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本編
58,ハーピーとの戦い
しおりを挟むゼーヴィスはこの子を見てハーピーって言ってた。ハーピーならギルドカードに載ってたから、ある程度の特徴は知ってるけど――
「これは聞いてない!」
ハーピーは絶え間なく羽を飛ばしてきて、攻撃どころか近づく隙もない。運命の輪のおかげで怪我こそしてないけど、完全に膠着状態だ。
どうにかできないかと思って横目でマジマさんを見るけど、彼女も羽を叩き落とすのでいっぱいいっぱいみたいに見える。というか、あんなに動いて剥がれない紙っていったい……。
「あー、これはやっぱりやらなきゃダメなやつっスよね……。嫌だなあ」
そうぼやくと、マジマさんは羽を叩き落としながら、私の隠れてる運命の輪の後ろに入ってきた。
「ちょっと!? せまいせまい!」
「いやー、結構疲れるんスよ、あれ。それはそうとご主人、ちょっと頼みがあるんスけど」
「こんな時に!?」
マイペース過ぎやしないかなマジマさん!? というか、少しずつ押してくるのやめてほしいんだけど! うわあ、かすった! 今羽かすったよ!?
「本気を出す許可をくださいっス。許可する、でも、いいともー、とかでもいんで」
「わかった! 本気出していいよ!」
「ありがとうっス、ご主人」
そう言うとマジマさんは運命の輪の後ろを飛び出して行った。そして、マジマさんの体が燃え上がる。飛んできていた羽は全て燃やされて、灰になって風に巻かれていく。
あまりの光景にハーピーも怯んだのか、羽を飛ばすのをやめて、こちらを伺うように空中に留まる。
「これやるとかなり疲れるんスけどね。このままだと埒が明かないんスよね」
マジマさんが見えなくなるくらい大きかった炎は徐々に収まっていって、燻ってる草むらの真ん中に彼女の背中が見えた。マジマさんは両手両足に炎を纏わせてて、髪の毛が炎になってるみたいだった。
「ご主人はそのままそこにいてくださいっス。すぐに終わらせるっス」
「あ、うん」
そう言ってマジマさんはハーピーに向かって跳んだ。彼女がジャンプするのと同時に彼女の足元が爆発というか、足の炎が弾けて勢いが強まったみたいで、弾丸みたいなスピードでハーピーに肉薄する。そのままマジマさんはかかと落としを放つ。ハーピーは腕を交差して受け止めるけど、当たった瞬間爆発が起きてハーピーは吹き飛ばされた。
体勢を整えることもできずハーピーは地面に叩きつけられた。よろよろと立ち上がって飛ぼうとするけど、翼が変に折れ曲がってるせいで飛び上がれないみたいだった。
「ワタシハ……ワタシハァ!」
ハーピーは叫びながらマジマさんに向かって走り出す。そして地面を抉るほどに強く跳んで、滑空するようにしてマジマさんへ向けて襲いかかった。でもかなり無理矢理動いているようで、全く安定してなくてふらふらしてる。何もしなくても当たらなさそうな突進を、マジマさんは自分からハーピーの前に立って、真正面から受け止めた。
「もう休むっスよ」
ゴオッ、とハーピーを中心に火柱が上がった。ハーピーはその火柱から抜け出そうともがくけど、完全に閉じ込められてるみたいだった。
だんだんとハーピーの動きは鈍くなっていって、徐々に翼の先から炎に溶けるように灰になっていった。
「ワタシハ……アノカタノタメニ……」
ハーピーは最期にそうつぶやくと、火柱の中に消えていった。
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