タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

文字の大きさ
上 下
50 / 97
本編

49,進展

しおりを挟む
 ローズは冨岡と時間を過ごしたいと願いながらも、冨岡が目標に向かって行動していることを悟り、最大限の遠慮を見せたのだ。
 それがお茶をしている数分間だけ、時間をもらうというもの。まさか彼女が我儘な令嬢などと言われていたなんて思えない。いや、元々他人に気を配ることの出来る子だったのだろう。
 それでも両親に構ってもらいたい、という想いがローズを我儘な令嬢へと変貌させていた。
 素直だが素直ではなく、思慮深さゆえに直情的な子なのである。
 冨岡はそんなローズに対し、まるで姪っ子でもできたかのように思い、微笑んだ。

「ははっ、それじゃあ俺が持ってきたお茶を淹れますので、一杯だけお付き合いください。いいですか、ローズ」

 冨岡が言うとローズは、嬉しそうに表情を緩ませてから、それを察されないように唇を尖らせる。

「し、仕方ないわね、トミーは。この国の未来を担う公爵令嬢の時間は安くないのよ。せっかくなら楽しませてもらえるかしら」

 どこか演技がかったローズの口調に合わせて、冨岡はわざとらしく胸に手を当てて頭を下げた。

「仰せのままに」

 そのまま冨岡は自分の持ってきた紅茶を淹れようと、ダルクに目線を向ける。しかしいつの間にか、ダルクは湯を用意し、紅茶を淹れていた。その手際は、紅茶好きと自称する富岡ですら舌を巻くほどであり、口を出す余地などなかった。
 用意された紅茶に口を付けながら、ローズはスキップをするような声で冨岡に話しかける。

「ところでトミー。聞きたいことがあるのだけれど」
「何ですか?」
「その、庶民の方々は恋愛の末に婚姻の契りを結ぶのよね?」
「お見合いとかもありますけど、恋愛結婚も多いでしょうね。少なくとも俺の国ではほとんどそうでした」

 そう答えてから冨岡は、ローズの言葉を深く読み解いた。わざわざ『庶民は』と言うくらいなのだから、貴族は違うのだろう。おおよそ想像はしていたが、やはり貴族は家のために結婚するものらしい。
 そしてそれはローズも同じだ。公爵家令嬢ともなれば、それなりに位の高い貴族と婚姻を結ぶことになる。
 だとしたら、今の答えは考えが足りなさすぎた。一瞬で反省し、ダルクに目を向ける冨岡だが、令嬢に対して過保護である執事は穏やかな表情で立っている。
 問題なかったのだろうか、と考えながら冨岡はローズに視線を戻した。すると彼女は、少し考えてから幾つか段階を飛ばした言葉を放つ。

「トミーは男妾になるつもりはない?」
「ブフッ」

 まさか幼いローズの口からそんな言葉を聞くとは思っておらず、冨岡は紅茶を吐き出してしまった。
 自分の口を拭いながら、恐る恐る問いかける。

「な、何を言ってるんですか、ローズ。お、男め・・・・・・いやいや、そんな言葉どこで学ぶんですか」
「あら、知らないの? 私の趣味は読書なのよ? 最近、暇を持て余したご婦人の中で流行っている小説があるの。熱烈な恋の物語よ。家のための婚姻を定められた令嬢と、立場を持たない庶民の男。二人は秘密の恋をするの」
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

After story/under the snow

黒羽 雪音来
ファンタジー
どーも‼ 南の大陸の魔神でーす‼ その名前の通り‼ 南の大陸における悪役だ‼ この世界には、『大穴』と呼ばれる漆黒の海を中心に、東西南北に大陸が存在する。 それぞれの大陸に悪役の魔神がいて、それぞれの大陸にある聖剣に選ばれた勇者と大陸内で戦っている。 おっと。別に世界征服なんざ考えてないぜ。この戦いは世界を維持する儀式のためだ。 4体の魔神と4人の勇者が織り成す冒険活劇ファンタジー? それも面白そうだが、今回は違う。 それは別の機会があったら、な‼ 舞台は北の大陸。 北の大陸の魔神を、独りで討伐した北の勇者。 しかし、彼に与えられたのは、名誉でも褒美でもなく、無実の罪による処刑だった。 極寒の処刑場にて、勇者は復讐を望んだ。 その時、俺が声をかけたのさ。 「ご所望は復讐かい?」と。 さあさあ皆様‼ どーぞご照覧あれっ‼ これは、ちょ~っとだけ変わった復讐ファンタジー。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...