タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

文字の大きさ
上 下
32 / 97
本編

31,吊るされた男

しおりを挟む

「があっ!」

  大男の拳を後ろに跳んでなんとかかわす。どうしよう、両手はスクイレル・ラフィーで塞がってるし、魔術師のアルカナの魔法はまだ細かいコントロールが出来ないからレベッカを巻き込みかねない。……結構まずいのでは。

「レディ、他の悪魔を呼んだらどうだ?」

  教授に提案される。それは一応思ったけど……。

「あんまり傷つけないで無力化出来る人っている?」
「その条件だと難しいな」

  だよね。命を奪うとか、大怪我を負わせるとかいう方法で無力化できる人は大勢いるだろうけど、怪我をさせずには厳しいよね。
  とりあえず動けるようにしとかないと。さっきはなんとか避けられたけど、このままじゃいつかやられちゃう。

ストレングス隠者ハーミット

  身体能力の強化と冷静な判断力。とりあえずこれで攻撃は避けられるだろうけど……。

「ぬあぁっ!」

  連続で振られる大男の拳をかわす。最後の大振りに合わせて、カウンターで鳩尾を蹴る。大男は少し怯むけど、やっぱりあんまり効いてないみたい。いくら力が強くなっても、もともとの力が弱いから肉弾戦はできないからなあ。

「うーん、どうしよう」
「随分と、余裕だね、アンジュ!」

  激しく剣をぶつけ合いながらレベッカが言う。そういうレベッカも案外余裕そうだけど。このままだとひたすら体力勝負になりそう。ストレングスのおかげで体力も増えてるから別にそれでもいいんだけど、狐顔の人が何かしてきた時嫌だしなあ。
  できればどうにかしたいけど、リュウセン様に教わったアルカナの中には今使えそうなものは無いし……。直感で分かるとは言ってたけど、特にピンとこないなあ。あ、アルカナを思い浮かべないと駄目とか?

「アンジュ!  割と辛いから早くどうにかして欲しいな!」

  レベッカの叫び的にまだ大丈夫だろうけど、辛いのは本音みたい。あの長髪の人かなり強いみたいだ。急がないと。
  法王、……違う。運命の輪、……じゃない。正義、……でもない。吊るされた男、……これだ!

吊るされた男ハングドマン!」

  私が叫ぶと、どこからともなく麻縄が出てきて大男の腕に絡みつく。麻縄はそのまま大男を後ろ手に縛り上げ、足にも絡みついて空中に逆さに吊るしあげた。

「姫。拙僧の力、存分にお使い下され」
「姫!?」

  教授もマジマさんも私のことを少し恥ずかしい呼び方で呼ぶけど、この人はダントツだ。というか、金髪の司祭みたいな格好してるのになんで姫と拙僧?

「とりあえず、あとの二人もお願いします」
「御意」

  パン、と司祭さんが柏手を打つと、長髪の人も狐顔の人もどこからか現れた縄に縛られて空中に吊るされた。

「レベッカ、大丈夫?」
「ああ、大丈夫。怪我はないよ、ありがとう」
「よかった。それで……どうしよう、これから」

  なんとか抜け出そうともがいている男たち。もがくたびにぷらぷら揺れるのがすごいシュール。んー、まずはこの子のことを聞くところかなあ。スクイレル・ラフィーは男たちが戦えない状況だからか、もう震えてはないけど、逆に動いてもない。じっ、と男たちを見つめてる。

「アンジュ、普通に吊るすことはできない?  このままだと頭に血が上ってしまうよ」
「あ、そうだね。えーと……」
「拙僧のことはロゥと」
「じゃあロゥさん、逆さはやめてあげてください」
「承知」

  ロゥさんが指を鳴らすと、男たちの足の縄が解けるのと同時に体に縄が巻きついた。逆さじゃなくなったけどあれはあれで辛そうだなあ。
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

処理中です...