タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

95,森の罠

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「よく聞けお前達。あの人間どもはあろう事か俺の申し出を断った。それに対して与えるべきものはなんだ?  それは痛みと恐怖だ!  奴らを先回りし魔物をけしかける!  だが決して殺すなよ。忌々しいことだがあれは魔王様に会わせる必要がある」
「はっ!」
「では出発だ!  これより先、少々開けた場所がある!  その奥の林の中に陣を敷く!」

  ダドルを先頭に、魔族の兵を乗せた狼に似た魔物が駆けていく。ダドルの乗る魔物は他の魔物より一回り大きく、額にひし形の宝石のようなものがついていた。

「しかし、馬鹿な小娘だ。ルルリカもあの人間もな」
「まったくです。ダドル様率いる我々を相手にあの程度の人数でどうにかなると思っている」
「まあ少し痛い目を見ればあいつらのような者でも理解するだろう。世の中には逆らってはいけない者がいるとな」

  その後ダドルとその部下達は魔物を走らせ、目的の場所に陣を敷いた。しかし、いくら待ってもルルリカたちを乗せた竜車は現れない。

「一体どうなっているんだ!  あの竜車が通れる道は一つだけだったはずだろう!?」

  痺れを切らして叫んだダドルの元に、先程斥候として送った兵が戻ってきた。

「ダドル様!  やつら、すでに先へすすんでおります!」
「なんだと!?  どういう事だ!」
「どうやら新たに竜車が通れるような道が出来ていたようです。道と言っても木々がない程度で、木の根や石などが多い悪路ですが、竜車が通り抜けることは可能でしょう」
「奴らめ……。その道を知っていたと言うのか……。お前達!  急いで出発だ!  奴らを追うぞ!」
「はっ!」

  部下達はダドルの命令に速やかに従い、すぐに準備を整え魔物を走らせる。
  しかし、一向に竜車の姿は見えない。このままでは追いつくことは出来ないとダドルは感じた。そして、部下達に命令を下す。

「お前達!  魔物の疲労は考えるな!  今は追いつくことを優先する!」
「了解です!」

  ダドルたちはひたすらに魔物を走らせる。魔物の息も上がり始めたその時、ようやく竜車の後ろ姿が見えた。

「いたぞ!  お前ら、もう少しだっ!?」

  部下を鼓舞しようとした瞬間、ダドルの体に強い衝撃が走る。自分の体が宙を舞っている、そう認識したダドルはすぐさま体勢を整え着地する。
しかし、部下達はほとんど対応しきれず、体を強く地面に打ち付け、すぐに立ち上がれた者は半数に満たなかった。

「何が起きた!?」
「わ、罠です!  魔物が茨に足を取られたようで!」
「すぐに茨を切れ!  多少足を傷つけても構わん、回復魔法で治せ!」

  ダドルがそう命じた瞬間、地面から新たな茨が伸びた。茨はみるみるうちに増えていき、まるで生きているかのように魔物を次々に飲み込んでいく。

「何をしている!  早く茨を切り払え!」
「だ、駄目です!  伸びる速さに間に合いません!  無理をすれば我々までもが巻き込まれかねません!」
「――っ糞が!」

  奮闘虚しく、魔物は全て茨に飲み込まれてしまった。断末魔の声さえ聞こえないほどの厚さの茨に。

「被害報告!」
「はっ!  ……連れてきた魔物は全滅。幸い兵は打ち身や骨折程度で犠牲者はおりません」
「何が幸いなものかっ!」

  兵に犠牲を出さず、魔物だけを倒す。そんな芸当、余程の余裕か実力差がなければ出来ることではない。その事にダドルは気付いていた。

「許さんぞ、小娘共……!」

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