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二章
38.約束だぞ
しおりを挟む大河にお願いなんて考えたこともなかった。妹みたいと言っても俺がこいつに頼ってばかりだ。大河は何でもそつなくこなす上に世話焼きで少し我儘なところを除けば非の打ち所がない完璧人間だ。俺もそれに甘えて多少の罪悪感はありつつも頼ってしまっていた。それもあって少し距離を置いていたのかもしれない。
「んーーーー、それじゃあ俺ん家でゲームするってのはどうだ?」
特にこれといったお願いも思いつかないし無難にこれが良さそうだ。もともとゲームの遊び相手が欲しかったしちょうどいい機会だ。
「2人きりで?」
「ん?いや、もちろん光も一緒にな」
どうせなら光のやつも呼んで3人で久しぶりに楽しくゲームでもしたい。小さい頃はよく俺の家でゲームをしたりしたが2人とも部活に入ってからは忙しくなってなかなか遊ぶ機会も減ってしまった。
「そ、そうだよね、」
何故か心なしかしょんぼりする大河。大河はもともと活発的で家でゲームするよりも外で遊ぶのが好きな生粋のアウトドア派だ。肌の焼け具合を見ればすぐにわかる。やはり無理強いするのも良くないか。
「やっぱりゲームするのは嫌か?」
「えっ?ぜんぜん!そんなことないよすごく楽しみ!」
「あれ?そ、そうか、それは良かったちょうど最近新しいゲームを買たんだ。今度の週末にでも3人でやろうぜ!!」
「うん、予定空けとく」
「うおー、なんだか楽しくなってきたぞー!!」
久しぶりにみんなでゲームできるなんてすごく楽しみだ。明日にでもお菓子とかジュース買いに行こうかな。ここらにはスーパーもないから山を降りてちょっと遠出しないといけない。久しぶりに自転車でも乗るか。
「どうやら、お二人さん仲直りはできたみたいだな」
おっちゃんが少し酔ってるのか横の塀にもたれかかりながらなんだか嬉しそうに声をかけてくる。話に夢中になりすぎて完全にいることを忘れていた。
「まぁ、おっちゃんのおかげでなんとかなったありがと、」
「おいおい、言うようになったなこのー!」
「ちょっ、おっちゃん!」
そう言いながら俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくる。髪の毛が絡まってシャリシャリと音を立てる。髪型が崩れるのになぜだか嫌だとは感じずむしろ心地いいぐらいだ。
「あっ、やべ、俺そろそろ家に帰らないと」
ふと周りを見ると夕日も落ちかけていて周囲はすでに薄暗くなってきていた。門限などはないが家族が心配するだろうし早く帰ろう。
「もうこんな時間か風呂を沸かさないとな、じゃあ、葉親父さんにもよろしく言っといてな」
「うん、わかった」
「じゃあな、大河はゲームの約束忘れるなよー!」
「はいはい」
急いでおっちゃんの家を後にする。後ろを振り返ると家が見えなくなるまで大河が手を振っているのが見えた。
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