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二章
35.そばに、、
しおりを挟むそれは一瞬の出来事だった。瞬きのためにまぶたを閉じたと同時に腹部に凄まじい衝撃を感じた。まるで大型トラックに正面から突撃されたような感覚だ。痛みのせいかはたまた衝撃で脳を揺らされたのか一瞬気を失いそうになる。
「なんで、会いに来てくれんかったん!!」
朦朧としている意識を覚ましたのは大河の声だった。山中に響き渡るその声はおっちゃんによく似ていて鼓膜が割れそうな声量だ。親子揃って拡声器かっての。
「急にどうした?」
全く予想していなかった言葉に面を食らう。そっと大河の顔を見るとおでこの辺りが少し赤くなっている。それによく焼けた大河の頬を煌めく特大の涙粒が流れ落ちる。さっきのは頭突きか。そりゃ痛くて涙も出るわけだ。俺も痛かったけど。
「ちがう!葉ここずっと会いにもきてもくれない、、!」
「なんだ、そんなことか、」
「葉のばか!アホ、おたく、カッコつけ、、」
「仕方ないだろ、お前は朝練とか部活で忙しいんだし邪魔したら悪いと思ったんだよ、」
頭をかきバツが悪そうに答える。大河は学校でも有名な陸上部員で人気者だ。できることなら一緒に遊びたいけれど俺と大河は月とすっぽんみたいな存在で眩しく見え後ろめたさがあったのかもしれない。小さい頃はこんなこと考えたこともなかったのにな、あの頃はただ毎日遊ぶことだけを考えていられたのに。
「そんなの、、関係ない!」
「関係なくはないだろ、俺なんかとつるんでるの見られたら、、」
「別にいい!」
「お前はよくても俺は気にするんだよ、」
2人で押し問答を続けているとおっちゃんが特大の酒瓶片手にのそのそと家から出てきた。近づいてくるとすごく酒の匂いが漂ってくる。夕方からそんなによく飲むなぁ。
「おいおい家の中まで聞こえてきたぞ、どうした?」
「大河のやつが、、」
「葉だって、、!」
「うーん、そうかそうかぁ、だったら」
おっちゃんは話を聞かずとも何かを察して何かいい解決案でもあるかのように口を開く。俺はそれになんだか嫌な予感を感じた。
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