タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

49,進展

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  手に入るか不安だったけど、貝殻はちゃんと手に入った。しじみみたいな黒い色で、はまぐりくらいの大きさがある。水晶もあるにはあったけど、魔法の触媒だか何かに使うらしくて少し手が届かなかった。
  宿に戻ってすぐ、浄化を始める。カード一枚一枚を塩水で湿らせた布で拭いていく。ごめんね、こんなことになって。プラスチックコーティングのカードだったからか、幸いカードに血が染み付いているようなことはなかった。
  そのあとは貝殻の上でセージを燃やして、また一枚一枚煙をくぐらせる。丁寧に、丁寧に。いつもの感謝と、今回の謝罪の気持ちを込めて。
  これで少しでも浄化できるといいけど……。

「アンジュ、どう?」
「わからない……。カードは無事みたいだけど……」

  とりあえず今できることはやった。あとは繰り返すくらいしか出来ない。流石にビニールなんか用意できないから埋めることも出来ないし。

「それで、ブエル教授とは連絡はとれそう?」
「さっきからやってるけど、何かに阻まれてるみたいな感覚なんだよね。完全に断ち切られてるわけじゃないみたいだけど……」

  そう、タロットカードが汚されてから教授たちと話すことが出来なくなってる。なんとなく教授たちの存在は感じられるけど、言葉までは伝わらない感じ。

「じゃあまだ望みはあるんだね」
「うん、まだなんとかなる。なんとかする」



  それから三日。やり過ぎるのは良くないとは思うけど、毎日タロットカードの浄化を繰り返した。

「……今の感覚!」

  最後のカードを煙にくぐらせた時、今まで覆ってた布を取り払ったみたいな、阻んでたものがなくなる感じがした。

悪魔デビル!」

  そう叫ぶと、私の影から黒い球体が浮かび上がって、たちまちタキシード姿のヒトデ、教授の姿になった。

「心配をかけたね。すまない、レディ」
「ううん、私こそごめんなさい。あんな酷いことから守れなくて」
「なに、気にするな。それに、占術神の祝福を受けたカードだ。あの程度で駄目になるほどヤワじゃない。多少封じられはしたがね」
「そっか……。ありがとう、教授」

  慰めてくれてるのがわかって、少し暖かい気持ちになる。ほっとしたのもあるのか、涙が出て止まらなくなった。

「アンジュ、入るよ」

  部屋に入ってきたレベッカは私の様子と教授を見て察したみたいだった。

「おめでとう、よかったねアンジュ。教授も無事でよかった」
「ありがとうレベッカ」
「ううん。ただ、喜んでるところ申し訳ないんだけど、あんまり良くない報告と、良くも悪くもある報告があるんだけどどっちからがいい?」

  いい報告はないのかあ。まあ、今はタロットカードが無事だったのが一番のいいことだから別に構わないんだけど。

「じゃあ良くない報告からで」
「わかった。あの女のことだけど、特に新しい情報は無し。誰に聞いても口をつぐんでしまう」
「そっか……」

  占いの道具を穢していた女の人。その人の行方をレベッカは探ってくれていた。かなり有名みたいではあるけど、誰も正体を知らない、もしくは言わないから、進展は難しそうだった。

「良くも悪くもある方は?」
「セリゼの森の調査が終わった。森の奥で異変が起きているのは確からしい。そしてその異変はどうも人が関わってるみたいなんだ」
「人が?」
「そう。セリゼの森で人の姿を見たという話が出た。フードとあて布で顔を隠した、ローブを着た者だ」

  心臓が跳ねたような気がした。あいつだ。

「ギルドは協力を頼んできた。どうする?」
「もちろん、協力する。唯一の手がかりだもの」
「そう言うと思って答えておいた。出発は明後日」
「ありがとう」

  占い師の人に今までしてきたことだけじゃなくて、キオウ様やウェアウィードたちのいる森でも何かをしている。ほっとくなんて出来ない。絶対に捕まえて、後悔させてみせる。覚悟しろ。

「……レディ、大丈夫か?」
「うん?  ありがとう、大丈夫だよ。最近はずっと不安だったから、少し疲れてるけど」
「そうか……」
「じゃあ、準備はしておくからゆっくり休んで。これ、二人から差し入れ」
「うん、ありがとう。二人にもよろしく」

  後ろ手に手を振ってレベッカは出ていった。気遣いがありがたい。多分、タロットカードが元に戻らなかったら私は宿にいるように言って、レベッカたちだけで行ってたんだろうな。私の大切な友達、仲間たちだ。
  タロットカードも、仲間も、私が絶対に守るんだ。
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