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第二部
20話 食欲・性欲・そして睡眠
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「ああっ、はあ、きもちい……」
今朝の夢より全然気持ちいい。
根元をゆるく抜かれながら舌先で先端を舐められると、快感で脚が伸びそうになる。
「だめだ、脚開け」
「ううっ、あっ、はあっ……」
セーターの裾から手を挿し込まれて乳首をさわさわと撫でられる。乳首を触られている間は下の動きが、下を舐められている間は上の動きが止まりがちになるのでもどかしい。
「どうされたい?」
「もっと、もっとして、あっ、気持ちいい、そこっ」
強い眠気と、飢餓感と、失神しそうなほどの快楽。
「溶けそう……」
「溶けねえよ」
「真さん、キスして、お願い……」
よだれの垂れた口に強引に口づけられて口内をかき回される。少しだけ自分の先走りの味がした。
「ふっ……ん」
「いけそうか?」
「もう少し……あっ、それ気持ちいい」
手の動きが激しくなる。パイプ椅子を倒さんばかりにがたがたと腰が揺れる。
「ああん、あっ、ふうっ、い、いきそう、いくっ……」
どくどくと吐き出す白濁液を、真がハンカチで受け止めた。
「和樹、大丈夫か?」
「はあ、はあ、はあ……お腹すいた」
ガチャっと入口のドアが開く音がして、真が慌てて振り向くと、ビニール袋を持った阿久津が立っていた。
「終わった?」
「おい、まだ入ってくんな」
脱がせた上着で真が和樹の下半身を隠す。
阿久津は意に介さずずんずん近づいて、折り畳みの机にビニール袋を置いた。
「おにぎりとお茶、お菓子も買ってきたよ。あとついでにパンツも」
「ああ……助かる」
「僕は後ろ向いてるからさっさと着替えさせて」
和樹のぐずぐずになった下着を取り換えてやり、おにぎりの包装を剥いて口元に近づける。
「食えるか?」
「うん……」
むにゃむにゃと船をこぎながら、餌付けされるように和樹が食べていく。
「真、その腕」
阿久津に指摘されて自分の腕を見ると、腕に獣にひっかかれたような痕ができていた。
「っ……なんか痛えと思ったら」
「一応後で消毒しようか。妖狐がばい菌持ってるとは思えないけど」
おにぎりを食べ終えた和樹が物欲しそうにちゅぱちゅぱと真の指を舐め、「血の味……」とつぶやく。手の甲や指からも傷がついて少し出血していた。
火花は二人の間で散っていたが、和樹の方に外傷はなさそうで、少しほっとする。
4個目のおにぎりを食べさせている最中に、ついに和樹が寝落ちた。
食べ残しをほおばりながら汚れていない方の手で頭を撫でる。
こんなにもいとおしい。それが加護の影響だなんて到底信じられない。
「今回の狐だけど」
阿久津が真のリュックサックから救急箱を取り出しながら言った。
「欲を食う狐だろうね。和樹くんの三大欲求が強く刺激されたのもそのためだろう」
「憑き物としては下等、狐の中では上位種ってとこか」
阿久津がうなずく。
「でも、ずいぶんと憑き落としが早かったね」
「和樹が言ったんだ。妖姫様に叱られて狐が逃げたって」
「ふーん。妖姫神は獣が嫌いなのかな。相当魅入られているね、和樹くん」
そう聞くといい気はしない。真がむすっとしていると、阿久津がビジネスバッグを持ち上げて、封筒から1万円札を3枚抜き、残りを手渡しで寄越した。
「僕は帰るよ。これ、君たちの取り分」
「すまない」
「会議室は5時まで取ってあるから、時間までに撤収するように。じゃ」
出ていく阿久津を見送って、真は眠る和樹を見下ろした。かなり寝苦しそうだった。
* * *
「う……ん」
目覚めると背中がほかほかあったかかった。
「真さん……うわっ」
壁にもたれて座る真に抱きかかえられるようにずっと寝ていたようだ。
「起きたか。俺もちょっと寝てた」
真がふわあとあくびをする。
「なんでこんな姿勢で……」
「最初は並べた椅子に寝かしてたんだが、寝苦しそうだったから。さっきのこと覚えてるか?」
聞かれて顔がかっと赤くなる。
憑かれた後の記憶は少しだけ残っていた。狐に脳を支配されて、なにか真にひどいことを言った気がする。
目の前に散る火花。それから、その後は……。
「うわあああ」
妄想をかき消すように腕を振った。
「ごめんなさい、俺、こんな場所で真さんにすごいことさせちゃったかも……」
「んー、別にいいよ。俺も求められてうれしかった」
真が和樹の肩に頭を乗せる。
「あの後なんとなくそっけなかっただろ」
「あの後?」
「俺がお前に惚れたのはご加護のせいなんじゃないかって話の後」
そんなつもりはなかったが、確かにそうだったかもしれない。阿久津に借りているガラケーには真の連絡先も入っているが、3日の間なんとなく気が引けて連絡していなかった。
真が和樹の首に顔をうずめる。
「俺たちってなんなんだろうな。お前のことこんなに好きなのに、なんで好きになったのか思い出せねえよ」
真でもネガティブになることってあるんだ、と思う。
好きと言われてうれしい気持ちと、触れ合っているのに寂しい気持ちが入り混じった。
こんなの嫌だ。和樹は思わず立ち上がっていた。
「真さん、行きましょう!」
「え、どこへ?」
真の腕をぐいっと引く。
「俺に任せてください!」
今朝の夢より全然気持ちいい。
根元をゆるく抜かれながら舌先で先端を舐められると、快感で脚が伸びそうになる。
「だめだ、脚開け」
「ううっ、あっ、はあっ……」
セーターの裾から手を挿し込まれて乳首をさわさわと撫でられる。乳首を触られている間は下の動きが、下を舐められている間は上の動きが止まりがちになるのでもどかしい。
「どうされたい?」
「もっと、もっとして、あっ、気持ちいい、そこっ」
強い眠気と、飢餓感と、失神しそうなほどの快楽。
「溶けそう……」
「溶けねえよ」
「真さん、キスして、お願い……」
よだれの垂れた口に強引に口づけられて口内をかき回される。少しだけ自分の先走りの味がした。
「ふっ……ん」
「いけそうか?」
「もう少し……あっ、それ気持ちいい」
手の動きが激しくなる。パイプ椅子を倒さんばかりにがたがたと腰が揺れる。
「ああん、あっ、ふうっ、い、いきそう、いくっ……」
どくどくと吐き出す白濁液を、真がハンカチで受け止めた。
「和樹、大丈夫か?」
「はあ、はあ、はあ……お腹すいた」
ガチャっと入口のドアが開く音がして、真が慌てて振り向くと、ビニール袋を持った阿久津が立っていた。
「終わった?」
「おい、まだ入ってくんな」
脱がせた上着で真が和樹の下半身を隠す。
阿久津は意に介さずずんずん近づいて、折り畳みの机にビニール袋を置いた。
「おにぎりとお茶、お菓子も買ってきたよ。あとついでにパンツも」
「ああ……助かる」
「僕は後ろ向いてるからさっさと着替えさせて」
和樹のぐずぐずになった下着を取り換えてやり、おにぎりの包装を剥いて口元に近づける。
「食えるか?」
「うん……」
むにゃむにゃと船をこぎながら、餌付けされるように和樹が食べていく。
「真、その腕」
阿久津に指摘されて自分の腕を見ると、腕に獣にひっかかれたような痕ができていた。
「っ……なんか痛えと思ったら」
「一応後で消毒しようか。妖狐がばい菌持ってるとは思えないけど」
おにぎりを食べ終えた和樹が物欲しそうにちゅぱちゅぱと真の指を舐め、「血の味……」とつぶやく。手の甲や指からも傷がついて少し出血していた。
火花は二人の間で散っていたが、和樹の方に外傷はなさそうで、少しほっとする。
4個目のおにぎりを食べさせている最中に、ついに和樹が寝落ちた。
食べ残しをほおばりながら汚れていない方の手で頭を撫でる。
こんなにもいとおしい。それが加護の影響だなんて到底信じられない。
「今回の狐だけど」
阿久津が真のリュックサックから救急箱を取り出しながら言った。
「欲を食う狐だろうね。和樹くんの三大欲求が強く刺激されたのもそのためだろう」
「憑き物としては下等、狐の中では上位種ってとこか」
阿久津がうなずく。
「でも、ずいぶんと憑き落としが早かったね」
「和樹が言ったんだ。妖姫様に叱られて狐が逃げたって」
「ふーん。妖姫神は獣が嫌いなのかな。相当魅入られているね、和樹くん」
そう聞くといい気はしない。真がむすっとしていると、阿久津がビジネスバッグを持ち上げて、封筒から1万円札を3枚抜き、残りを手渡しで寄越した。
「僕は帰るよ。これ、君たちの取り分」
「すまない」
「会議室は5時まで取ってあるから、時間までに撤収するように。じゃ」
出ていく阿久津を見送って、真は眠る和樹を見下ろした。かなり寝苦しそうだった。
* * *
「う……ん」
目覚めると背中がほかほかあったかかった。
「真さん……うわっ」
壁にもたれて座る真に抱きかかえられるようにずっと寝ていたようだ。
「起きたか。俺もちょっと寝てた」
真がふわあとあくびをする。
「なんでこんな姿勢で……」
「最初は並べた椅子に寝かしてたんだが、寝苦しそうだったから。さっきのこと覚えてるか?」
聞かれて顔がかっと赤くなる。
憑かれた後の記憶は少しだけ残っていた。狐に脳を支配されて、なにか真にひどいことを言った気がする。
目の前に散る火花。それから、その後は……。
「うわあああ」
妄想をかき消すように腕を振った。
「ごめんなさい、俺、こんな場所で真さんにすごいことさせちゃったかも……」
「んー、別にいいよ。俺も求められてうれしかった」
真が和樹の肩に頭を乗せる。
「あの後なんとなくそっけなかっただろ」
「あの後?」
「俺がお前に惚れたのはご加護のせいなんじゃないかって話の後」
そんなつもりはなかったが、確かにそうだったかもしれない。阿久津に借りているガラケーには真の連絡先も入っているが、3日の間なんとなく気が引けて連絡していなかった。
真が和樹の首に顔をうずめる。
「俺たちってなんなんだろうな。お前のことこんなに好きなのに、なんで好きになったのか思い出せねえよ」
真でもネガティブになることってあるんだ、と思う。
好きと言われてうれしい気持ちと、触れ合っているのに寂しい気持ちが入り混じった。
こんなの嫌だ。和樹は思わず立ち上がっていた。
「真さん、行きましょう!」
「え、どこへ?」
真の腕をぐいっと引く。
「俺に任せてください!」
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