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本編
9,VSハンマーヘッドラビット
しおりを挟むお店でリュックサックと干し肉とドライフルーツ、火打石、分厚い革のグローブなんかを買って早速出発した。
歩きながら剣葉草のことをギルドカードで見てみると、名前の通りのものらしい。葉は剣のような形をしていて、硬さも同様に剣のよう。素手で触ると大変なことになるから、必ず葉は触らないように、革のグローブなどで手を守って採取すること、だそうだ。薬草で、茹でると柔らかくなる性質をもつ。効能は炎症を抑える湿布薬や塗り薬として使われるらしい。腰痛肩こりにって感じかな。
「……まさかとは思うんだけど、レベッカって最初素手でとった?」
「まさか、私がそんなことをするわけがないだろう」
うん、否定するならちゃんと人の顔見ようね。思いっきり明後日の方向いてても、全く説得力がない。
「そう言えば、今はどこに向かってるの?」
「セリゼの森だよ。剣葉草はそこによく生えてるから」
なるほど、覚えておこう。この先一人で行くことになるかは分からないけど、もしもがあるからね。
「魔物とかは何が出るの?」
「ハンマーヘッドラビットとウェアウィードかな、大体は。奥の方に行けばソードウルフとかベアボアとか強い魔物もいるけど」
なんか名前からして差が過ごそう。ベアボアってクマとイノシシだよね? 絶対強い。大体出てくる魔物はうさぎとウィード? だから大人と子どもくらい差がありそう。まあ私はうさぎにも勝てなさそうだけど。ハンマーヘッドとか言ってるし。見かけたらすぐ逃げてレベッカに任せよう。
「レベッカ、ハンマーヘッドラビットってどんな見た目してるの?」
「ちょうどあんな感じ」
「え?」
レベッカが指さした先を見ると、額と目の周りが黒いうさぎがいた。なんか、ちょっとタヌキみたいで可愛い。
「あれがハンマーヘッドラビット? ちょっと可愛いね」
「そうかな? 微妙だと思うけど」
ハンマーヘッドラビットもこっちに気が付いたみたいで、頭を低く下げて……なんだか威嚇されてる?
「じゃあ、頑張ってみようかアンジュ」
「えっ、何を」
「ハンマーヘッドラビットの討伐」
笑顔でとんでもないこと言い出した! いくらうさぎでもあれ魔物なんだよね? つい昨日まで戦いと無縁だった人に倒すことが出来るわけないって!
「あの黒いところは鉄みたいに硬いから気をつけてね」
「本当に戦わせる気!? 私支援者じゃないの!?」
「支援者でもいざという時は戦うからね。ほら、来るよ」
レベッカの言葉が合図になったかのように、ハンマーヘッドラビットが一直線に私に突っ込んでくる。突っ込んでくるけど……あんまり早くない? 幼稚園児、しかも年少の子が走るくらいしかないと思う。しかも動きが直線的だから、一歩横にずれるだけでも当たらない。
「アンジュー、攻撃しなきゃ終わらないよー」
離れたところで見物してるレベッカが、気の抜けた声をあげる。
やっぱりやらなきゃだめ……? やだなあ。せめて苦しまなきゃいいけど。
腰のナイフを抜いて、うさぎが横を通る時に思いっきり振り下ろす。ころん、と頭が落ちた。
切った感触が無かったのはありがたいけど、見た目がショッキング過ぎる!
「おお、上手いねアンジュ。上出来だよ」
「それはありがとう……」
褒められたけど全く嬉しくない。
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