タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

文字の大きさ
上 下
73 / 97
本編

72,リーゼロッテ様

しおりを挟む

  うん、この人たちの相手は疲れる!  いつ息継ぎしてるんだろうってぐらいしゃべり続けるし、三人が三人とも私に話しかけてきたと思ったら、次には彼女たちだけで話してたりするし。というか、止めてくださいよお母さん。なんで娘と一緒になって、というか、筆頭になってわいわいしてるんですか。もう、一度に話すのは一人だけにして欲しい。

「私は聖徳太子じゃないんだけどなあ……」
「ショートク……?  どなたですかその方は?  お聞きしたことはないですが、遠い国の大使様かしら」
「あー……、私の故郷で大昔に活躍した人です。十人の話を一度に聞き分けることができたとかいう逸話があるんです」
「まあ!  そのショートク様はとてもすごい方だったのですね!」

  なんか聖徳が名前みたいに捉えられてる気がするけど、いいや。訂正するにしても長くなりそうでめんどくさい。

「お前たち、そろそろアンジュ様を解放してもらってもいいかな?」

  振り返るとバスカルヴィーさんが立ってた。今の状況だとバスカルヴィーさんが救いに来てくれた仏様みたいに見える。ありがとうバスカルヴィーさん。あなた今すごい輝いてるよ……。

「あなたが来たということは、リーゼロッテ様も挨拶が終わりそうなのかしら」
「ああ、そろそろ迎えに行くからその前にアンジュ様に一息ついて頂こうと思ってな。お前達のことだ、質問攻めにしたかひたすらに話し続けたのだろう?」

  すごい、当たってるよバスカルヴィーさん。うん、でも仏様は撤回する。なんで私なんかのところに皇女様を連れてこようとか言い出すのさ。

「あのー……、私が伺った方がいいのではないかと思うんですが……」
「いえいえ、お気になさらず。これはリーゼロッテ様の望んだことでもありますので」

  皇女様が自分から望むって何事。というか、やっぱり占いする人って皇女様だよね……。恐れ多すぎて今にも帰りたい。

「ではアンジュ様、また今度お茶でも飲みながらお話しましょう」
「あら、いい考えですねお母様。楽しみです」
「その時は私も必ずご一緒しますね!」
「あ、はい。機会があれば……」

  そして三人は何かを楽しそうに話しながら女性が集まってる方へ歩いていった。
  混ざりたいとは思わないけど偉い人を相手にするよりはまだマシな気がするよ……。

「アンジュ様、リーゼロッテ様をお連れしました」

  頭を抱えてる間に連れてこられてしまった。慌てて背筋を正して挨拶する。

「はじめまして、リーゼロッテ様。冒険者のアンジュといいます。お会いできて光栄です」
「こちらこそはじめまして、アンジュさん。リーゼロッテ・バントベルツです。私こそ会えて嬉しいわ」

  そう言って皇女様は手を差し出してくる。え、これ握手だよね。これどうするのが正解なの!?  断るのは論外にしても、普通に受けてしまっていいの!?
  助けを求めるようにバスカルヴィーさんを横目で見ると、軽く頷いてくれた。恐る恐る握手に応じる。

「アンジュ様、もうお察しのこととは存じますが、占って頂きたい方とはリーゼロッテ様なのです」

  ですよねー。うん、断りたい。でも私から断るのは絶対失礼だよね。下手したら不敬罪とかになりかねない。どうにかしてリーゼロッテ様から断ってもらえないかな。

「ごめんなさい、アンジュさん。突然で驚いたでしょう?  実は私からバスカルヴィーに頼んだの。占いの話を聞いて是非にって」
「そうなんですかー」

  はい、無理です。淡い期待でした。皇女様が頼んでくる占いって何?  国に関することとかじゃないよね。タロットで、というか私なんかに国に関わるようなことを考えさせないで胃が痛い!

「それでね、アンジュさん。占いの内容なんだけれど……」
「はい」

  リーゼロッテ様が口をつぐんで俯く。そんなに深刻なことなの!?  やめて、話を聞く前から胃がしくしくしてきた。私この年で胃潰瘍とかなりたくないよ?

「私の、私の婚約者について占っていただけないかしら」
「……はい?」
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

After story/under the snow

黒羽 雪音来
ファンタジー
どーも‼ 南の大陸の魔神でーす‼ その名前の通り‼ 南の大陸における悪役だ‼ この世界には、『大穴』と呼ばれる漆黒の海を中心に、東西南北に大陸が存在する。 それぞれの大陸に悪役の魔神がいて、それぞれの大陸にある聖剣に選ばれた勇者と大陸内で戦っている。 おっと。別に世界征服なんざ考えてないぜ。この戦いは世界を維持する儀式のためだ。 4体の魔神と4人の勇者が織り成す冒険活劇ファンタジー? それも面白そうだが、今回は違う。 それは別の機会があったら、な‼ 舞台は北の大陸。 北の大陸の魔神を、独りで討伐した北の勇者。 しかし、彼に与えられたのは、名誉でも褒美でもなく、無実の罪による処刑だった。 極寒の処刑場にて、勇者は復讐を望んだ。 その時、俺が声をかけたのさ。 「ご所望は復讐かい?」と。 さあさあ皆様‼ どーぞご照覧あれっ‼ これは、ちょ~っとだけ変わった復讐ファンタジー。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...