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二章
30.時を超える出会い
しおりを挟むしかし、意図は読めないが言われてみれば確かにそうだった気もする。10年近くも前のことだから曖昧だが俺と光が初めて会ったのはたしか家から少し離れた山の中だったはずだ。
「そのーあれだ、あの時は、ありがとな」
少し照れくさそうに顔を赤らめながら礼を言う光。何だかららしくないその姿にこっちまで小っ恥ずかしくなる。
「いやいや、別にたいしたことはしてねぇよ」
たしか、俺は小さい頃いつも1人で山に入って探検ごっこをしていた。田舎も田舎の俺の家の近くには同い年の遊べるような友達なんてほとんどおらず1人でよくに山に入って虫を捕まえたり植物を観察したりしていた。
あの日もいつものように探検家気分で山を散策していると何処からともなく泣き声が聞こえてきてきたのを覚えている。不思議に思った俺は声の方へと進み森を抜けた。すると木の麓にボロボロの服をした子が泣いていた。
「えっと、君、大丈夫?」
「、、、、大丈夫じゃない、」
顔を涙でぐしゃぐしゃに濡らす子。同い年ぐらいだろうか。背丈は少し俺より小さそうだ。こんな子は見たことがない。短パンに半袖だが細身だし女の子だろうか。
(……うーん、困ったなぁここら辺の子ではなさそう、迷子かな。ひとまず暗くなる前に山を降り他方が良さそう、)
「まぁ、とりあえず山から出よう?」
「う、ん」
震えるその子の手を引きながら険しい山道を下山する。相当怖い思いをしたのだろう。それにしても何でこんな山の中に1人でいるのか。まぁ、人のことは言えないけど。
「ところで名前聞いてなかったな、名前は?」
「こ、こう、、」
「『こう』?いいねーかっこいいじゃん!俺は『よう』って言うんだけどなんだか似てるな俺たち」
「う、うん、!」
少し安心したのか『こう』の顔には少しだけ笑顔が浮かんでいた。山道に慣れてない『こう』を庇いながらできるだけ緩やかな道を選んでいると遠回りになってしまった。それで山から出る頃には辺りは真っ暗だった。田舎の真っ暗ってのは本当に何も見えない灯りってものがないから星灯と月明かりに頼るしかない。
「うーん、もう暗いし俺の家にくる?」
「そうする、、」
その日は俺の家で一緒に寝ることにした。親はその日は何も言わずにご飯を用意してくれて次の日には一緒に『こう』を家まで送り届けてくれた。そこからはよく遊ぶようになってずっと一緒ってわけだ。
「あ~、あの頃の光は可愛げがあったなぁ~」
「はぁ?そっちだって同じだろ」
2人は顔を見合わせて笑い出す。まるで先ほどまでのいざこざなんてなかった様に。濁り毛のない透き通った笑い声が教室に溢れる。
「まったく、小さい頃の光は内気で家の中で遊ぶのが好きな女みたいな奴だったってのにいつの間にか運動部なんか入っちゃってさー」
「そういう葉こそ、初めて会った時の勇ましさは何処へやらー」
「なにをー!」
昔話に花を咲かせていると昼飯を終えたクラスメイトがワラワラと教室に入ってきた。午後の授業があることを忘れていた。まずい、このままだと飯抜きで授業を受けることになる。
「やべ、早く飯食べに行かねーと」
「そうだな!」
残された時間で急いで給食を食べるために俺たちは急いでランチルームへと向かう。
「あの、今日は心配してくれたのについ当たる様なこと言ってごめんな」
ほんの少しだけまだ照れ臭いが自然とごめんと言える。まるでさっきまでのイライラも変なプライドもどっかに行ってしまった様に。
「俺のほうこそ強く言いすぎた、すまん」
(……やっぱりなんだかんだ、こいつは良いやつだ)
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