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第一部
4話 黒歴史
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「ちょっと、全世界って!?」
「文字通りだよ。とりあえず全部データ化して、SNSとブログサイトと小説投稿サイトに和樹の本名付きで投稿する」
「え、嘘だろ。嘘だよな……?」
戸惑う和樹に真がぐいっと顔を近づける。
「和樹ごめん、俺一個嘘ついたわ」
「嘘……?」
「神様はクリエイティブなものを忌避するって言っただろ。あれが嘘。祠に祀られていたものが本当に嫌うものは、人間の『恥』だ」
とん、と心臓のあたりをつつかれる。視界いっぱいに近づいた真が妖しげに笑った。
「今から和樹には一生分の恥ずかしい思いをさせる。それで怖い神様を退散させる」
ようやく状況を理解して、和樹の顔から血の気がサーっと引いて行った。
複合機がピーガチャガチャと機械音を立てて、和樹の真っ黒な過去を活字に起こしていく。
「この機会、自動でページめくる機能あるんだよ。便利だなあ」
「うるせえ、ほどけよっ」
「待ってる間暇だしほかのやつも読むか」
真が黒いノートを取り上げる。
「へえ、『勇者華月(カヅキ)の冒険』か。もしかして和樹とカヅキをかけてる?」
「わああああっ!」
「この年代の子って自分を投影した主人公にしがちだよなあ。じゃあ一ページ目から音読するぞ」
「あああああっ!」
耳をふさげないのでめいっぱい叫ぶが、それでも真の声はかき消せない。
「へえ、ヒロインなしのバディものか。下っ手だねえ。でも夢がいっぱいつまっててお兄さんいいと思うな」
「やめろおおっ!」
「じゃあ次のノートは……お、ポエムだ」
「嫌だああああっ!」
「あ、そうだ」
真がスマホ画面を見せてくる。
「これ、和樹の裏アカだろ」
和樹の喉が嫌な音を立てた。
間違いなく、それは一番見られたくない裏アカウントだった。
「ざっと読んだけど、お前、好きな子がいるんだな」
「やめろ……」
「好きな子であれこれ妄想するのはいいと思うけど、それをSNSに投稿するのはどうかと思うぞ」
「やめろって……」
「じゃ、一つ一つ読み上げるな」
「やめろよっ!!!」
和樹の芯のある声に、真が一瞬たじろぐ気配がした。
「やめろって言ってんだろうが! そのアカウントだけは絶対に読むな!」
ガタッガタッと椅子が音を立てる。和樹の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
真が慌ててスマホを伏せた。
「ごめんごめん、そこまで言うなら読まないから」
「……」
「とでも言うと思ったか?」
「えっ」
真の声が低くなった。
「俺は和樹が恥ずかしいと思うことならなんだってやるよ。人道に反することもやるし、エロいことだってする。和樹の心が壊れるまで、できる限りのことをな」
真が笑うように目を細める。
もしかして、これ……詰んだ?
「文字通りだよ。とりあえず全部データ化して、SNSとブログサイトと小説投稿サイトに和樹の本名付きで投稿する」
「え、嘘だろ。嘘だよな……?」
戸惑う和樹に真がぐいっと顔を近づける。
「和樹ごめん、俺一個嘘ついたわ」
「嘘……?」
「神様はクリエイティブなものを忌避するって言っただろ。あれが嘘。祠に祀られていたものが本当に嫌うものは、人間の『恥』だ」
とん、と心臓のあたりをつつかれる。視界いっぱいに近づいた真が妖しげに笑った。
「今から和樹には一生分の恥ずかしい思いをさせる。それで怖い神様を退散させる」
ようやく状況を理解して、和樹の顔から血の気がサーっと引いて行った。
複合機がピーガチャガチャと機械音を立てて、和樹の真っ黒な過去を活字に起こしていく。
「この機会、自動でページめくる機能あるんだよ。便利だなあ」
「うるせえ、ほどけよっ」
「待ってる間暇だしほかのやつも読むか」
真が黒いノートを取り上げる。
「へえ、『勇者華月(カヅキ)の冒険』か。もしかして和樹とカヅキをかけてる?」
「わああああっ!」
「この年代の子って自分を投影した主人公にしがちだよなあ。じゃあ一ページ目から音読するぞ」
「あああああっ!」
耳をふさげないのでめいっぱい叫ぶが、それでも真の声はかき消せない。
「へえ、ヒロインなしのバディものか。下っ手だねえ。でも夢がいっぱいつまっててお兄さんいいと思うな」
「やめろおおっ!」
「じゃあ次のノートは……お、ポエムだ」
「嫌だああああっ!」
「あ、そうだ」
真がスマホ画面を見せてくる。
「これ、和樹の裏アカだろ」
和樹の喉が嫌な音を立てた。
間違いなく、それは一番見られたくない裏アカウントだった。
「ざっと読んだけど、お前、好きな子がいるんだな」
「やめろ……」
「好きな子であれこれ妄想するのはいいと思うけど、それをSNSに投稿するのはどうかと思うぞ」
「やめろって……」
「じゃ、一つ一つ読み上げるな」
「やめろよっ!!!」
和樹の芯のある声に、真が一瞬たじろぐ気配がした。
「やめろって言ってんだろうが! そのアカウントだけは絶対に読むな!」
ガタッガタッと椅子が音を立てる。和樹の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
真が慌ててスマホを伏せた。
「ごめんごめん、そこまで言うなら読まないから」
「……」
「とでも言うと思ったか?」
「えっ」
真の声が低くなった。
「俺は和樹が恥ずかしいと思うことならなんだってやるよ。人道に反することもやるし、エロいことだってする。和樹の心が壊れるまで、できる限りのことをな」
真が笑うように目を細める。
もしかして、これ……詰んだ?
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