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第5話 どうやら僕はメイドさんの着せ替え人形に成り下がってしまったようです
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「なんで僕はドレスを着せられているんでしょうか……」
黒に近い青を基調とした布地にフリルが過剰積載された可愛らしいデザイン、挙句頭にはカチューシャを添えられている。不愉快極まりなかったが、されるがままに服を脱がされ気づいたらこんな格好にされていた。これは俗に聞くゴシックロリータという奴だろうか? 仕立てを担当したメルはどこか誇らしげに厳かに口調で、
「残念ですがコヨミ様がもともと着ていらしゃった戦闘服は洗いに出してしまい現在着用することはできません。加えて主様との面会を控えておりますので、それ相応の服をご用意した次第でございます」
「そういう問題じゃなくて、せめてフリフリの付いてない服を持ってきてもらえませんか? 僕は男ですよ、オ・ト・コ」
メルは困ったものだと言いたげに眉をひそめると、コヨミの姿を頭の先から足の先まで嘗め回すように観察した。
「大変申し訳にくいのですが、コヨミ様はおそらくダンジョンで頭を強く打たれたのでしょう。そうでなければこんなにも可愛いらしいご自身のことを下賤な漢などと、卑下するはずもございません。あぁ、どこかに良い薬師はいないのでしょうか」
まるで無理難題を突き付けられているかのように頬に手を当て考こむメルヴィーにコヨミの額に青筋が浮かんだ。
糞ぉ、どいつもこいつも僕のことを女扱いしやがって、今に見えてろよ。二人っきりになったその乳もみしだいてやるんだからな。ぐぬぬぬぬぅ。
「あ、あの、メルヴィー先輩。ちょっとだけでいいのでコヨミさんのことぎゅっと抱きしたいのですが構いませんか?」
着付けの手伝いをしたシノが何やら不吉なことをメルと話していた。
「こらっ! シノ駄目ですよ行儀が悪い」
おぉ、さすが先輩。部下の教育がしっかりしているなぁ、これで僕のことを男だと認めてくれたのなら全然言うこともないんだけれど。
「そういう行為に及ぶときには私ではなく、ちゃんと本人に直接許可をいただかなくてマナー違反にあたります。ですが今回はばかりはコヨミさんご自身の判断力がいろいろと低下している御様子なので代わりに私が許可を出します。思う存分コヨミさんを愛でて脳に刺激を与えてあげてください。いつの時代も失った記憶を取り戻す方法は人の愛情だと決まっていますからね」
「えっ!?」嘘、何それ聞いてない……。
メルからまさかの手の平返しを喰らったコヨミが硬直していると、後ろからムギュ~っ、という可愛らしい鳴き声と共に伸びてきたシノ腕に拘束されてしまっていた。
「コヨミさん可愛いですぅ。プリティ~ですぅ。はあぁ、私もコヨミさんみたいにこんな素敵なドレスが似合うレディーに生まれたかったです」
大丈夫、シノさんは絶対この服に合うから代わりに着て頂戴お願い。それと早く離れてください。このふわふわした感覚はお酒飲み過ぎて倒れる前と良く似ている気がする。あぁもう駄目、眩暈がする……。
身体に力が入らなくなり、コヨミがぐったりし始めたところで手の平を打ち鳴らす音と共に救いの声が耳に届いた。
「はい、ストォーップ! もうそろそろホダスティルモ様との約束の時間ですから、シノ、コヨミさんとの逢引はその後になさい。これ以上コヨミさんがふやけてしまったら私がホダスティルモ様に怒らてしまうわ」
「えぇ~。も、もうっちょだけ……」
なおも食い下がるシノに、
「駄目です(ニコリ)」
メルの表情は微笑んでいるようにしか見えなかったが、何故だかシノは蛇に睨まれた蛙のように硬直すると顔を引きつらせてゆっくりコヨミから腕を離した。この二人の間には何があったのだろうかとコヨミは湯だったままの頭で想像を巡らせたがそんな頭では碌な答えもでるわけでもなく、メルに連れられてホダスティルモ伯爵の待つ部屋を目指した。
黒に近い青を基調とした布地にフリルが過剰積載された可愛らしいデザイン、挙句頭にはカチューシャを添えられている。不愉快極まりなかったが、されるがままに服を脱がされ気づいたらこんな格好にされていた。これは俗に聞くゴシックロリータという奴だろうか? 仕立てを担当したメルはどこか誇らしげに厳かに口調で、
「残念ですがコヨミ様がもともと着ていらしゃった戦闘服は洗いに出してしまい現在着用することはできません。加えて主様との面会を控えておりますので、それ相応の服をご用意した次第でございます」
「そういう問題じゃなくて、せめてフリフリの付いてない服を持ってきてもらえませんか? 僕は男ですよ、オ・ト・コ」
メルは困ったものだと言いたげに眉をひそめると、コヨミの姿を頭の先から足の先まで嘗め回すように観察した。
「大変申し訳にくいのですが、コヨミ様はおそらくダンジョンで頭を強く打たれたのでしょう。そうでなければこんなにも可愛いらしいご自身のことを下賤な漢などと、卑下するはずもございません。あぁ、どこかに良い薬師はいないのでしょうか」
まるで無理難題を突き付けられているかのように頬に手を当て考こむメルヴィーにコヨミの額に青筋が浮かんだ。
糞ぉ、どいつもこいつも僕のことを女扱いしやがって、今に見えてろよ。二人っきりになったその乳もみしだいてやるんだからな。ぐぬぬぬぬぅ。
「あ、あの、メルヴィー先輩。ちょっとだけでいいのでコヨミさんのことぎゅっと抱きしたいのですが構いませんか?」
着付けの手伝いをしたシノが何やら不吉なことをメルと話していた。
「こらっ! シノ駄目ですよ行儀が悪い」
おぉ、さすが先輩。部下の教育がしっかりしているなぁ、これで僕のことを男だと認めてくれたのなら全然言うこともないんだけれど。
「そういう行為に及ぶときには私ではなく、ちゃんと本人に直接許可をいただかなくてマナー違反にあたります。ですが今回はばかりはコヨミさんご自身の判断力がいろいろと低下している御様子なので代わりに私が許可を出します。思う存分コヨミさんを愛でて脳に刺激を与えてあげてください。いつの時代も失った記憶を取り戻す方法は人の愛情だと決まっていますからね」
「えっ!?」嘘、何それ聞いてない……。
メルからまさかの手の平返しを喰らったコヨミが硬直していると、後ろからムギュ~っ、という可愛らしい鳴き声と共に伸びてきたシノ腕に拘束されてしまっていた。
「コヨミさん可愛いですぅ。プリティ~ですぅ。はあぁ、私もコヨミさんみたいにこんな素敵なドレスが似合うレディーに生まれたかったです」
大丈夫、シノさんは絶対この服に合うから代わりに着て頂戴お願い。それと早く離れてください。このふわふわした感覚はお酒飲み過ぎて倒れる前と良く似ている気がする。あぁもう駄目、眩暈がする……。
身体に力が入らなくなり、コヨミがぐったりし始めたところで手の平を打ち鳴らす音と共に救いの声が耳に届いた。
「はい、ストォーップ! もうそろそろホダスティルモ様との約束の時間ですから、シノ、コヨミさんとの逢引はその後になさい。これ以上コヨミさんがふやけてしまったら私がホダスティルモ様に怒らてしまうわ」
「えぇ~。も、もうっちょだけ……」
なおも食い下がるシノに、
「駄目です(ニコリ)」
メルの表情は微笑んでいるようにしか見えなかったが、何故だかシノは蛇に睨まれた蛙のように硬直すると顔を引きつらせてゆっくりコヨミから腕を離した。この二人の間には何があったのだろうかとコヨミは湯だったままの頭で想像を巡らせたがそんな頭では碌な答えもでるわけでもなく、メルに連れられてホダスティルモ伯爵の待つ部屋を目指した。
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