タロットチートで生き残る！…ことが出来るかなあ

本編

1,召喚されました

「よく来てくださいました勇者様がた。どうか我らをお救い下さい」

  なんだかすごい派手な服を着たおじさんが跪いて頭を下げている。頭に王冠みたいなのをのっけているし王様みたいだなあ。
  周りを見ると、鎧を着た兵士みたいな人とか騎士みたいな人、長い白い髭を蓄えたおじいさんとかメイドさんとか、なんだかゲームの中のキャラクターみたいな人達がたくさん跪いている。近くには見慣れた服を着た人が三人座ってる。スーツを着た男の人、学ランの男の子、赤いフレアスカートに白のニットを着た女の人。この人達の中だと普通の格好が浮いて見えるなあ。

「ちょっと待ってください！  突然なんなんです！？  ここはどこなんですか！」

  さっきスーツを着た男の人が叫ぶ。顔色が悪いなあ、仕事が大変なのかもしれない。ちょっと前過労死とか話題だったもんなあ。

「ここはトリスリア王国、その城の玉座の間です。ただいま我らは魔王率いる魔王軍と戦争状態にあります。ですが、正直に申し上げて戦況は芳しくなく、藁にもすがる思いで神に祈ったのです」

  さっきの王様みたいな格好の人が説明してくれる。いやまあ説明になってないんだけどさ。

「すると、神託が下ったのです。勇者を召喚せよと。三人の勇者様が我らを救ってくださると」

  髭のおじいさんが続けて言う。神託とか言ってるし、神官とかなのかな？  すごいそれっぽいなあ。髭長いし、無駄にゆったりした真っ白のローブ着てるし、杖ついてるし。

「あのー」

  学ランを着た男の子がそろそろと手を上げる。この流れで何か話そうとするなんて凄いなあ。なんか頼りになりそうな雰囲気というか、人前で話すのに慣れてる感じがする。委員長とか生徒会長とかやってたのかな。眼鏡かけてるし。
  ざっ、とみんなの視線が男の子に向く。それに動じることなく男の子は話を続けた。

「今ここに四人いると思うんですが、勇者は三人ですか？」

  ぴしっ、と空気が凍る。四人？  スーツの男の人、女子大生みたいな女の人、学ランの君。三人しかいないじゃないか、驚かせないでほしいなあ、まったく。はっはっは。

「これはどういうことだ！  爺！」
「も、もしや、一般人を巻き込んでしまったのやも知れませぬ……」

  声を荒らげる王様に、狼狽えているおじいさん。なんだか芝居を見てる気分になってきた。迫真の演技だなあ。

「早急に神眼水晶を準備せよ！  どなたが勇者様なのか確認するのだ！」

  王様が命令すると、周囲が慌ただしく動き始める。神眼水晶？  とかいうのの準備は結構大事なのかな。

「皆様方はどうぞこちらへ、準備が整うまでおくつろぎ下さい」

  髭のおじいさんが、いつの間にか用意されている椅子にみんなを促す。スーツの人は落ち着かない様子できょろきょろしながら、男の子は堂々というか落ち着いた様子で、女の人はなんだか少し嬉しそう？  三者三様な感じで椅子に座っていく。

「さあ、貴方様もこちらへどうぞ」

  おじいさんが私に向かって話しかけてくる。全部夢だったー、なんてことはないよねえ……。流石に……。