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本編
38,焚き火の前で
しおりを挟む戦ってた男の人はクロードさんっていうらしい。街道を馬車で走ってたら、さっきの熊に襲われて馬車が横転。とにかくエメラちゃんたちからは離そうと考えて、馬車から遠ざかったときに私たちが来たみたい。
倒れた馬車は使いものにならなさそうだったから、私たちの馬車で一緒に行くことになった。
「改めてお礼を言わせてほしい。助けてもらった上に馬車にも乗せてもらうなんて」
「気にしないでください。困った時はお互い様ですよ」
マジマさん曰く明日の昼頃には帝国に着くらしいし、馬車の中も広いから三人くらい増えたところで全然問題ないしね。
「しかし、なんだってあんなところにベアボアがいたんだ?」
ギルさんが首をひねる。あれがベアボアだったのか。体は完全に熊だったから、顔が猪なのかな。
確かに不思議だなあ。街道に強い魔物はほとんど出ないって言ってたのに出たんだもんね。ベアボアってセリゼの森の奥に住んでるはずの強い魔物だよね。
「ベアボアは滅多に街道なんて来ないはずだし、来たとしても人を襲うなんてほとんどないのに今回のこれだろう? 少しきな臭いね」
レベッカが眉根を寄せる。人をほとんど襲わないって思ったより温厚なのかな、ベアボア。でも今回みたいに襲ったってことは、何か原因があるよね。きな臭いっていうのはそれについてかな。
「とりあえず、ここで私たちが考えてもあまり意味がないわ。ギルドに報告して、調査してもらいましょう」
ミリアさんの言葉で、ベアボアの話は終わりになった。その後は他愛のない話をしたり、少しだけ手綱を握ったりしてた。日も暮れる頃には御者さんも目を覚まして、エメラちゃんやクロードさんの無事を喜んでた。
落ち着いたところで、野営の準備をして軽い食事をとった。寝る前の、なんとなくまったりした気分で焚き火を見てると、エメラちゃんが近づいてきた。
「アンジュさん、あなたはどうして冒険者になったんですか?」
「私? うーん……。成り行き、かなあ」
元々は何かしらの仕事を探してたけど、レベッカに歳を証明するためにギルドで冒険者登録したからなあ。多分成り行きが一番あってると思う。
「そうなんですか……。成り行きでそんなに立派な冒険者になれるなんて、すごいですね。憧れます」
すごい、なんて言ってくれてるけど、エメラちゃんの顔は暗い。憧れる、ってところが一番の本音かな。
「何か悩み事?」
「そう……、ですね。悩み事です。私も成り行きで役目が決まりそうなのです。ですが、本当にこれでいいのか、とか私なんかに務まるのかと色々考えてしまって。どうしたらいいのだろう、なんて思ってしまって」
うーん、なんだか結構深刻な話みたいだなあ。でも、深刻だからこそ私が手伝えるかもしれない。
「エメラちゃん。そのこと占ってあげようか?」
「え?」
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