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本編
69,お迎え
しおりを挟む「はじめまして、アンジュ様。私、バスカルヴィー様の執事を務めておりますアルフレッドと申します。以後お見知りおきを。『金の竪琴』の皆様をお迎えにあがりました」
「こちらこそはじめまして。わざわざ迎えに来ていただいてすみません」
「いえ、これが私めの役目でございますから」
そう言って微笑むアルフレッドさん。
アルフレッドさんは一言で言うとナイスミドルだ。痩せてるっていうよりは引き締まってるように見える細身の長身。少し三白眼気味のつり目だから少しきついように見えなくもないけど、細い銀縁の丸メガネとすごい柔らかい笑顔がそれを打ち消してる。なんか感動系のヒューマンドラマに出てきそうな雰囲気の人だ。
「お話は変わりますが、皆様武器はどうなさいましたか?」
「さすがに武器を持ってお邪魔するのはどうかと思ったので部屋に置いてきてます」
「そうなのですか、お気遣い感謝致します。ですが主からは、冒険者のことは私には分からないので武器の扱いはアンジュ様方にお任せするように、と申しつかっております。ですので武器は身につけて頂いても構いませんが、いかが致しますか?」
武器を持った人を家に招くなんて、バスカルヴィーさん度胸あるなあ。私はともかく、レベッカたちとは宿屋くらいでしか会ってないよね? そういう私もそれで二回目だけど。そんな人たちを信用できるって凄いな。
「本当かよ? 武器が無いのはどうにも落ち着かなかったんだが……、俺のは槍だから結構場所をとるぞ?」
「ご安心下さい。屋敷の警備の者にも槍を扱う者がいるので、槍をお持ちでも問題はございません」
「そうなのか? んじゃ、お言葉に甘えるとしようかね。お前らはどうする?」
ギルの言葉にレベッカとミリアはギルに武器を持って来てもらうように頼んだ。私は断ったけど。私はナイフがなくてもそわそわしないしね。持ちたい理由が無いし、招かれてる身だからかどうしても遠慮してしまう。
まあ、いざとなったらマジマさんに助けてもらえばいいやって気持ちもあるからなんだけどね。
「では、出発致しましょう」
ギルが戻って来て、みんなの準備が出来たのを見計らってアルフレッドさんが先導してくれる。
うわ、なんだあれ、めちゃくちゃ派手だ。客車は紺色で、そこに金とか銀でごてごてと装飾されてる。馬車なのは分かるけど、あんなのに乗るの?
「すごい立派な馬車ですね。いいんですか、私たちをこれに乗せても」
「当然です。皆様は主のお招きしたお客様なのですから。どうぞお乗り下さい」
アルフレッドさんが開けてくれたドアから中に入る。内装には金とか銀は流石に使われてないけど、四方の角は細い柱みたいになっていて、そこにはすごい細かな彫刻が彫られてる。剣を持った男性、弓を持った男性、杖を持った女性、杯を持った女性の四人だ。
「それでは出発致します」
私たちが乗り込んだのを確認して、アルフレッドさんが馬車を走らせる。
有名な商人のお屋敷とか、その人の家で作られる料理とか、たしかに気にはなるけど気が重いなあ。パーティーも占いもとっとと終わらせてさっさと帰れるといいんだけど、無理だろうなあ……。
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