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第二部

14話 甘々ゴールイン

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 玄関に転がる靴が横を向いている。
 壁のでっぱりにハンガーがつるされ、Tシャツとお祓いの装束がかけられている。
 敷きっぱなしの布団が、あのとき、真の部屋でされたあれこれを思い出して顔が熱くなる。

「何考えてんの」

 布団の上に手を引き込まれて膝をつく。

「真さんのことを……」
「俺はここにいるのに?」

 抱かれた腰がくだけて正座するように座った。

 真の目に射貫かれるように見つめられて、耳まで赤くなる。

「嘘みたいだ、真さんがいる」
「そう言っただろ」
「だって……んっ」

 深くキスされて後ろに手をついた。

「悪い、俺もあんまり余裕ない」
 肩をぐいっとひかれて布団の上に四つん這いになる。
 両手の間には真の顔。

「お前からキスして」
 がたがた震える肘をまげて不格好に口づけると、首の後ろを押されてキスが深くなった。
「あんなに突っ走って俺に会いに来たのに今更物怖じするのか?」
「だって、本当に叶うなんて」
「……脱がすぞ」

 霜焼けしそうなほど冷え切った12月の肌を、真の熱い手が溶かしていく。

「お前、ほんと薄着だな。一瞬で裸だ」
「あ、あっためてください」

 一世一代のつもりで甘えてみると、「ん」と返事が返ってきて抱きしめられる。
「俺も真さんの服脱がしていい?」
「あー、俺はいいよ」
「な、なんで?」
「だってお前、三十路の男の裸なんてみたら引くかもしれないだろ」
「引かないよ」

 まっすぐ目を見て答える。引くわけがない。ずっと欲しかったんだ。見たいのは当たり前だ。

「じゃあ好きにしろ」
 真が照れ隠しのように横を向いた。

 寒さと緊張で震える手で一枚一枚服を剥いていく。
 和樹よりやや厚い胸元、少し脂肪の乗った腹筋のライン、

 裏起毛のズボンを脱がすと、既に局部が起ちあがって下着がしっとりしている。 
「たってる……」
「うん」

 真が体を少し起こして肩にキスをする。唇の触れた肌がどうしようもなく熱い。
 思い切って下着ごとずりおろすと、真が和樹と同じ裸になった。

 腕を伸ばして腰に手を這わせようとしたとき、電源コードに刺さったままの真のスマホから間の抜けた通知音が鳴った。

「あ、悪い、ちょっと仕事の電話だ」
「え……」
「すまん。すぐ済ませる」

 真が和樹の腕の間から這うように抜け出して、スマホを取りに行く。

 通知音が火照った頭を現実に引き戻そうとする。
 よく考えたら俺、何してるんだ? 全世界に顔を晒して無理やり押しかけるなんて、どう考えたって迷惑だ。

「あー、もしもし」

 真のけだるげな声に首をすくめる。機嫌が悪そうなのは、行為中に電話がかかってきたからだとわかっている。わかっているのだが、その棘が自分に向いているように思えてしまう。

 両手をぎゅっと握りしめたとき、真が電話口で言った。

「悪い、今日は行けなくなった。うん、そう、恋人。ああ? できたんだよ、たった今。そこまで枯れてねーっつーの。はい、じゃあまた、はい、はーい」

 電話を切った真は、ぽろぽろ泣き出した和樹を見てぎょっとしたようだ。和樹の顎を持ち上げて泣き顔を眺める。

「おい、どうした」
「ううっ……」
「悪い、不安にさせたか?」

 冷たくなった背中をもこもこの掛け布団でくるまれて、そのままぎゅっと抱きしめられた。

「だって、真さん、俺のこと恋人って」
「あー……違った?」
「違わない。違わないけど、俺まだ確認してないよ」
「あー」

 真が和樹を布団ごと畳に押し倒して額同士を接触させる。

「好きだよ。和樹が好き」
「うん」
「俺と恋人になってくれ」
「うん、うん」
「俺はこの通り不完全な人間だ。また不安にさせたらごめんな」
「……うん」
「って、今のはずるい言い方か。なるべくお前を困らせないように努力するよ。気に入らないことがあったら遠慮なく殴ってくれな」

 腕を真の首に絡めると、固くなった局部を押し当ててくる。

「いい雰囲気のところ悪いんだが、続き、してもいいか?」

 真の情欲を感じ取って背筋にぞくぞくと興奮が湧き上がる。

「真さん、俺も真さんに触りたい」
「まいったな。俺も和樹に触りたい」

 互いに顔を見合わせて、ふふっと笑う。

「じゃあ好きなように触ってくれ」
「うん」

 真の性器をぬこぬこ触りながら鎖骨に細かくキスすると、つむじに熱い息が降りてくる。

「和樹、お前はどうされたい?」
「えっ」

 どうされたいと言われましても。全部されたいに決まってる。

「お尻……触ってほしいかも」
「あー、尻はなあ……準備してないだろ。うちにも用意がない」
「えー」
「また追々な。今はこっち」
「あっ!」

 乳首を口に含まれて情けない声を上げた。

「和樹、ちょっと脚閉じてくれ。そうそう」

 太ももの間にぬるっとした感触を感じる。

「うわっ」
「素股ってやつだな。一回やってみたくて」

 真が焦らすように腰をゆする。
 刺激は弱いが視覚への刺激が強い。

「真さん……気持ちいい?」
「気持ちいいけど……正直思ってたほどではないな。それより見た目がやばい」
「ふふっ、俺も同じこと考えてた」

 和樹が笑うと、真もつられるように笑って、互いの性器をこすり合わせるように握る。

「触るぞ」
「んっ」

 強く擦られて腰が揺れる。激しい快楽が下半身と首に昇ってくる。

「待って、真さん、いきそう」
「ん、俺もっ」
「あっ、あっ……!」

 先に達したのは和樹の方だった。
 敏感になった部分に容赦なく打ち付けられるように擦りあげられて、変な声が漏れる。

「っ!……はあ」

 和樹の腹にどろっと精を吐き出して、真が二の腕で汗をぬぐった。
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