タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

39,ツーマインド

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「占い……ですか?」
「そう。私は占術神様の加護を持ってるから、ちょっとは当てに出来るよ」
「はあ……」

  うーん、微妙な反応だなあ。やっぱりハズレの加護って言われてるものだし、いい反応が返ってくる期待はしてなかったけど少しへこむ。こんな悩み事に占いなんて、って思われてるのかなあ。悩んでるからこそ占いだと思うんだけどなあ。

「とりあえず準備しちゃうね」

  少し不安定だけど、鞄を机代わりにする。いつか使うかも、と思って買っておいた菫色の布を鞄にかけてと。うん、即席だけどいいんじゃないだろうか。

「エメラちゃんはその役目に何か想いとかある?  その役目を負いたくないとか、逆に頑張りたいとか」
「正直、わからないのです。そのお役目はとても名誉なことです。けれど、私よりよっぽどふさわしい人がいるのではないかとも思うのです」
「なるほど。じゃあ、まずはエメラちゃんの気持ちを占ってみようか」

  気持ちがわからないなら、ツーマインドだね。質問の内容は……、お役目に対しての想い、ってところかな。お役目っていうのが何かはわからないけど、最後のカットで強く願ってもらおう。

「それ、なんですか?」

  エメラちゃんがタロットカードを指して言う。レベッカのときもこんなやり取りしたなあ。

「これはタロットカード。占いの道具だよ」
「占いの……。これは何を占うものなのですか?」
「何を、っていうのは特にないかな。強いていえば人に関わることほとんど全部かな。人の生死とかは無理だけどね」
「これでですか!?」

  なんだかすごい驚かれた。こっちにはそういう占いってないのかな?  水晶占いとかあるかなと思ったんだけど。

「とりあえず、まずはエメラちゃんの気持ちをはっきりさせよう」
「私の気持ちですか」

  エメラちゃんはお役目に対してどう思っているのでしょうか。そう考えながら両手でタロットカードを混ぜる。混ざったと思ったところで一つの山に戻してと。

「それじゃあエメラちゃん。この山を三つに分けて、もう一度山にして。質問を、エメラちゃんがお役目をどう思ってるか教えてくださいって考えながらね」
「は、はい」

  エメラちゃんにカットしてもらったあと、カードを一列に広げる。

「じゃあこの中から二枚選んでね」
「では、これとこれを」

  先に選ばれたカードを上、後のを下って感じでエメラちゃんに見えるように上下に並べる。
  上は月の正位置、下は力の正位置。うーん、これは私が何か言わなくても気持ちとしては大丈夫だったかな?

「これはどういう結果なのでしょう?」
「えっとね、まず上のカードがエメラちゃんが自分で自覚出来てる感情。下が自分でも分かってなかった感情ね」

  指でカードを指しながら話す。真剣な顔で少し前のめりになって話を聞いてるエメラちゃん。ちょっとは興味持ってくれたかな?

「上は月のカード。正位置って言って、上下が正しい向きで置かれてるでしょ。これは不安とか、迷いって意味があるの。特に先のこと、将来のことがわからないことに対してのものだね」
「そうです、その通りです。これから先どうなるか、どうしていいか分からなくて、怖くて……」

  エメラちゃんがじわじわと目に涙を溜めていく。これはかなり思い悩んでたみたいだなあ。

「でもね、心の中ではしっかりとその役目に向き合ってるよ。下は力のカードの正位置。強い意志とか、勇気とかの意味を持つカード。エメラちゃんの心の中には役目に立ち向かう勇気と、それを果たそうって意志があるよ」
「でも、私はそんなに強い人間ではないです。勇気なんて」

  うーん、弱気になっちゃってるなあ。でも、これもタロットカードのいいところ。解釈の仕方はたくさんある。

「月はいつか沈むもの。力は湧き上がるもの。エメラちゃんが今感じてる不安だって、いつかはなくなって、体の中からふつふつと力が込み上がってくるよ」
「そう、でしょうか……」
「うん、きっと大丈夫。改めてそのお役目について考えてみて。それと自分自身に関しても。自分がその役目を負ったら、どんなことをしてどんな人になりたいか。やっぱり何になるかより、何をするかの方が大切だと思うよ」

  私の言葉にエメラちゃんが、はっ、と何かに気づいたような顔をする。これでその役目とかに自信を持って挑戦してくれるといいなあ。
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