タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

90,手がかり

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「先程の話を魔導王国の仲間にもお話して頂きたいのです」
「それって私が行かなくてもいいんじゃ……」

  ちらり、とルルリカさんがダンタリアンを見る。

「……取り繕っても意味はないですから言いましょう。アンジュさんの話を信じることはまだ出来ません。ですが、少なくとも嘘ではないと考えています。私たちの仲間にもあなたの悪魔のような力を持つ者がいるのです。その者の前で話し、真実であることを証明して欲しいのです」
「いやー……それはちょっと……」

  さすがに魔導王国まで行くのはなあ。正直いいイメージが湧かない。ルルリカさんが魔人だからなんだろうけど、どうしてもゼーヴィスが浮かぶ。ルルリカさんはそうでもないみたいだけど、魔導王国の人は、あいつみたいに人間風情だとか思ってるかもしれない。

「私の正式な客人として招待します。決して危害を加えられることはありません」
「それが本当だと信じることも私には出来ません。人間をよく思わない魔人もいるでしょう?」
「……そのような考えを持つ者がいるのは事実です。ですが、積極的に敵対しようと考える者はいません。ましてや、魔人である私の客人を襲うということは、私と敵対するということですから」

  そうは言われてもなあ……。襲われる可能性の方が高そうだしなあ。それに行ったところで私にはあんまり良いこと無さそうだし。でもこの人断ってもいつまでも粘りそうなんだよね。
  助けを求めてレベッカたちの方を見るけど、話し合いって感じじゃないなあ。言うまでもなく反対みたいで、一応武器を納めてはいるけどすぐに戦えるように手を置いてるし。
  ごめん、ダンタリアン。何とかしてくれないかな……?  そう考えながらダンタリアンを見ると、やれやれ、と肩を竦めた。代わってくれるみたい。

「あのねルルリカちゃん。アンちゃんがあなたの国へ行く理由は何?」
「先程の話の真偽を確かめ、場合によってはその後に協力して頂くためです」
「その二つ目は私が出てくるまで黙っていたわよね?  その時点であなたには不信感しかないの。そして、その理由はあなたのものでしょう?  アンちゃんが行く理由、メリットじゃないわ。今あなたが言っているのは、危険を冒して自分たちの利になるように動け、という命令よ。交渉どころかお願いにもなっていないわ。口調こそ丁寧にしているけれどねぇ」
「それは……」

  悔しげに顔を歪ませてルルリカさんが黙ってしまう。まあ、あんまり可哀想とは思わないかなあ。ダンタリアンの言ってることは正しいと言えば正しいし。まだ戦わないとは言われてないし、こっちにあれして欲しい、これして欲しいってばかりだもんね。
  あー、でも受け入れる代わりに何かを要求することも出来るのか。それなら沙夜香さんたちが危険な目に合わないようにお願いするとかでいいかな?

「アンちゃん、それもいいんだけど、もっといいのがあるわよぉ」

  うわ、びっくりした。そっか、ダンタリアンには私の考えが分かるんだもんね。

「ほら、さっき思い浮かべてたでしょう?  あの人のことを聞いてみたら?」
「さっき思い浮かべてた人……?」

  それってゼーヴィスのこと?  でも、ルルリカさんの仲間がゼーヴィスだったらまずいんじゃ……。んー、でもダンタリアンならその事を考えた上で提案してくれてるのかな。

「ルルリカさん、ゼーヴィスって知ってます?」
「……ええ、知っています。アンジュさん、その男の名をどこで?」
「ルルリカさんも知ってますよね?  灰色の魔物のこと。あれの首謀者として動いていたのがゼーヴィスです。そして、そいつと戦ったのが私たちです」

  エリックさんにゼーヴィスのことは話したけど、知らないのかな?  ということはギルドには魔導王国のスパイはいないのかな。ギルド内で情報を留めておくとは言ってたから、ギルドの職員は大体知ってるとは思うんだけど。

「なるほど……。アンジュさんにはなんとしても魔導王国に来ていただく必要があることが分かりました。私が帝国に来た理由がその魔人、ゼーヴィスです」
「……ルルリカさんはゼーヴィスをほっといて私たちを監視していたということですか?」

  ルルリカさんは怪しい動きをしてる連中を調べるために帝国に来たはず。それがゼーヴィスってことは、ルルリカさんがゼーヴィスを止められていたらあの魔物は産まれなかったはずだよね。たらればの話かもしれないけど、それは、少し腹が立つ。何か動くかもしれない私たちより、実際に動いているゼーヴィスの方が重要だと思うんだけど。

「それは違います!」
「ではなぜゼーヴィスの企みをほっといたんですか?  あの時、冒険者の人しかあれには関わっていなかったと思いますけど」
「それは……」

  目を泳がして言い淀むルルリカさん。まただんまりだ。
  ダンタリアンを見る。

「アンちゃん……、これを知っちゃうと少し面倒なことになるわ。それでも知りたい?」
「うん、話して。ゼーヴィスの情報は少しでも欲しいから」
「……わかったわ。ゼーヴィスはね、かなり大きな組織に匿われてるみたいよ。下手をすると国レベルの大きさの場所に」
「それって帝国が関わってるってこと?」
「いや、そこまでは分かっていないみたいねぇ。というか、分かっていることはゼーヴィスは匿われてるだけで、上にはまた違う人物がいること。そして、それは小さな女の子だっていうことらしいわ。アンちゃんはその子だと疑われてたみたいねぇ」
「私が!?」
「ゼーヴィスが帝国に入ってからあまり間を開けずに入国した少女。しかも王宮から出てきて、身元もはっきりしない。そんな子がいたらたしかに疑うわねぇ」

  そう聞くと私めちゃくちゃ怪しいな!?

「まあ、それがあったからルルリカちゃんもアンちゃんの監視に力を入れてたみたいねぇ。肝心のゼーヴィスは匿われちゃって情報が全くと言っていいほどなかったみたいだし、唯一の重要な手がかりになるかもしれない子だものねぇ」

  そっか……。それなら監視もゼーヴィスを止められなかったのも仕方ないかあ。むしろ止めようとしてくれてたんだもんね。

「……アンジュ、大丈夫かい?」
「え?  うん、大丈夫だよ?」

  レベッカが声をかけてくれる。ショックを受けてるように見えたのかな。

「それならいいんだ。すごく怒ってて、少し怖かったから」
「え、そんなに?」
「うん。いつ武器を振り回すかと思ったよ」

  そんなに!?  さすがに攻撃されたりしない限りはククリ取り出したりしないよ!
  でも、たしかにイライラはしてたかもしれない。なんだろう、時々あるなあ。気持ちが昂るっていうのかな。自分で感情が制御出来なくなる時がある。ちょっと怖い。なるべくそうならないように気をつけないと。

「とりあえず、そういうことなら仕方ないですね。魔導王国かあ……」

  さすがにこれは私一人じゃ決められない。レベッカたちに行って良いか聞かないと。

「みんな、条件次第だけど私は魔導王国に行こうと思うんだけど、行ってもいい?」
「行ってもいいって……一人で行く気かい?」
「流石にそれは危ないわ。行くなら私達もついて行くからね」

  そう言うとは思ったけど……、でもこれは私の問題な気もするし、巻き込みたくはないなあ。

「アンちゃん、レヴィちゃんたちもゼーヴィスと戦ってるのよ?  何よりパーティーの仲間ことなんだから巻き込んだらー、なんてのは考える方が失礼じゃないかしらぁ」
「んなこと考えてたのか?  そもそも、俺らのリーダーはお前だろ。そいつを一人で危険な場所にやるわけねえだろ」
「……うん、みんなありがとう」

  ならレベッカたちにも着いてきてもらおう。もちろん、危ないなって感じたらすぐにマジマさんの戦車で逃げ出すけどね。
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