
「お前はいいよ。どうせヤったら後で入るんだし」
「でも、お尻を洗わなきゃいけないので」
数拍唖然としたように固まった跡、真が「はあ?」と言う。
「自分でお尻もほぐしたんです。だからその、今日はいれられると思います」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
真がいったん止めに入る。
「まじで言ってる?」
うなずくと、真が頭を抱えた。
「『はい、こちらが拡張後の尻です』って、料理番組かよ……」
「えへ」
「えへじゃありません。一緒にじっくり準備するつもりだったのに」
真が困ったように笑って、和樹の頭をわしわし撫でた。
「わかった、待ってる」
また突っ走ってしまった自覚はある。散々連れまわして路上での愛の告白。それから……。
急に立ち止まった和樹の方を真が振り返る。
「どうした?」
「今からヤるのかなって思ったら……」
呆れられるかと思ったが、真は笑い出した。
「お前の恥ずかしがる基準がわからん」
真は和樹の手を引いて自宅アパートに引き入れると、「あっためるからその辺座ってな」と言ってエアコンをかける。
布団の脇に体育座りをして冷えた両手を息で温める。冷たい床で和樹がもじもじしていると、真が隣にしゃがみこんだ。
「どうした?」
「いや、真さんの部屋に来たんだなあって実感してたところです」
「ドアに押し付けられてキスされて玄関セックスみたいな流れ、期待した?」
「……はい」
顔がかあっと熱くなる。
「20代後半に入ったくらいからそういう情緒的な行動しなくなったな。俺たちには十分時間があるんだから、ゆっくりな」
「すみません、俺ばっかり」
真と比べると自分の振る舞いが全部子どもみたいだ。
真が笑って立ち上がる。
「上着脱ぎな。かけといてやるよ」
もぞもぞとダウンジャケットを脱いで手渡す。
コートを脱いだ真のシャツの袖から細い包帯で巻かれたガーゼが見えてぎょっとした。
「え、怪我」
「ああ、これか。ちょっとな」
「もしかして、俺がひっかいちゃいました?」
慌てて真に駆け寄った。
「いや、やったのは狐だから」
「そんな……やっぱり半分くらい俺のせいじゃないですか」
「この仕事は生傷が絶えないからな。気にすんな」
頭を撫でるために伸びてきた真の腕をそっと取って、手を握る。
「責任取ります」
「え?」
「俺に真さんのお世話をさせてください!」
* * *
真をユニットバスのバスタブの中にしゃがませ、自分はトイレの側に立って真の頭をシャンプーで洗う。
「なんか恥ずかしいなこれ」
「怪我人はおとなしく洗われててください」
温めたシャワーで頭を流し、怪我した腕に気を使いながら、古いスポンジで体をごしごし洗う。
「気持ちいいですか?」
「甲羅掃除されてるウミガメの気分だ」
真の文句に笑いながら、お湯で背中をきれいに流した。
「拭きますから立ってください」
「拭くくらい俺がやるって。というか、お前また突っ走ってないか」
タオルを奪われてはっとする。
「ごめんなさい」
「いいよ。部屋行こうぜ」
「でも、俺も風呂入らないと」
服を脱ぐ手を真に止められる。
「お前はいいよ。どうせヤったら後で入るんだし」
「でも、お尻を洗わなきゃいけないので」
数拍唖然としたように固まった跡、真が「はあ?」と言う。
「自分でお尻もほぐしたんです。だからその、今日はいれられると思います」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
真がいったん止めに入る。
「まじで言ってる?」
うなずくと、真が頭を抱えた。
「『はい、こちらが拡張後の尻です』って、料理番組かよ……」
「えへ」
「えへじゃありません。一緒にじっくり準備するつもりだったのに」
真が困ったように笑って、和樹の頭をわしわし撫でた。
「わかった、待ってる」
0
お気に入りに追加
6
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる